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第14話 五目並べ




 風呂を終えた俺たち、そして帰宅し、リビングでテレビを見ては2人の時間を楽しむ父と可奈美さん。全員がリラックスモードに入って、既に30分。時間は22時を迎えようとしていた。


 何事も無く、可愛げのある寝巻を着てニヒヒと笑って感想を求めて来た時が1番癒やされたが、今は隣の部屋同士、壁を1枚隔てて声も顔も会うこともない。残念に思えるが、何もなければ毎日会えるので仲を深めることに焦る必要はない。


 なんて思う俺は現在進行系で幽とゲーム中。内容なんて決まってる。もちろん五目並べである。ただ交互に碁を置きあって、1列に5個同じ色の碁を並べるだけという単純明快なルール。これだけだからこそ、深くまでハマって楽しめる。


 ヘッドホンをして、会話しながら煽り煽られを繰り返す。心理戦なんて関係ないが、長引けば長引くほど意識から離れた碁を見失うこともあって、意外と集中力の必要なゲーム。


 賢さでは大敗の俺だが、五目並べという時間をかけても許されるゲームならば、相手の阻止を念頭に、自分で5個並べることで勝ちを取れる。悔しさや声音から本気なのが伝わるので、それはもう気持ちがいい。


 『昨日は5勝1敗、今日は今のところ3勝0敗。相変わらず弱いね』


 「手加減してるからな。幽の泣き顔は見たくないっていう優しさから勝たせてるんだ」


 『1回負けた程度で泣く女じゃないよ。だから次は本気でしてよ』


 「信じられない。泣くって」


 『そうやって逃げ続けて何年?』


 「逃げてないけど3年くらいじゃないか?」


 全く勝ち目はない。油断がないというか、学校で話す時の隙だらけの幽ではない。間違いなく勝ちに来ている本気の幽だ。ゲームをすると人が変わったかのようにスイッチが切り替わり、同一人物とは思えなくなる。


 『逃げないゲームはないの?』


 「ない。そもそも幽に勝てるゲームなんて存在しない」


 『だから可能性のある五目並べとかに懸けてるのか』


 「そういうことだ」


 運ゲーと言われるゲーム、若しくは長考する単純明快なルールのゲームならば勝ち目はある。負けた方は負けを認めたくなくなるが、それでも勝ちは勝ち。正々堂々とした結果だと言い張って煽れる。だから俺はそれを求めて五目並べをしている。


 とはいっても、確率は悪い人に味方するわけもなく、勝ち越したことは今までないが。


 『はぁぁ、風帆くんも負けず嫌いだね』


 「も、って、自覚あったのか?」


 『私は相当な負けず嫌いだよ。特に好きなこととかだと絶対に誰にも負けたくないもん』


 「そうか。めちゃくちゃ分かるわ。俺も少し前までは、負けた翌日に幽を見ると、悔し過ぎて不幸が起きろって願ってたもんな」


 『はぁ?悪辣過ぎでしょ。私も総合勝っても1回でも負ければ翌日学校で不幸が起きろって願ってたけど』


 「なんだそれ。結局類友かよ」


 負けず嫌いは皆一緒。誰もが同じことを同じほど思うわけもないが、仲が良いからこそ、不幸が起きろなんて冗談でも本気でも言える。確実にお互いに本気だっただろうが、笑い話にすることで、悪いことをしたという事実から逃げている。


 『今はどうなの?』


 「もう何も思わなくなったな。極致だ極致。負け過ぎたら人は壊れるんだって、身を以て分かった」


 『ははっ。なるほどね』


 「幽は?」


 『私は未だに思ってるよ』


 ということは、昨日の1敗は今日の不幸を願うことに繋がったということ。その不幸がもしかしたら早乙女さんと家族になったことの天啓ならば、この世界の神はマスコット美少女の味方につくらしい。


 『だからほら、次やろうよ。今日は全勝ちで幸せに寝たいから。それで、翌日から詮索含めて暴きに入る』


 「しっかり覚えてるんだな」


 『ゲームを2時までは死活問題だから』


 「俺には睡眠が死活問題だ」


 誰に於いても睡眠は大切。休日なら、お互い部活もないから夜遅くまでゲームは出来るが、今日はまだ月曜。苦しさはある。


 俺には毎日2時までしたとして、学力を保てそうな幽の頭の良さが羨ましい。俺もそれほどならば、とことん付き合って学校で睡眠させてもらうが、普通に平均的な男なのだ。


 授業中はほとんど無駄話に費やしていても、赤点は取るほど元々頭が悪いなんてことはないが、取り組む姿勢ならば別だ。ノートを読み返したりする程度しか勉強をしない俺は、テスト期間の休み時間という僅かな時間で頭に入れる。それが睡眠で失われればさようならだ。


 鬼の特訓だな。


 『何色を選ぶ?今日は私が白で勝ち続けてるけど?』


 「ならその幸運を貰おうかな」


 『おっけー。ついでに先行もあげるよ』


 「いいや、ここは正々堂々ジャンケンだろ」


 有利を譲られて勝ったとしても嬉しくはない。黒白はただの色で、遊びに黒先行という決まりは必要ない。だからここでは、ジャンケンにより先行後攻を決めることだけが正々堂々なのだ。


 『流石にか。じゃ、そうしよう』


 「音頭は任せる」


 『はーい。最初はグー、ジャンケン』


 「パー」


 『グー』


 「はい、俺先行で。このジャンケンだと負けず嫌いの呪い発動させないよな?」


 『さーね』


 心底負けず嫌いには、こんなどうでもいい順番だけを決めるジャンケンですら悔しがるのだろうか。俺は違うが、根に持ち、今でも呪いをかけるというほど重い幽なら、あり得る。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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