2話 20年は長いので、救助してきた話をしましょう
宇宙航行の時間は長い。20万光年という距離は、光の速度でも20万年を要する言う意味です。まともに20万年を経るとなると、さすがにララ・ゴランも寿命で死んでいますね。ここは、亜空間飛行を使います。そう、巷ではワープ航法と言います。
それでも、広い宇宙を行きつくすことは不可能です。
惑星イベリスを出発して、2000年を彷徨っても、宇宙の0・0001%も埋めることができません。そのような宇宙に彷徨う宇宙船や星からの救援信号を捉えて、救助してきました。その累積人口は5500万人ぐらいでしょうか。微々たるものですが、かけがえのない命、魂なのです。しかし、移民星に相応しくないものは、降ろしました。
イベリスを出発してから遭遇した、幾つか話を上げてみましょう。
彷徨う宇宙船
「ララ様、前方に大きな宇宙船が見えます。コンタクトを試したところ反応がありません。ちょっと、接舷艇を出して、覗いてきましょうか? 」と、船長のジョブズ。
「そうですね。気をつけてね」
その宇宙船は、幅2キロメートル、全長300キロメートルの星間宇宙船でした。居住区の大きさから、2万人ほどが乗船しているとみました。
「ララ様、報告します。船内に人の気配は全くありません。無人です」
ジョブズの部下が持ち帰った、航海日誌を読んでいます。
(母星を出て、3万年が過ぎた。移住可能な星を探して彷徨っている)
・・・
(科学者が、面白いものを開発した。『あなたの世界』という鏡。それは想像する世界を映しだすことができるらしい。意外なことに、瞬く間に船内に流行った)
・・・
(なぜか、人が少しづつ消えている。捜索願が頻繁にでてきたことで、変だ!と)
・・・
(原因は突き止められた。あの『鏡の世界』に囚われ、向こう側に行ったらしい)
・・・
(もう誰も、残っていない。もう一度、母星にある家に・・・)
日記を書いていた人はどこへ行ったかって? それはわからない。でも、きっと幸せを掴んだのでしょう。
泡に覆われた惑星
救難信号をキャッチしました。
発信源に行ってみますと、そこは泡泡の世界でした。その星の表面の殆どが泡で埋まっていたのです。僅かに残った山の頂上に人が集まっていました。12人です。口々に助けてくれと叫んでいます。
そのような山頂があちこちにあるのです。数人から数百人の規模で、そして、口々に助けてくれと叫んでいます。
「ララ様、救助しますか? 」
「止めときます。なぜに彼らだけなのかを考えると、助けるに値しないと判断します」
いつから、あの状態なのか疑問があります。耕作地もなく食料はどうしているのでしょう?
それに、あの人達は競争に勝つことで、山頂を手に入れたと思うのです。
溶けた星系
前方に見えるのは、薄く広がった星系のようです。七色に光って綺麗ではありますが、なぜか悲しみを誘うのです。
「ララ様、救助信号をキャッチしました。正体はあの赤色の広がりに浮かんでいる小さな球体です」
球体は、たくさんあって数えきれません。その中でも、救助信号を発している512個を拾い上げました。しかし、残念なことに生存者はいませんでした。
宇宙で12番目に幸せな国
「ララ様、左1万光年に『宇宙で12番目に幸せな国』があるみたいです。寄ってみますか? 」
そう、12番目です。一番目もありますが、あれは12番目です。
そこは、黄色い星でした。そして、入国禁止、接近禁止、通信禁止。まあ鎖国状態の星です。それが、何故に幸せなのか?
調べたところ、この星は64億年前からこの位置にあるそうです。一つの生命体で睡眠中であると。
さて、20年は長いです。話も尽きました。