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プロローグ

 学園の美しい廊下を二人の女子生徒が歩く。

 行き交う生徒、関係者の視線がその二人に集中する。まるで魅了の術にでもかかったかのように。


「ふははは! 注目されているな」

「・・・・・・そうですね」


 一人はその視線を受けて勝ち誇ったかのように笑い、もう一人は青ざめた顔でダラダラと冷や汗を流している。

 一体何故ここまで反応が違うのだろうか。


 笑っている少女は肩甲骨まで伸びた艶やかで栗色の髪に大きな瞳、華奢でありながらも同時に健康的な体つきをしており、胸も巨乳とまではいかないが程よく育っている。男であれば必ずや自分の側に居させたいと思う美しさがある。

 一方、何がそんなに不安なのか、青ざめた方の少女は髪が銀色で目が真紅という非常に珍しい色をしている。腰まで伸びた髪を束ねて結び、中性的に整って美少年とも美少女とも言える顔立ちをしていた。背は若干低めで胸もまな板の様に平べったいのが残念な所だが、男性も女性も区別無しに魅了されてしまうような妖しさを感じさせる美しさがあった。


二人の姿を見た生徒達は小声で感想を言い合う。


「見たか、今の二人?」

「ああ、あんな美人滅多に見かけないぜ」

「お前どっちが好み?」

「俺は栗色の髪の方。ちょっと性格が高慢そうだけどそれがいい」

「オレは断然銀髪の方。 ぺったんこだけど守ってあげたくなる」

「でも、ちょっと妖しく感じない? 目めっちゃ紅いし銀髪だし、ちょっと人外味があるっていうか・・・・・・」

「だが、それがいい」

 とか。


「すごいわね、あの二人組」

「ええ。 でも、何だかちょっと近寄り辛いわね」

「ちょっと背が低めの銀髪の子、可愛くない?手取り足取り色々教えてあげたくなっちゃうわ♪」

「うわ・・・・・・あんた、そっちの気だったの?」

 等々。


 そんなひそひそ話ですら二人はきっちり聞き取って、一人はますます笑い、もう一人はますます顔が青くなる。


「喜べ、ひなたよ! モテくりではないか!」

「全く嬉しくないんですが、聖様!」


 笑っている少女が聖といい、青ざめている少女の方がひなたというらしい。そのやり取りから察するにこの二人は主従関係であるらしい。さらに不思議な事に聖は自分よりも(しもべ)であるひなたに注目が集まっている事が嬉しいらしい。


(何故だ・・・・・・。何故こうなってしまったんだ)


 ひなたの顔色がますます青ざめるの尻目に、聖はニヤニヤと実に楽しそうに笑っている。


(僕は・・・・・・・・僕は! 男なのに!)


 心の中でひなたは叫ぶ。が、それに気づく者は当然居ない。・



 かつて、国を亡ぼしかけた化け物の生まれ変わりと言われ、実の父に命を狙われた少年が居た。

 少年は実の母と逃げ出して、流浪の果てにとある家に拾われて使用人として仕える事になった。

 その家の息女である少女はとにかく破天荒で、周囲を巻き込んでは滅茶苦茶にしていく台風のような人物であり、少年はそんな彼女を主と仰ぐことになった。

 時が経ち、二人は成長し、揃って「世界を滅ぼす化け物に打ち勝つ英雄や勇者を育てる」学園に入る事となった。

 少女は家の名に恥じぬ人物になる為に。 少年はそんな少女を傍で支える為に。


 そして少年は何故か。


 女装して学園で過ごす事になったのである。

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