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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
35/52

35話 模擬戦

「息子、、、」

「アミキリの父のコロソマです」


宗司がつぶやいた後、アミキリの父、コロソマが胸に手を当て自己紹介した。


「アミキリの。お邪魔してます。アミキリ君のクラスメイトの一条宗司と申します」


そう言ってアミキリはお辞儀した。その様子を見てコロソマが「フフッ」っと微笑んだ。


「異世界から来たっていうのは本当だったんだね」


笑われた意味が分からず、宗司が顔を上げると、コロソマがいきなりそんなことを言い出した。


「え?」

「お辞儀はこの国の文化じゃないからね。知識としては知っているけど」


(思い返せば大半の人間が挨拶するときもお礼を言うときも謝罪するときも頭を下げていなかった)


「昔異世界から来た人がその家の文化や礼儀として子供に教えることはあるけど、あまり見ないからね。新鮮だ」


コロソマは穏やかな笑顔で話し続ける。アミキリの面影が残る、和服姿のイケメンだ。実に絵になる。


(この世界の人はイケメンや美女が多い気がする。鍛えているからか?)


「アミキリはどう?学校でうまくやっているかな?」

「はい、アミキリさんは皆と仲良くやって、もちろん私とも」

「そうですか。よかった」


穏やかな声でコロソマは安心の言葉を口にする。コロソマの声に、宗司はふと、オグマ先生を思い出す。


「異世界に来て、何かたいへんなことはないかな?ここであったのも何かの縁。多少の助けはいりませんか?」


コロソマにそう聞かれ、宗司は一瞬考えるが、特に助けは求めなかった。


「いえ、大変なことと言えば常識が少し違うことでしょうか。それは自分の勉強次第なので」

「世界が変われば物質も法則も変化することもあるらしいですからね。がんばってください。今後も、息子と仲良くしてくれるとありがたい」

「ええ。もちろん」

「引き留めてしまって申し訳ない。午後からも頑張って」

「ありがとうございます」


宗司はそう言って部屋を後にした。コロソマは宗司が出て行った方向をじっと見ている。


「・・・思春期なのかな?」


コロソマのそのつぶやきは、誰にも聞かれることも、察知されることもなく、空へと消えていった。

当然宗司も知る由もなく、彼は何食わぬ顔で真司たちのいる部屋へ戻っていく。


「お帰り~」


寝っ転がっている真司から出迎えの言葉を言われた宗司は、飽きれた顔で真司を見た。


「何してんだ、、、」

「気持ちよくてね。思わず寝っ転がってた」


ふと周りを見ると、正也が足を乱雑に放り投げて座り、凛花は縁側で座っていた。

宗司も適度に温かい日差し、たまにある涼しい風、美しい庭と、リラックスしたくなる気持ちになる。


「人の家だからもっと緊張感もてばいいのに」

「ハハッ」


宗司のつぶやきが聞こえたのか、真司はそれを笑い飛ばし再び目線を天井へと戻す。

宗司はもはや何も言わず、入り口の近くで腰を下ろし、胡坐をかいて休憩した。


「お待たせ」


しばらくそうしていると、入り口からアミキリが入ってきた。


「もう時間か」


そう言って宗司が立ち上がり、続いて真司たちもアミキリの近くへとよる。


「そういえばお前ら飯は大丈夫なのか?」


宗司が真司たちが結局部屋から出てないことに気付き、彼らに尋ねる。


「ああ、大丈夫。宗司と別れてチョットしたらアミキリがゼリー持ってきてくれたから」

「ふーん」


真司の返答に宗司はそう言って再びアミキリのほうを向く。

アミキリは栄養ゼリーの容器を回収した後、衝動へ来るか尋ねたが、結局3人はいかなかった。


「午後からも解体で生物の体に慣れてもらうってのもいいんだけど、本番は、体動かすわけだから。どうする?解体する?実際の戦いを体験する?」


午後の予定について尋ねられた4人は、顔を見合わせたり、一人で考えたりした。


「実際の戦いっていうのは、犬とか鰐とかと戦うってこと?」


実際の戦いの意味を確認するため、正也がアミキリに尋ねると、アミキリは斜め上を見上げ少し考える。


