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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
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19話 生き生きな宗司

今朝もこのうるさい音楽が寮の中に響き渡り寮の住人の覚醒を促す。

宗司は眠い目をこすりながら朝の支度を始めた。

いつも宗司はこの音楽が鳴る始める数分前に覚醒しているので、ほかの3人より多少ストレスは少ないが、うるさいという評価は宗司の中で確実なものとなっていた。


身支度を済ませ、いつもの通り朝食を食べる。

宗司は元の世界ではあまり朝食を食べるタイプではなかったが、こっちの世界では登校までそこそこ時間があり、なおかつこちらの食事がたいへん美味なためほぼ毎日朝食をとっている。


朝食を終え一息つくと登校の時間となる。

宗司は荷物を持ち、部屋の鍵を閉めて寮を後にした。

最初のころ、宗司はあの3人と一緒に登校していたが今は一人で登校している。というか一人で登校できるようにほかの3人よりも早く寮を出るようにしている。

別にあの3人が嫌いというわけでも、ほかの人と話すのが苦手というわけでもないのだが、宗司はどちらかというと一人でいるときのほうが気楽で好きだった。


そのことに宗司自身が気が付いたのはこちらの世界に来たからだった。

元の世界では両親と弟とともに住んでおり、学校もそれなりに有名なところに通っていた。

宗司は顔が整っており、運動神経もよかったのでよく周りに人が集まってきた。

つまり、一人になる時間がほとんどとれなかった。


それでも、学校の図書室や地域の図書館へ行くことがあり、そこで心地よいひとときを過ごすこともあった。その影響で、小、中の成績は上位だった。

そのことを喜んだ両親は宗司が中3になったころ、塾へ通うよう勧め、宗司もそれを承諾した。


そのときは、宗司も両親も勘違いしていたのだ、一人が好きなのではなく、勉強が好きなのだと。

まあ実際、宗司にとって勉強はそこまで苦ではなかった。


しかし、そのことで弟が少々苦労したのだが、その話をすると長くなるので割愛させてもらう。


塾に通い始めた宗司は本来図書館で過ごせるはずだった時間を塾に当てられ、少しずつストレスがたまっていた。

もちろん塾でも一人になれるところはあったが、宗司はやはり、図書館のようなゆったりと落ち着いた空間のほうが好きだったのだ。


とにかく、日々の暮らしの中で少しずつではあるがストレスをため続けた宗司は、自分の日々の不満の原因が分からずもやもやした生活を続けていた。

自分でもそれなりに、部活動に励んでみたり、彼女を作ったりしてみたが気休め、もしくは余計なストレスを生む原因になってしまったりしていた。


両親はいろんなものに過度な期待をするタイプだったため、放課後は宗司をすぐに塾へ送り、さらに成績を上げようとしていたため、放課後はあまり時間を取れなかった。


そんな生活をしていたある日突然、この世界にさらわれた。

不安や戸惑いもそれなりにあったが、さっき勉強は苦ではないといったように、宗司は知的好奇心や探求心が強い人なので、それらが不安やらに勝っていた。

実際、小説で見た、魔法や気、呪術のようなものを理論的に学べるのは宗司にとって楽しいことだった。


しかしこの世界で最も宗司の心を休ませたのは将軍から紹介された寮だった。

初めての一人暮らし、初めてのまとまった自由時間、当然最初は戸惑ったが、人間恐ろしいもので、一週間もたてば適応した。

将軍から教わった『ステータス画面』もすぐに人並みに使えるようになり、近くの図書館を見つけてそこに頻繁に通うようになった。

宗司は思う存分一人暮らしを満喫した。

その結果、『ステータス画面』や、『固有魔法』をはじめとする様々な魔法を一通り使えるようになった。


「と、思っていたんだけどな」


そうつぶやいて宗司は鞄の中から本を取り出し読み始めた。


思い出されるのはこの間の課題、的を壊せというものだ。

