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第80話 大丈夫




 私を見る目は本心からだと教えてくれた。微睡みもない、答えを指し示す瞳。自分の中の罪悪感に絡め取られた好意に背くことに対して、それこそが良くないことなのだと言われているようだ。


 「別に、澪みたいに好きを知らない人が、いまさらうだうだ恋に悩まされるのも、青春とかを語るには相応しいことなのかもしれないよ?でもさ、悪いことじゃないでしょ。無意識に心の隙間を埋める凹凸関係になって、楽しんで好きになった。こんなの、不可抗力としか言いようがないし」


 「…………」


 何も言えない。言える言葉がない。そうなのかな?と、未知故に頷けもするし、未知故に頷けもしない。けれど、どちらかと言えば、間違いなく正しいのかもしれないとは思う。


 「それに、付き合う付き合わないは、正直どうでもいいでしょ。どうせ家の中では2人仲良く過ごすだろうし、付き合ってなくても、付き合ってるような関係なんだから」


 「……確かにね」


 同棲、とも言えないこともない。家族だが、血は繋がってない。私がそう思うことで、接し方は一切変化ない。


 「風帆くんのことを好きなら、その気持ちに、答えを出さないといけない時が必ず来るよ。ってか、言わないと後悔するよ」


 まるで自分の経験談のように、その悔恨に倣って少し先の地面を見ている。マスコットと言われるほどに小さく、可愛らしさなんて私よりも遥か上空に居るほどの美少女が、今だけは寂寞に過去を思い出されている様子だった。


 「……今、じゃなくてもいいよね?」


 「なんなら、ずっと言わなくても良いと思う。付き合うこと自体しなくても、きっといつか、風帆くんは澪のことを好きになるから」


 「分からないよ?」


 「私には分かるよ。ずっと澪のことを気にして、最近大きく変わり始めてるっぽいし。私も見たことないくらい、躍起になってね」


 元から人と関わることを好みとしない性格で、心を許す相手もたったの2人だった。そんな人が躍起になって私を……。


 「もしかしたらもう好きだったりしてね」


 一瞬の気落ちはどこかへ消えて、今隣には含みのある笑顔を咲かせるマスコットが。


 「だとしたら嬉しいけど、付き合うことは……しないかな。やっぱり、想いを伝えたとしても、伝えるだけで何も関係は変化しないだろうから」


 「ホントに?風帆くんが積極的になるかもよ?学校でもラブラブ出来るんだよ?これまで八尋先輩に求めてきたこと以上のことを出来るんだよ?」


 「それは……」


 魅力的なことだ。今の私は、言ってしまえば溝を埋め終える寸前。過去のことはもう忘れて、今だけを楽しむために、今を必死に生きようと意識を変えた。


 だからこそ、これから恋という、新たな気持ちの溝を埋めるための活動に、多くの時間を費やせる。それを楽しみだと捉えるから、心が揺さぶられた気がした。


 「付き合うことなくても、恋心を伝えれば、それでいいと思うけどね。風帆くんも、付き合うことはそんなに求めてないだろうから」


 「なんで分かるの?」


 「別れたばかりの早乙女さんと付き合えないよー、って絶対に言うし、他人に興味なくて、目立つのも好きじゃないから、公になったりすることはしないのが七夕風帆だからね」


 「なるほどね」


 「お互いに人気はあるから、付き合ってるって言わないと、告白の連鎖だろうけど、どうせ今に固まった気持ちが、どことも知れぬ馬の骨に傾くなんてことはないんだろうし」


 それが1番の懸念点かもしれない。私が七夕くんのことを好いていると言わなければ、付き合って公表しなければ、誰かに取られることだってある。霊にだってそうだ。


 傾かなくても接触して好意を伝えるまでの過程には行ける。それに私が何かしらの文句を言うことは出来ないのだから。やはり、付き合わずとも、想いを伝えて何かしらの条件が必要なのだろうか。


 「少し間を置いたら、七夕くんに積極的に関わろうかな」


 「それを機に、風帆くんに人が集まったら、どうしようか」


 「そっか……」


 「ふふっ。悩め悩め。見てる私は楽しいんだから」


 上下激しいテンションに、いつもよりも引っ張られている。寂しがったり、悲しがったり、喜んだり。この話の中で、何かしら霊の過去に触れたのだろうか。


 「やっぱり家の中だけかな、私の行動範囲って」


 クラスメートに見られない、唯一無二の部屋。自由に行き来出来て、邪魔もない。好きなように話せて笑えて拗ねれる。そこが私の憩いの場かもしれない。


 「学校で、実は私たちは家族です!とか知れても、変な噂が立つだろうし、関わり始めたとしても風帆くんが悩む。だから家でラブラブするしかないよ」


 「んー……」


 「何?盗られることを危惧してるの?」


 「……いや……まぁ、うん」


 「キャァー、素直。私が恥ずかしくなるよ」


 隠しても、何もかもを見抜くから正直に答える。学校で関われないことは、今の私には少し、いや、結構嫌なことだった。


 表ではそうでなくとも、裏では霊という壁がありながらも、好意を寄せる人は多く居る。実際知ってるのは2人。友だちだが、親友とまではいかないため、関わることに罪悪感とか抵抗はないけど、素の気持ちでは居られない。


 「大丈夫。盗られることはないよ」


 「……なんで?」


 「だから、風帆くんも澪のことしか、頭にないからだよ」

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