「別にそれでもいいし、今1,2年生が集まっているから、あいつらと模擬戦するでもいいかなって」


それを聞いた4人はすぐに模擬戦を希望した。


「わかった。じゃあ、みんなと合流しようか」


そうしてアミキリに連れてこられた先には多くの人がいた。ざっと数えても100人以上はいる。

しかし人口密度は低い。


「やっぱり、空間いじってる?」

「もちろん」


アミキリは真司からの質問に簡潔に答える。

その後アミキリはすぐ横に魔法陣を展開し、その中に手を突っ込んでメガホンらしきものを取り出した。


「それじゃあ、はじめたいと思うんですけど、一条宗司君、加藤真司君、鈴木正也君、佐藤凛花さんも2回目から加わることになったので、お願いします」

「はーい」


アミキリのアナウンスに、ほぼ全員が返事をした。


「はじめ!」


どこからかそんな声が聞こえてきた。コロソマがどこからか号令を出したのだ。それと同時に部屋の中央の上に数字が出現し、カウントダウンしていった。

そして、皆が一斉に戦いだした。


「え?え?」


模擬戦と聞いていたから戦うことは凛花は承知していた。しかしその規模が違う。あちらで格闘していた二人が次の瞬間には消えて、3メートルほど離れたところで格闘している。その格闘も、一発撃ったらいったん下がって様子見、という元の世界で見られるようなものではなく、顔面に来たパンチを受け流し、カウンターを決めようとして、それも躱され、しかし躱されてもあきらめずに追撃を行う。追撃は防御で防がれた。

そんな一瞬も目が離せない戦いいたるところで繰り広げられている。

もちろん、格闘だけでなく、魔法も、体力も使い、地上、空中、空水中など、様々な戦闘が行われている。魔法陣がキラキラと輝いている。


「どこの戦闘民族だよ。海の王にでもなるんか?、、、」


正也のただのつぶやきはこの騒音ではだれにも聞こえていないだろうと思われる。

しかしこれほどの人数が、これほどの戦いを繰り広げても、この部屋にはまだ余裕があるように見えた。


「じゃあ、説明するよ」


戸惑い、ただ黙って目の前の光景を呆然と見つめている凛花と真司の二人だったが、アミキリの言葉によって我を取り戻す。


「10分間戦って2分休憩。基本一対一だけど、お互いの了解があれば多数対多数でもいい。戦うメンバーは休憩時間内に見つける感じで誘われたら拒否は絶対できない。もうこれ以上ぶりそうだったら扉から出て行って。それがギブアップの合図。この会場に残っている間は、まだ戦う意思があるって見られるから。時間は上に表示されてるから参考にね」


アミキリは会場内にあるいくつかの扉と上の時間を指さしながら説明していく。

すると突然、細い何かが5人のほうに飛んできた。正確には真司の顔めがけて。


「「「「!!」」」」


アミキリはそれを難なくキャッチする。そしてアミキリが掴んだそれを見て、4人は青ざめる。


「危なっ」


そう言ってアミキリはそれ、誰かの左腕を飛んできた方向へ投げ返す。そこには手を挙げてアピールする左腕のないスズキがいた。


「悪い、ありがとう」


左腕をキャッチしたスズキはそれを自分の左腕につけた。そして左腕を振り回し、くっついていることを確認すると再び戦い始めた。


「じゃあ次の時間から入るってことで―――」

「いや今の何?!」


何事もなかったかのように話を勧めようとしたアミキリに真司が待ったをかける。


「何って、治癒術は習ったでしょ?」


あっけらかんと答えるアミキリだが、真司は理解しきれていない。


「確かに習ったよ。軽く。みんな小さいころからできてるみたいだからさらっとやって終わったよ」

「そのあと教えなかったっけ?」

「教えてもらったよ!」


この世界に、この国に来て、周りのみんなとのハンデが大きすぎることは早々に理解したため、4人は将軍だったり、各々の友達だったり、先生だったりに自主的に教わり、あるいは呼び出され、半強制的に教わったりしていた。


「だけど最近ようやく擦り傷とか切り傷を傷跡無く治せるようになったくらいだよ!」


治癒術は体の中の治癒力を活性化させたり、失った組織を魔力や体力で模倣したものを流用したりと、様々な種類がある。その中で真司たちが教わったのは治癒力を活性化させて傷を一瞬で直すという、基本的なもの。