課題内容は一列に並んでいる10個の的を一気にすべて破壊するか九つ目だけを破壊するというもの。

後日先生が言っていたが、全員が達成できるまでこの授業は行い続けるという。

多少口頭による説明や手本などはあるとのことだが、基本的にずっと的壊しらしい。

一体授業カリキュラムはどうなっているのかと他の先生に聞いてみたりもしたが、それがさも当然という反応しか返ってこなかった。

ここはひとつ、異世界ということで納得せざるを得ない。


それはさておき、宗司が少々へこんでいる理由は的に魔法を当てることができなかったからだ。

さすがに初日で的を壊せた生徒はいなかったが、真司、宗司以外の生徒は的に魔法をバカスカがあていた。

この世界の人並、それ以上に魔法を使えるようになっていると思っていた宗司はかなりへこんだ。


だからってずっとへこんでいるほど宗司は子供ではなかった。

次の日になれば、宗司は図書館へ行って魔法についての本を借り、近くの広い公園へ行って魔法の練習をしたり、別の日には先生を捕まえて体育館で魔法の練習に付き合わせていたりしている。


ここまで長ったらしく説明してきたが、とどのつまり何が言いたいかというと、宗司はとても快適に過ごしているということだ、元の世界にいたとき以上に。


今日はこれから化学の授業があり、その次が歴史、昼休みを挟んで体術の授業、最後に学級活動があるらしい。

始業時間の五分前くらいになると全員が教室に集合し、始業時間きっかりに化学の先生が来た。

化学の先生はつり目の女性で、肩まである黒い髪を後ろで一つにしている、整った顔をしている人だった。絶世とまではいかないがおそらく、全世界の9割ほどの人が美人というだろう。

その先生、カペラ先生はよく、化学についての雑学を授業中に教えてくれているため、覚えるのがたいへんな化学のあれこれを身に着けることができている。

また、よく授業中に実演をしてくれるのも、化学が覚えやすい要因の一つだろう。


ちなみに、そんなカペラ先生の実験や雑学を家で実践して、家の台所が泡だらけになったり、庭の池が爆発したりした人がちらほらいるのだが、その話は、またいつか話そうと思う。


午前中の授業が終わり食堂で食事をしていると、クラスの子や正也や凛花が近くに座った。

ただし、近くに座ったからといって別に何を話すわけではない。話しかけられれば多少話すこともあるが、基本的に食事に集中している。4,5回に一回世間話するくらいだ。


食事が終わると宗司は図書室へと向かった。

今も昔もそこは宗司が最もくつろげる場所の一つだからだ。

宗司は一冊の本を手に取る。それは歴史、とりわけ魔法史について詳しく書かれた本だった。

最初は魔法をうまく使うためのヒントになればと思って読んでいたのだが、ことのほか内容が興味深く、魔法の指南書だけでなく娯楽目的でも使うことができ、今では宗司の愛読書になっている。


宗司が本を読んでいると誰かが隣に座ってきた。


「ねえ、それどこまで読んだ?」

「まだ二章の上まで」


隣に座ったのは同じクラスのスズキだった。

スズキは宗司以上の本の虫で、この学校に入学してから二月でこの学校に貯蔵してある本の六分の一を読み終えたほどだ。

ちなみにこの学校の図書室の広さは元の世界の国立図書館ともそん色なく、当然それ相応の数の本が並んでいる。

時間的にその量の本を読み終わることは難しいのではないかと思っていた宗司がったが、隣でスズキが分身した挙句自らの時間を加速させてバラバラと本を読んでいる様子を見て、何も言えなくなった。

相変わらずこの国の人たちは持っていまれた才能をおかしなほうに使っているようだ。


「そこか~、そこは物語の王道な書き方がされていて読みやすいよね。だけど僕のおすすめは四章。あそこからは作者の個性が出ていてとても面白いんだ」

「へー、そうなんだ」

「そうそう。ちなみにその四章の伏線が一番多く出ているのが今イチジョウが読んでいる二章だから、よく読むのがおすすめ」

「わかった、ありがとう」


はじめは図書館で見かけても、歩くあいさつを交わす程度だったが、頻繁に図書館に足を運んでいるうちに、そして教室でも話しているうちに仲良くなっていった。今宗司が読んでいる本もスズキからおすすめされた本だ。


