聖剣、はじめました
僕の腕には聖剣が眠っている。
あ、中二病とかじゃ無いですよ、本当です。
ある日森の中で熊さんに出会っちゃって、思いっきり走って逃げてたら、何時の間にか森の奥の方まで来ちゃったみたいで。
それでどうしようかと思って、一先ず歩いてたんですけど、洞窟みたいな場所を見つけて、中に入ってみたんですよ。
その洞窟物凄く大きくて、どれ位歩いたのか分からないですけど、行き止まりに来たんですね。
そこには何か物凄く光り輝いてる剣があって、地面に突き刺さってたんです。
他に何も無いし、その剣を触ってみたんですよ。そしたら、
その剣が急にピカーッって光り出したんですね。
それで『汝、我に成れ』って聞こえたんですね。
驚きましたよ。普通は『契約せよ』とかでしょ?『成れ』ですからね。
しかも言葉の通り、成っちゃったし。聖剣に。
もう暇で暇で仕方なかったですよ。剣ですからね。動こうにも動けないんで。
ある日、人が来たんですよ。こんな山奥に。
その人は僕(聖剣)を見つけると迷わず抜いたんです。その時パッと頭の中に言葉が浮かんだんです。
『汝、我と契約せよ』って。
何時の間にか、僕はその人と契約しちゃってました。
その人は男……に見える女の人でした。
短く切ってある髪の毛と瞳は水色で、間違いなく男前の分類に入る感じです。
その人と契約を交わすと、僕は人の形に戻ることが出来ました。
どうやら僕は聖剣の精霊に成ってしまったみたいです。人型になると同時に剣は僕の腕に収納されるみたいで。
「あ、これからよろしくお願いします」
「……誰?」
「あ、お好きな様に呼んで下さい」
「……」
「え、あ、ちょっと、どこ行くんですか~?」
僕が喋った途端、その子はくるっと方向転換して、スタスタ洞窟から出て行こうとしていた。
「……着いてくんな」
「もう契約しちゃったんで、無理です」
「……じゃあ契約解消して」
「方法知りません」
「……」
黙ってしまった。
「……あんたと四六時中一緒に居なけりゃいけないの?」
「ハイ!」
「……よし」
そう言ったと思ったら、その人はダッシュで逃げ出した。
「え、ちょ、待ってくださいよ~」
僕も思いっきり走って、追いかけた。そしたらすぐ追い付けました。
「ちょっと待った!」
「……何よ」
「そんなに僕は嫌ですか?」
「うん。だって急に契約って言われても……」
う~ん、確かに僕も急ぎすぎた。っていうか、契約は僕のせいじゃ無いですよね?
「う~ん……それじゃあさ、僕と一緒に契約を解く方法を見つけに行こうよ」
「……何であんたがついて来るの?」
「だって僕は聖剣ですから」
「……」
あれ?駄目でしたか?
「……まぁ、いいや。じゃあよろしく」
「こちらこそ。そう言えば、あなたの名前は何ですか?」
「あたしの名前?えっと……ノエル」
「ノエルですか。いい名前ですね」
「……そんなコト、初めて言われた」
少し頬を赤くして、俯き気味にそうノエルさんは言いました。
「まぁ、これからよろしくお願いします」
「……あぁ、こちらこそ」
こうして僕とノエルさんは契約を解くための旅に出ました。
いつか気が向いたら、続きを書くと思います。