2足 三途の川
体がブルブル震える。本能がそうさせる。
「まぁ、そう固くなりゃすんな」
ダミ声で鬼が言う。
「わしゃあ、十指の地獄王の一人、閻魔大王の使いだぎゃ。」
鬼が一言発する度に背筋が強ばる。
「お前は死んで今、そーだのぉ、いわゆるあの世っちゅーとこにいる訳だ。そんで本来なら地獄王様に裁いてもらう為に三途の川を渡ってもらうのだぎゃ、それには通常6億5000年は待っててもらわにゃーならん。」
「ろ、6億5000年…??あの世?」あまりに桁違いの数字。
「ここを少し行くと、暇つぶしに石を積んで遊んでる奴らもいるんだぎゃ、そいつらと同じように待つか、閻魔大王にお会いなさり、早めに裁いてもらうか選べ。選ばせてやるだぎゃ。」
鬼が言う。今いる場所さえよく分からないのに突然の選択。
そうかこここが三途の川というもののなのか。
しかし右も左も分からない状況ならば選ぶ選択肢は無いに等しい。
「いずれ会うののならば早い方が嬉しいです。どうか閻魔大王に会わせて下さい。」
そう言って百足は覚悟を決めた。「おい。」
鬼はニコニコしながら川を指差した。
「話しが早くて助かった。あれに乗れ。」
ごつい指の先を見てみると川に小さな小舟が一隻浮かんでいた。