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フェチ×フェチ  作者: 兼平
第1章 僕ともこもこ
24/29

探索

ピピピ、ピピピ。


聞きなれた目覚まし時計の音が部屋に響いている。


意識はまどろみ、薄く開けた瞳には薄暗い部屋の天井が映っている。


時刻は午前6時半。


ごろごろと寝返りをうつ。


まどろむ意識でまぶたを開ける。


僕はそこではたと思い出し飛び起きる。



「もこ美!?」


思わず声が出ていた。

倒れてからの記憶がない。

もこ美はどうなったんだろうか?


周りを見回すと見慣れた自分の部屋が目に入ってくる。


どうやら僕は自分のベッドに寝かされていたらしい。


いつもならここでもこ美のもこもこに触れて、電撃を喰らって失神という流れだった。

だが、もこ美はいない。

自分ひとりしかこの部屋にはいない。

改めてもこ美が消えてしまったことを思い出し、当たり前にあったものが無くなってしまうという喪失感が否が応でも迫ってくる。

なんとかしたいが、手がかりがない。


どうすればいいのだろうか。少し考えてみても答えなど見つからない。

まあいい、とりあえず学校に行って白衣男を問い詰めてやろう。

話はそこからだ。


午前7時半。

あせる気持ちを抑え、いつもより早く学校に登校する。

学校に着くと、まずは白衣男の姿を探して物理室に向かう。

が、そこには誰の影も無かった。


まああんな性格の男だ、朝早く出勤なんていうことをする殊勝な思考は持っていないだろう。

そのまま踵を返すすと、職員室に向かう。

職員室にはすでに数名の先生が出勤をしていた。

白衣男を待っていてもいいのだが、何時になるのかはわからないので、1時限目準備をしている社会科の先生に聞くことにする。


「あ、大谷先生おはようございます。すみませんが、白井先生っていつも何時ごろ出勤するんですか?」


声をかけられた大谷先生は少し怪訝な顔をして、逡巡してから答える。


「あら朝早くから珍しいわね山田君。おはよう。白井先生は、実はね、突然なのだけど、昨日退職されたのよ。突然の話だからみんな驚いたんだけれどね。既に校長先生はご存知のようだったし、何もいわなかったのよ。最近の若い人は本当にわからないわね」

「は!?辞めたって?それ本当ですか?いつ?」

「だから、昨日ね、突然やめられたのよ。辞表を出して”持病の癪がうんちゃら”とか言い出してね」

混乱のあまり思考がついていかない。


白衣男がいなくなった?

あまりの急展開に驚く。


「先生、どこにいったかわからないんですか?」

困った様子で顔を傾ける先生。


「それが、わからないの。知っていたらこっちが教えてほしいところよ。今日の授業だってどうするのかしら?まったく」

思い出したかのように、ぷんぷんといったような擬音が聞こえそうな様子をあらわにしている。


あの野郎…

勝手に消えやがって。突然現れて突然消えて問題しか持ってこなかった。


しかし、消えてから気づく。

今回の一連の事件において、あいつ以外に詳しいことを聞ける奴がいない。

それはとても癪なことだけれど、事実は事実として受け止めるしかない。


ちくしょう、あいつは何を考えてやがるんだ。

どこに行ったんだろうか。

正直皆目つかない。

現れる時も唐突だったけれど、消えるときも本当に唐突なやつだ。

ヒントになりそうな情報を持っているのは先生達くらいなものだけど、さっきの会話の感じだと期待もできないだろう。


いきなりの手詰まり感に落胆してしまう。

だが諦めきれない。

何よりもこ美をなんとかして取り戻したい。

あんな別れで最後だなんて納得できるずがない。

絶対に何とかしてやる。


強い思いがテンションを上げてくれるが、実際の解決策となると全くのノーアイデアだった。

現実の壁と気持ちが追い付かない。

そんな、やりきれない気持ちが僕の足を前に進ませ、気がつくと廊下を駆けていた。


とりあえず正面玄関から外に出る。

既に始業のベルは鳴っているので、明らかなボイコットだ。

しかし、昨日のような非日常的な体験をしてしまうと日常の壁を突き抜けることへの抵抗も薄くなるのかも知れない。

あたかも戦争から帰ってきた人間が、日常生活に戻れなくなってしまうように。


外に出るとまずは商店街に向かった。

最初に白衣男が襲ってきた場所だ。

商店街を2往復ほどしたが、それらしき人影はない。

思い付くままに次は昨日の戦闘場所に向かう。


何もない。

何もないというか、何の変鉄もない。


昨日の争いが夢だったかのように、当たり前のように当たり前の風景がそこにある。

手がかりらしきものも特になく。これではどうしようもない。

あとは手当たり次第歩き回ったがヒントになりそうなものは何もなかった。


既に夕方近く日も沈み始めてきた。


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