5話 未来に見える壊滅
惑星軌道に乗ってから、ホーソン星の未来を覗いてみますと、確かに近い未来に壊滅するようです。これは、困りました。折角、移民が成功しても未来が、このようであれば考え直さなければなりません。
「ララ様。やはり、どの未来も壊滅に繋がっております」
「ここまで、2000年かかったからね。何とかならないか考えてみましょう」
パラレルワールド管理局に相談すると、3日後、来たいとの連絡がありました。そして当日、移民星の一室で待っていました。
「こんにちは、パラレルワールド管理局のゲランと申します」
「文明係のアッカです。よろしくお願いします」
「私は、ララ・ゴラン。移民星『アスナロ』を率いています。」
「パラレルワールドならば、壊滅しない未来もあるのでは? 」と、ゲランに問いかけました。
滅びゆくものは、一時手助けをしても、いずれ滅びると。それに、パラレルワールドに分岐していった全ての世界を助けることはできないと。分岐する前を叩いたとしても、いずれ、その先の未来にも滅びが待っているのです。滅びは避けられません。
パラレルワールド管理局のデータからも、全ての分岐が滅びに至っていることを明示されました。
「ただし、滅びの過程の中で、未来のための芽を育んだり、魂の救済は可能と思います」とゲラン。
パラレルワールドと言っても無尽蔵に分岐するわけではありません。魂が少ない世界ほど頻繁に分岐しますが、魂が多い世界はほとんど分岐しません。それは、小さきものに可能性を、大きなものには責任をと言うことです。それと、多量の魂を持った世界が、頻繁に分岐したら、宇宙は飽和状態になって、宇宙そのものが滅びの道を辿ることになるそうです。ホーソン星の場合は、ほとんど分岐がありません。
「では、ホーソン星の未来のために、できることを話し合いましょう。まだ10年先ですから、きっと未来は変えられると信じます」と、ララは楽観的です。
電子文明は、少なからず魂の修練がなされず、暴走してしまうことがあります。大量破壊兵器の投入、仮想世界への人の移動、子孫が生まれないなどなど。そして、このホーソン星では大量破壊兵器が炸裂するのです。
ララ・ゴランは、魔素物理に基づく世界に変えてしまおうと考えました。その場合は、文明がレベル3へ後退する可能性があります。
「ゲラン殿、魔素物理に基づく世界に変える場合はどうですか? 」
「あり得ます。その場合は現在配置あるいは開発中の大量破壊兵器は、制御できなくて使えなくなるでしょう」とゲラン。
「それと、地上は混乱するでしょうね。電子機器が使えなくなるので、通信ネットワークも途切れるでしょう。その混乱の程度は予測不可能です」とアッカ。
「わかりました。壊滅するよりマシな未来になるのであれば、魔素化の線で進めてみたいですね。我々も、この星に期待しているのです」と私。
まあ、ダメな場合は、その時で再び移民星を率いて放浪しましょう。
ララは、現状を知るために現地調査をすることにしました。そして、一方で移民の準備をしましょう。