3:やっぱりムカつく
青春させたい。
今日から両親と離れて暮らす。寮に入るから。正直に言うと寂しいけれど、恥ずかしくてそんなこと言えない。男だもん。それに、僕、ううん、俺が家を継ぐんだ!
そんな思いを胸に入学したわけだが、まさか入学式でやらかす奴がいるなんて思わないだろう。なんだあいつは。成績トップで入学したから、代表挨拶を任されたんだろう。その責任の重さをなんとも思わないのか。侯爵だから、何をしても大丈夫と、身分か、やっぱり身分なのかと卑屈になっていたら最後に「僕同い年に様付けされるの嫌だから、よかったらカインって呼んでね!可愛くカイ君でもいいよ!笑」って。呼べるか!そこは身分を気にしろ!あと笑じゃねーよむかつく!
しっとりした気分を台無しにされ散々な入学式だったが、まさかそのあとクラスが同じになり、避けようとしたら目についたのか事あるごとに呼ばれ無視できないでいたらいつのまにか親友と呼ばれる存在になっているなんて誰が想像つくだろうか。展開が早いと思うな。カイのやつロックオンしたやつへの距離の縮め方がえげつないから。3日で落ちるといい。
でも、すごく楽しかったんだ。幸せだった。カイや、彼に狙われた奴らは全員、良いやつだったから。6年間、ずっとではなくても気を張らないといけない生活を強いられると覚悟していたのに、そんなものとは無縁の、楽しい日々。やったことがない買い食いからはじまり、彼らとじゃなかったら考えもしなかった悪戯をする。もちろん怒られるはするが、みんなと一緒ということが、とても楽しかった。この6年で経験したことが、俺を強くしてくれた。
そんな彼ともお別れだ。永遠の別れではない。俺は騎士団に入ることになった。カイは、入学の時と同様に、散々やらかしたのに、首席での卒業。特にしたいことはないからと、同じく騎士団に所属することになったが、外交に興味があるのか使節団についていくことにしたらしい。新人なのにそのあたりどうなってるんだろうか…。
「どうしたの、マイちゃん。」
「誰がマイちゃんだ。俺はマイケルだ。というか最近お前は神出鬼没すぎるだろ。まあ別れの挨拶をしに来ただけマシか。」
「え、別れ?」
「いやマイちゃん無視するなよ。…別れだろ。しばらく会えなくなるし。」
「え、悲しんでくれるの?」
「…当たり前だろ。何年一緒にいると思ってるんだ。」
「うわ~マイちゃんデレてる…鳥肌たった!」
…!!やっぱりこいつむかつく!
「お前はなあ!」
「そんなマイちゃんに朗報。実は実現に向けて頑張っていたアレ、出来たよ。」
「…は?あれが?」
「そう、アレ。」
「マジか!ネーミングセンス皆無な連絡石できたのか!」
「うるさいな!!!!!
とりあえず!!…マイちゃん、連絡取れるよ。いつでも。」
こいつ…
「だからいつでも愛の電話かけてきてね!!!」
「やっぱりむかつく!!!!」
これからもこいつとの騒がしい日々は続いて行くんだろう。でも、不思議と、嫌じゃない。
中身を書かずに終わる。つらい。