第1話
「あ、あなたのスキルは「倍化」です。」
そう教会にて神父に言い渡された僕は、このスキルのせいで自分の人生がめちゃくちゃに壊れるなんてこの時は思いもしなかった。
「この出来損ないが!!お前は我がフーリッシュ家の恥だ!お前は今すぐこの家から出て行け!」
「と、父さん、そんなこと言わないでよ。僕もっと頑張るから一生懸命努力するから。お願い!見捨てないで!」
「私を父と呼ぶな!出来損ないが!!今すぐ殺してやりたいところだが、最後の情けで生かしといてやる。精々感謝することだな。この出来損ない。生まれた頃はものすごい魔力量だからと期待していたが、こんな役立たずの出来損ないだったとは、今すぐ金を返してもらいたいところだわ。」
そう、僕のスキル「倍化」は体の一部を2倍にできる程度で、それを持ち上げる筋肉などは倍化されずただただ体が重くなるだけのゴミスキルだったのだ。
「父さんやめなよ、そんな出来損ないと話すのは。汚らわしい。 ペッ」
長男のホースが吐いた唾は僕の頭にかかり僕は自分はもう何をしても意味がないと悟ったのだった。
僕はそのまま父の執務室を出て部屋へとバタバタ帰っていく。その道中母や、他の兄、自分が可愛がってきた弟までにも侮蔑の目を向けられながら自室へと入って行く。
自室につき部屋着に着替え自分の机から僅かばかりの銀貨を持って部屋を出て行く。レオ・フーリッシュとして7年間過ごしてきた部屋には高いところに溜まっている埃ともう小さくなってしまった大量の貴族服だけだった。
「あぁ、これからどうしよっかな〜。」
僕は何も考えずに歩き続け足が疲れたので脇道に入って座って休んでいた。
「よう、坊ちゃんいい服着てんな〜?」
そこに現れたのは4人は、今までの人生で見ないようにされていたこの街の裏の部分の人たちだった。その4人は全員揃って下卑た笑みを浮かべいかにもこれから「悪いことしますよ〜」と言う感じの顔で僕の周りを囲んでいた。
「な、何ですか?」(この人たちは悪い人たちだ、お金を守らなきゃ。)
「坊ちゃんの持ってるもん全部渡せや、服も全てな。」
「む、無理です。このお金でお母さんに薬を買っていかなきゃ行けないんです。」
僕は咄嗟によく考えたらすぐバレるような嘘をついて必死に最後のお金を守ろうとした。
だがこの4人には嘘かどうかなどそんなことどうでもよくて、ただラッキー程度にしか思っていなかった。
「いいからよこせや!!ガキが!」
「早く持ってるもんも、着てるもんも全部よこせや!!」
「無理です!ごめんなさい!!」
そう言って僕は大通りに向かって4人の中で1番背の高い男の股の下を潜るように走り抜けた。うまく抜けた僕は大通り一歩手前のところで背の高い男に捕まってしまった。
「おっと危ない。もう少しで逃げられるところだったぜ。」
「やめろ!離せ!誰か助けてください!お願いします!!助けて!」
「うるせぇ!」
ボコッ
ボコッと言う鈍い音と共に地面と足が離れていく。まるでベットの枕のように軽く宙に浮いた僕はそのまま4人の男に殴られ続けるしかなかった。そのまま意識を手放した俺は裸でそのまま目覚めたのだった。