ウグイス喋れるってバレてしまう。
前回、色々有ってウグイスに転生した後、二人の冒険者ノユキとティナルーに出会った田村一樹改めピヨ。
初めての冒険に出る事になるそうです。
翌日早朝、宿屋にて。
「そろそろ起きなよティナルー。」
最早ここまで来るとコレがデフォルトなんじゃあないかと思ってしまうノユキの呆れた声が聞こえる。
「今、日の出後しばらく位じゃん。何で装備まで整えてるの?おかしいよノユキ。」
「ピヨも起きてんだよ?」
「はっや。」
ノユキの肩に乗っている一樹改めピヨ(面倒くさいのでこっからはピヨ)を見たティナルーは気怠そうにベッドから身体を起き上がらせた。
「じゃあ、今日も一狩り行きますか〜…。」
そう言って装備を着込みだしたティナルー、5分少々で自身の装備を整えた。
「やっぱり軽装は良いね。楽。」
そう言うティナルーに反論する様に割り込んで
「見てて危なっかしいんだけどね…。」
とノユキは零した。
ー約1時間後ー
前にピヨが東京駅と比喩したギルドホールでの冒険出発手続き等を終わらせた二人と一匹は、街から約1キロ程離れて厳重に警備された門前に来ていた。
門前でティナルーが
「知ってるか〜?ピヨ。この星にはこの街しか無いって事。後は全部魔物の居る森、森、森。まぁ、街には海もあるし、普通に大きいから不便はしないんだけどね。」
とピヨにこの世界を説明しだした。
「分かるわけ無いでしょ。」
〜ド正論だが今回ばかりは間違っている〜
「それもそうだな。」
ノユキに向かってティナルーがニヤと笑うとそのまま一言で旅を始めた。
「さぁ、行くか!」
ーそのまま暫くしてー
ピヨは一つ確認出来た事が有った。
「(この二人えげつない無い位強い!)」
道中の敵がロクに戦いにならなかったのだ。
道先に居る魔物の大多数はノユキが射抜き、横道から奇襲して来た魔物はティナルーが手刀一閃で貫き倒してきた。
「(コレ活躍出来る?)」
ピヨがそんな不安をよぎらせていると、森が開けると同時に目の前で大きな山が聳え立った。
山の麓には岩で出来た人工的な入口が大口を広げている。
「今日は滅茶苦茶近かったな。」
「(今日は近かった??)」
「ええ、そうね。数時間歩いて辿り着けるのなんで数カ月振り。」
ピヨが困惑している事に気付いたティナルーがまた説明しだした。
「この山は不思議な山なんだ。いつの間にか現れて、山ン中の空洞に居る化け物の親分を倒すと知らない間消える。何が居るかは分かんないが、これ位なりゃ中の中位だな。」
「だ・か・ら、分かるわけ無いでしょ。」
〜デジャヴュである〜
今回、ティナルーはノユキに笑みかけず大口に向かって睨む視線を得意気な笑みとを送っていた。
「行くか。」
洞窟の廊下の中は思ったより明るかった。壁にはガスが吹き出していると思われる孔が有り、全部が全部火が付いていて冒険者を誘う松明みたいである。
暫く歩くと間違いなく人工物の木製の扉が有った。
「(えぇ???)」
「ホントにこの扉何なんだろなー…。何度見ても違和感慣れね……。」
何とティナルーも慣れてる訳では無いらしく、同じ意見を持っていた。
「それはこの世界の学者全員の末代までの疑問。」
〜ティナルーどころじゃなかった。〜
ノユキはそう言うと扉をマジマジと見つめた。
「じゃあ開くぞ。」
ティナルーが手を掛けてゆっくりと開き、隙間から内部の様子を見た。
「ラージゴブリンエリートか…。」
そうして暫く様子見を続けた後、
「今だ、行こう。敵は後ろを向いてる。」
と小声でノユキに呼び掛けた。
二人と一匹が巨大な空洞内に入り、ノユキが最初の一矢をエリートの脳天に当てようとしつつ、その後直ぐにティナルーが切り裂く準備を着々と整えていた時であった!左5メートル程離れていた普通のゴブリンとピヨの目が合ってしまった!!
二人なら雑魚に気付かれても問題になる前に消し炭に出来る技量から来る自信で冷静に対処できたろうがピヨはそうは行かなかった。
「ゔあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
響き渡る叫び。突飛の出来事で硬直する2名。そして敵全員の注目。
「取り敢えず逃げろ!!」
と言うノユキの叫びで廊下に駆け込む二人と一匹。
入ると同時にティナルーが天井の岩をズバぁッと切り落してゴブリン共が入れない様にした。
岩の先では怒号が依然として廊下の3名に向けられている。
ノユキは先程咄嗟の行動を敢行出来たが、今となっては原状を認識し切れずに混乱し、ティナルーの視線は真っ直ぐピヨに向けられていた。
「お前今ヒトの叫び声で叫んだよな?」
ピヨは返答に困った。正直に言うか誤魔化すか悩んだのだ。
威厳と名誉を持ち合わせた自分評議会による自分会議は0.3秒で回答を導いた。
「(誤魔化すしかない!)」
「ホーホケk「そういうのいいから」
「………」「………」
「すんません。」
〜折れた!!!〜