7話 ホーソン星の神様が策を練りました
サクラは、目の前に白板を用意して、施策を箇条書きにしました。
1、「赤子授けてほしい」と祈った人には赤子を授ける
2、巡礼を活発にする
3,神の雷を使う
できることは3つあります。でも、3つ目は、あまり使いたくないですね。
「まず、真っ白な魂の供給を止めて、修練された魂の供給に戻しましょう。そして、『神ヤシロ』に参って、赤子を授けてほしいと祈った人には叶えてあげるのは、どうでしょうか? 」
「いいね。赤子は神からの授かり物。うん。それで行こう。でも、修練をプラスで乗り越えた魂だけを輪廻に戻すことにするとね・・・うーん、当面は年間50万人程度が限界だね。今の13億は増えすぎだよ。毎年1300万人分も供給できないよ」
「ということは、人口減にになりますね」
従来は無垢の魂を際限なく供給していたらしく、それを修練でプラスで乗り越えた魂だけを輪廻に戻すとなると、それはもう、年間50万人分が精々らしい。
昔々は、赤子を授けてほしいと祈った人に、魂を与えていたのです。しかし、100年戦争の後からは、あえて修練された魂を用意する必要がなくなり、人々は容易に赤子を作ることができるようになったそうです。
そして、神を敬い奉ることも少なくなり、今のように形骸化してしまったのです。
豊穣の神サクラは、早速、神ヤシロの巫女に神託を下しました。
「赤子を授けてほしいと祈った人には赤子を与えましょう。努々疑うことなかれ」
早速、神ヤシロは、氏子を通じて町中に神託を伝えました。
瞬く間にメディアによって、さらに広がることになりました。そして巷では。神ヤシロの売名行為だとか、この文明社会に神を信じろというのかなど、否定する記事や番組が横行しました。嘆かわしいことです。この頃の人の心は、悲観的な情報が好まれる様になっていました。メディアはその意向を組んで、否定的な情報を拡散するのが使命になっていたのです。
東国では、教会本部から神託が下され、信者に伝わりました。それを、快く思わないエリートたちは、メディアに神託を広めないようにと圧力をかけたのです。自分たちより上の存在を認めたく無かったのでしょう。
神託を下してから、1,2か月経つと、新たに産婦人科に来る人がいなくなりました。妊娠者が激減したのです。そして、10か月経つと
「あぁぁ、この出産で最後になった。明日には閉院しよう」という、産婦人科医院が続々と出てきたのです。
西の国の、国会では緊急少子化対策が議論されています。
「今月の出産は、この国全部で5000人ぽっちです。これは、大問題です。少子化問題なんて悠長な話ではありません。首相はどのように対処されますか? 」
「現在、調査中です。まあ、来月には回復しますよ・・・」
「何を呑気なことをおっしゃっていますか!。妊娠10か月以内の妊婦も、たったの2560人です。このままでは。この国には子供がいなくなりますよ!」
西の国の政府は、動こうとしませんでした。いや、政府は神の存在を信じたくなかったのでしょう。
一方、巷では今日も、『神に謝罪を!』、『赤子は神様からの授かりもの』というプラカードを掲げて、町の至る所で練り歩く人がいます。駅のホームやショップの入り口にも、同様の言葉が氾濫しています。一方、巫女が唱えた神託の言葉を思い起こして、参拝する人が少しづつ増えてきました。
業を煮やした政府高官が
「神は、なんとおっしゃっているのか? 神ヤシロに問い合わせよ!」と無茶なことを、放言する始末。
東の国でも同様に、出生が激減し、その対応に苦慮しているとのことです。エリートたちも、人工授精や人工培養など科学による策を必死に探しましたが、状況の打開には至らず、返って政情が不安定に陥ってきました。
巷では、正に神頼みと言うことで、子授け祈願の参拝者が増えてきました。しかし、その年の出生数は35000人、2年目は12000人、3年目も3500人どまりでした。東西の国を合わせて、この星の出生数は、5年前の1100万人から急激に減少しました。
一方、『バイオテロだ』と騒ぐ輩も出てきました。子供ができないウィルスをまき散らしたんだって。まことしやかに、うわさが広まり、発症のメカニズムや、どこそこのウィルス研究所から漏れたとか、観光客がバラまいたとか、空から気球で散布したとか。まあ、ほんまかいな?
実に『神のみぞ知る』です。
西の国も東の国も、巷は大混乱に陥っています。しかし、政府は打開策が得られず、まあ事なかれ主義と絶対正義にどっぷりつかっております。
市中のマスメディアは、
「人口が急激に減少しています。このままでは、30年後には13億人が9億人になり、働く人の人口は半減します。経済崩壊が来ます」と、西国では大騒ぎです。東国は政府批判につながるので沈黙です。
いやいや、その前に壊滅を迎えますよ。
「ホーソンさん。ちょっと厳しすぎではないですか? 」
「それを僕に言われてもねー。参拝しないのが悪いのダヨーン」
「うーん。新生児枠を50万人分を用意したのに、お参りする人が増えません。まあ様子見ですね」
ホーソン神とサクラ神が、一向に神を顧みない下界を見て憂いていました。
そうそう、『神の雷』は、宇宙からの侵略や予期せぬことのために取ってあるもので、今は32発まで発射することができます。まあ、この世界を壊滅するには、3発で十分ですが。いや、使うことはないでしょう・・・?
「サクラちゃん。どのみち壊滅するなら、いっその事、今すぐに更地にしようか? 」
「そういう冗談はやめてください!。私は最後まであがきますよ」