彼女に対する陰口
出る杭は打たれる。
彼から見ても、彼女はでしゃばっているようには見えず、むしろさまになっている。言うことを聞かそうといった、偉そうな感じはまず無い。というか彼女の目的は、できるだけ多くの人と多くの経験をする事。すなわち青春を送ることなのだ。今居るクラスや誰かでないといけない、という風にこだわる訳でもない。
以前に別のクラスの人から五人くらいに、「長田さん! あなたはクラスでボスを気取ってるみたいだけど、特定の人をのけ者にするなんて、やり方が陰湿よ! 向田さんがなにしたって言うの!? 謝って!」と怒りをぶつけながら言われた事があるのだが、彼女は最後まで毅然としていた。
それと彼女は、一緒に遊んでいる友達からも陰口を言われている事を知っている。陰では「でしゃばり」「基地害」「中二病だよね」とか言われているのだ。
だが彼女は、「人なら駄目なところなんていっぱいあるじゃん。今更言われてもね、しょうがないよ。全部真に受けて、全部自分で自分を否定してたら、今までの自分や関わってきた人に申し訳ないじゃない」と気にした様子は無い。
しかし、この言葉には裏がある。「関わってきた人に申し訳ない」と言うが、所詮、関わった内にも入らない奴からの言葉だからこそ聞き流せるのであった。一緒に食事に行ったり遊んだりはしても、やはりうわべだけなのだ。
「そんな事言うやつと、よく遊べるな」
「あなたがよく言うじゃない。勇怯の差は小なり責任の差は大なり、振るまいが人の価値を決めるんだって。そんな事を言われたから友達やめます、みたいな小さい人間にはなりたくないじゃない?」
それから、と彼女は続ける。「仮に酷いことをもっと言われても、それだけで相手の事を決めるような事もしたくないの」全てを見て判断できるような人になりたいと言った。
彼は彼女が怒りに狂うところをみたことが無かった。子供っぽいところで怒った事はあっても、常に理性的で、大人の振る舞いをしていた。
彼女には悪い噂が付きまとっていた。無茶な戦闘を一度とはいえしたため、暴力で訴える頭のおかしいやつだとか。彼が語る友達が男がほとんどだったため、彼女の関心も男子生徒が多くなる。それで男なら誰でも愛想を振り撒く悪女とか一部から言われている。
それでも彼女は気にせずに居た。