48話 蒸気機関車が走る
私は、イロリ。神ヤシロの巫女をやっております。今日は、隣町の友達に会いにゆきました。のどかな田園地帯を蒸気機関車が走っています。黒煙をわずかに吹き上げながら走ってゆく様は、150年ほど時間を巻き戻した風景です。
「次はタツマモリ駅です。お降りの方は、お荷物をお忘れないように、用意をお願いします」
車掌が、通路を歩いてきます。
「お客さん。次で降りるのですよ」と7歳と5歳ぐらいの子供に声をかけています。
私の手には紙の切符があります。車掌は向こう隣の人たちから切符を受け取って、カチャカチャと検札鋏を動かしています。検札鋏とは、鉄道の乗客が有効な乗車券を車内で持っているかどうか調べて、問題のないことを確認したあと、刻印および穴を開ける金属製の道具です。
「タツマモリー、タツマモリー、当駅でお降りのお客様はお急ぎください。次の停車はカラマツですー」
私は、先ほど車掌に声を掛けられていた子供に続いて、プラットホームに降り立ちました。
「イロリー」と声をかけながら、女性が走り寄ってきました。母です。
先ほどの子供は、周りをキョロキョロと見まわしています。が、迎えの人はいないみたいです。困りましたね。母と相談して、子供たちを手招きしました。お茶とお菓子を出すと、ちょっと逡巡したものの、受け取ってくれました。明るい笑顔がまぶしい。ありがとうって。
20分ほど、ベンチに座って様子を見ていましたが、一向に子供たちの迎えはやってきません。しかし、いつまでも一緒には、いられないので、駅員に事情を話して子供を預けました。そして、その場を去って、お家に向かいました。戦争前ならば、車が寄せられたのですが、今は母と二人で5キロメートルの道を歩いて帰ります。
翌日、近くの市場に行きました。以前のようにトラックがたくさん走っているわけでないので、物流が細っています。市場では、お金よりも物々交換が大半を占めていました。出店を見て回って、自分が持ってきた卵と交換できるものを見て回ります。まあ、持ってきたのは卵だけではありませんが。
母の話では、戦争の後で近くの養鶏場が立ち行かなくなって、鶏を引き取ってくれないかと方々に打診してきたそうです。母は、20匹ほど引き取ったのですが、ちょっと5人家族では消費しきれないので、時々、市に出しているとのことです。
近くの神ヤシロに行ってきました。少し魑魅魍魎が漂っていましたので、浄化しておきました。以前は私たち龍人の子孫のみが識別できておりましたが、今は、多くの人が識別できるようになり、通報があります。その都度、神主や巫女が出向いて、浄化を行っていますので魑魅魍魎は少なくなりました。しかし、厄介なことに、これらの魑魅魍魎たちは、魔素を吸収してモンスターになることがあるのです。
モンスターは、警察に通報すれば、ゴラン政府から討伐隊がやってきます。