「あれも基礎治癒術だよ?」

「外れた腕くっつけるのが?!」


そん度は正也がアミキリの言葉に驚く。正也は他の3人より少しだけ治癒術にたけているが、せいぜい骨折を直す程度だ。


「基本は同じ。あとはそれをどれだけ広範囲に強くできるかだけ。子供のころ何度かケガを自分で治してたらできるようになってた」

「腕が取れるようなけがを子供がするの?」


凛花の質問に、アミキリは首を横に振る。


「擦り傷やかすり傷だよ。それを治し続けて自分の治癒術に自信を持つようになる。あとは根性」


それを聞いて、4人はドン引く。


「まあ、あとは周りの大人とかテレビでそう言うのを見慣れてるっていうのもあるかな?」


そんな補足になっているのかいないのか分からないアミキリのコメントを聞いても、当然4人は納得できない。

そして今更ながらに気付いたが、自分たちは次、あいつらと戦わなければならないのだ。


「・・・棄権できます?」


凛花のそんな力ない言葉に、アミキリは「大丈夫だよ」とフォローを入れようとする。


「みんな怖がっている相手に本気を出すような大人げない人じゃないよ。ちゃんと加減するよ」


しかし4人の顔は晴れない。アミキリは仕方なしと妥協案を出す。


「とりあえず一試合だけ出てみなよ。そのあとはすぐ棄権していいから」


緊張していた4人は、一試合だけならと、何とか勇気を絞り出す。そして、残りの3分間、4人は目の前の試合、半分以上見えなかったが、弾幕が絶え間なく続く戦場を見学した。


「よし、じゃあ、頑張って」


一試合目が終わり、アミキリはその場から消えた。分身だったらしい。

そして4人のもとに、それぞれ、スズキ、ソウハチ、アジアキ、アカネハナがやってきて試合を申し込んだ。


「気楽にやろう」


4人の言い方は違ったが、そのような胸のことを話し、誘った。

スズキは宗司と、ソウハチは真司と、アジアキは正也と、アカネハナは凛花と向かい合って立つ。

試合開始の時間が近づくにつれ、宗司たち4人は緊張感が高まっていく。


「腕、大丈夫か?」


そんな緊張感をごまかすためか、宗司は無意識にスズキに尋ねた。


「ああ、大丈夫だよ。痛みも違和感もない」


そうスズキが答えた瞬間、アラームが鳴る。2試合目の始まりの合図だ。

それと同時に宗司は構え、スズキは瞬きの間に宗司との距離を詰めた。

結果から言うと宗司がぼろ負けした。当然だ。学校では体力、魔力、魂力の基礎を座学で教わり、実習も、こんな実戦形式はまだない。


(やっぱりか)


宗司が戦いの最中に抱いた感想はこの一言に尽きる。

体育の時間にはみんなと自分との身体能力の差を見せつけられていたため、そこまで絶望も驚きもない。

痛いが、激痛ではない拳や蹴りを食らい、魔法陣を展開しようとすれば魔法陣はかき消され、あるいはハッキングされ、自分に返ってくる。ならばと固有回路を使い、死角から攻撃しようとしても、見切られて逆にカウンターや投げ技を食らう。


(こいつ、こっちが受け身がとりやすいように投げてくる)


3分も経過すれば、力をまとうことも、ままならなくなり、息切れもしてくる。

それに対しスズキは、常に力をまとっており、息切れも小さい。

宗司がスズキとの距離を取り、休憩と作戦を考えようとすると、スズキは距離を詰めず、宗司を見つめる。


(構えもしないか。そのレベルの差ってことね)