昼休みが終わると「体力基礎」の授業が始まる。

「体育」ではなく「体術」の授業だ。

体術の授業では肉体の生命エネルギーについて学ぶ。

授業は座学と実技の半々の構成となっており、座学で学んだことを次の授業の実技で実践するというやり方で進めている。

はじめのころ、宗司や真司、凛花に正也の四人は魔法と精神エネルギー、生命エネルギーの違いについて、全く分からなかった。何なら今でも怪しい。実際、攻撃や防御手段としてはこれらの性能は大差ない。

しかし、これらには明確な違いがある。

最もわかりやすいものでいうと「見えるもの」に違いが出てくる。

魔法を使い、ある程度コントロールできるようになると、その日の天気がなんとなくわかるようになり、精神エネルギーをある程度コントロールできるようになると、相手の感情や気分がなんとなくわかるようになる。そして生命エネルギーをある程度コントロールできるようになると、相手のけがや病気、その人が規則正しい生活をしているかなどがなんとなくわかるようになる。

これらは特に能力というわけではなく、人間がものを見たり、光の強弱が分かったりといった当たり前の感覚である。


体術の先生はオグマという車いすらしきものに座った男の先生だ。

生まれたときから足腰が悪いらしく、別に歩けないわけではないのだが、長時間は立っていることすら難しいらしい。

いつも微笑んでおり、優しい、穏やかな口調で授業をしている。

先生の声を聞いていると穏やかな気分になるので、学生からけっこう人気がある。

それはいいのだが、今、体術の授業、しかも座学はかなりきつい。

すでに四分の一の学生はやられた。午後の授業最大の敵、睡魔に。

食事を終えた後の座学、暖かい気候、安らかな声、もはや寝かせに来ているとしか思えない。

宗司も例外ではなく、すでに手の甲が鉛筆による攻撃を受けて赤黒い斑点模様になっている。

ちなみに真司はうたたねしてしまっている。


「・・・とこのように、体内の脂肪を生命エネルギーに変換させて肉体の周囲にとどめておくことで痩せるということもできます」


その先生の言葉にほとんどの女子が目を覚まし、顔を上げたところで今日の授業は終了した。


「それでは今日はここまでにしましょう。次回は道場に集合です」


オグマ先生はそれだけ言い残し教室を後にした。

宗司たち生徒は眠い目をこすりながら最後の授業の準備をした。


最後の授業は学級活動。この授業は特に何をやるのかも、いつやるのかさえ決まっていない。

不定期に朝、みんなのところに通達されるのだ。


「さて諸君、今日は大事な話がある」


教室に入ってくるなりオルカ先生は神妙な面持ちで切り出した。

オルカ先生は、こう言っては何だが、かなりヤバい人だった。

この学校は、ゲーム機の持ち込みは禁止されているのだが、それでもちらほら持ってくる猛者がいる。

そしてその半数ほどがオルカ先生に没収されてしまっている。

鼻が利くのか地獄耳なのか、どこからともなく現れかっぱらっていくらしい。

そこだけ聞くと真面目で厄介な先生なのだが、オルカ先生は昼休みか放課後になると、没収したゲーム機を生徒に返却するのだ。反省文など出さなくても。

そして決まってこう言う。


「飽きた。返す」


つまりオルカ先生はただただゲームがしたいから没収しただけなのだ。


これはほんの一例だが、ほかにも下校中の生徒を捕まえてお菓子をおごらせたり、自分の教員室で生徒とともにゲーム大会を開いたこともあった。


そんなわけで、こんなに真剣な先生を見るのは生徒全員が初めてだった。そのため、教室の空気はとても張りつめていた。

皆、固唾を飲んで先生の言葉を待つ。


「・・・実は、、、もうすぐ、、」


ゴクリ、という音が聞こえた気がした。


「体育祭が開催されるのだー!!」


その大声とともにオルカ先生はどこからか取り出したクラッカーを、すべての指の間に挟んで同時に鳴らした。


先ほどとは打って変わってお祭り騒ぎのようなオルカ先生の雰囲気とその大きな音、そして体育祭が迫っているというまあまあ重大な情報に宗司だけでなく、クラス全体が一瞬放心していた。

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