ウグイス付きの空中戦
フッとんだぁぁぁぁぁ!!
「あれ見てください!!」
ピヨは気付いた。下方から自分達に近づいて来る、現世でいう東洋の「龍」の姿を。
「なにアレ!?ノユキ!!?」
「私に分かるワケないでしょぉぉぉ!!?」
てんやわんやしている間にも龍はどんどんと迫る迫る。
「お二人さん!?まずい感じになってますよ!!?」
「そうは言ってもどうしろって言うのよぉぉぉ!!」
そんな事をティナルーが叫んだ時、思いっ切り地盤ごと二人と一匹は吹っ飛ばされた。
「うわぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁ!!」
取り乱す一人と一匹を横目に、ティナルーだけは冷静だった。
「走術!『無道滑走』!!」
能力を発動すると、彼女は宙に坂道が出来たように緩やかに降下していった。
それを見たピヨが彼女に飛んで近づく。
「ティナルーさん大丈夫ですか!?」
「私はね!」
そう言いながら彼女は再び彼をむんずと掴むと
「私よりノユキを羽にしまってこい!!」
思いっっきりぶん投げた!!
「わぁぁぁぁぁぁ!!!!」
まぬけな顔と声を出しながら凄まじい速度でノユキに向かって行く彼は、その付き過ぎた速度を全力で落とした。
彼女は龍に喰われそうになりながらも必死に弓で応戦していた。
「ノユキさん!僕の翼の中に!」
その声に気付いたノユキは彼に手を伸ばした。
龍の牙がノユキに刺さるすんでのところで、スィと彼女は翼に吸い込まれる。
「助かったわ。ありがとうピヨ君。」
翼の中からノユキの声が聞こえてくる。
「外の景色が見えるのね。意外。」
そう呟くノユキに安堵を感じて、ピヨはティナルーに報告した。
「ティナルーさん!ノユキさんは無事です!」
「ナイスだピヨ丸!!」
ティナルーは満面の笑みを浮かべた。
「(ピ、ピヨ丸・・・?)」
彼は呼ばれ方に少々困惑しつつ、再びティナルーに近付こうとした時だった。
「ティナルーさん!危ない!!」
先程ノユキを噛み損ねて真っすぐ下に行った龍が、今度はティナルー目掛けて全速力で上昇してきていた!
「うぉっ!」
驚いた表情と共に彼女は能力を使い、空中にさも床が有るかのように身をひるがえして回避する。
・・・だが避けきれない!!
「わぁぁぁぁぁっ!!!」
「ティナルーが」
「ティナルーさんが」
「「打ち上げられたぁぁぁ!!」」
噛まれこそしなかったが龍の顔面にぶち当たって彼女は吹き飛ばされた!!
「「!!」」
更にそのままの勢いで龍はピヨ達に向かってきた!!
「うわぁぁぁ!!食べられるぅぅ!!」
ピヨは死に物狂いで逃げだすが、どう考えても間に合わない。
龍の大口が一人と一匹に迫って来た。
「うぁぁぁもうダメだぁぁぁ!!」
「真っ二つになれ!『サークルオブナイフズ』!!」
頭上から声が聞こえくる。
見るとティナルーが高速で回転しながら龍の背に沿ってナイフで切り裂きながらこっちに向かって来ていた!
「よっと!」
首辺りまで到達すると、彼女は勢いのままにポンと跳ねた。
「ぐぅぁあああああぁぁ!!」
苦しそうに吠えるが龍はそれでも未だに死んでいない。
それを察知したノユキが翼から飛び出す。
「『カタストロフィ』!」
放たれた矢は龍の口に入り、大爆発を起こした。
「「やったーーっ!!!」」
ティナルーとピヨの声が空に響く。
ピヨはノユキとティナルーの二人を回収し地面に降りると、力尽きてそのまま眠りこけてしまった・・・。
力尽きてはいますが死んだという意味では無いです。