宗司がある程度息を整えると、スズキはそれを見計らったかのように距離を詰め、やはり一方的にやられる。こちらの攻撃は、すべてガードか受け流される。

他の3人も似たようなものだった。


「ハァ、ハァ、、、」


スズキが宗司で戯れている間、真司は肩で息をしていた。

ソウハチはそんな真司を眺めるだけ。真司はすでにボロボロで、あちこち擦り傷や切り傷だらけ。

何度かやって真司は気づいたが、治癒術は意外と体力を食う。試合の初めにできた傷を治したとき、体力の大幅な消耗に驚いたものだ。

だから真司は今はあえて傷を治さない。


「ハハッ。ダメだな。かなりトレーニングしたつもりだったけど。全然だ」

「いや、最初会ったときより体力も魔力も総量、出力両方増えてるし、順調だと思うよ。俺はほら、経験値が違うし」


試合の最中だが、二人は普段通りに話している。


「経験値ね。どこで戦うのさ」

「親や兄弟、友達とだよ」

「え!?親や兄弟って、そんな中悪いの?学校でも、そんなふうには見えなかったけど」


ソウハチの話に真司が驚いて聞き返す。

ソウハチは笑いながら返答した。


「違う違う。ほら、この国って殺しが合法だから、大切な人には自衛の術を叩き込むんだよ」

「へ?」

「だから小さいころから体術とか魔術とか格闘とか教わるんだよ」

「そ、そっか」


殺しが合法というのは依然聞いた真司だったが、やはり何度聞いても慣れない。


「でも、その割に平和だよね。もっと殺伐としていてもいいのに」

「いや、人を殺すってことはその人のことを好きな人全員を敵に回すってことだよ?よほどのことがないとやらんでしょ」

「・・・そうね」


この国では人の絆や愛と、個人の力が抑止力になっている。

真司が納得しかけた瞬間、真司はこけた。宗司が足払いをかけたのだ。


「一応、試合中だから。もうそれなりに休めたでしょ?」

「・・・はい」


そうしてほぼ一方的にやられ、疲れを見せている2人とは対照的に、正也は激しく戦っていた。


「エイヤーッ!!」

「ハッ!」


正也とアジアキは一進一退の攻防をくり返している。

ように見える。

攻撃を仕掛けるのは常に正也から。アジアキは正也の行動や技、術を観察し防御やカウンターを繰り返していた。完全に防御とカウンターの練習台にされていた。


「ハァハァ、、、。これでも、一応、毎日、修行して、んだけど。ふぅ、自身なくす」

「あ?なめんじゃねえよ。修行ならこっちもやってるわ。それにぶっ通しで5分間戦えてんだから持久力はそれなりのモンだろが。自信持ちやがれ!」

「よっしゃっ」


正也は自分を鼓舞すると魔法陣を展開し火炎弾を放った。

それをアジアキは魔力を込めたパンチで弾き飛ばす。しかし正也の姿がない。正也は魔法を目くらましにアジアキに近づき、そのどてっぱらに下から思いっきり拳を入れようとした。

しかしそれを胴体の動きだけで受け流され、その流れのまま横腹に蹴りを入れられ飛ばされた。


「あと半年くれぇここで生活してりゃぁいやでも俺たちと同じくれいになんだろ」


倒れた正也にかけられた言葉を凛花はたまたま耳にする。


「ホントに、たった半年で追いつけると思う?」


凛花は疑問をアカネハナに問う。不安そうなその問いに、アカネハナは明るく答えた。


「いけるいける!凛花、筋いいし。授業も真面目に受けてるしね」


二人は組手を行っていた。互いが互いの胴に拳を打ち込み、脇腹に、顔に蹴りを打ち込み、それを防御して攻撃を仕掛ける。


「けど、魔法とか、みんなみたいに使えないし。魔法以外も、、、」

「まだ使ったことなかっただけでしょ。大丈夫!一度慣れたら意外と簡単だよ」


凛花たち4人は確実に成長しているし、魔力、体力の扱いもそれなりになっている。ただ周りがそれ以上に使いこなしているため、どうも自分たちが成長している実感がない。


「大丈夫。凛花は確実に成長してるよ。私が保証する」


その言葉に、気休め以上のことを感じなかったが、凛花は嬉しかった。


「あ、残り30秒だね」


不意に、アカネハナがそう言い、雰囲気が変わった。いや、アカネハナだけではない。会場全体気合が、覇気が、増えたような気がした。


「こっからは少し本気で行くから」


スズキは宗司にそう警告した。

そこからは4人にとって地獄だった。パンチや蹴りの一発で空中へと飛ばされ、魔力や体力の放出、魔法、体術を打ち込まれ、空中で何度も蹴られ、殴られた。残りの30秒一度も地面におろされなかった。

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