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フェチ×フェチ  作者: 兼平
第1章 僕ともこもこ
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それは突然に

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


小鳥のさえずりが清々しい晴れ渡った空の下、いつもの通学路を歩く僕。


しかし、体の節々が痛い。ガチガチだ。

これもそれもすべて昨日床の上で気絶して放置されたのが原因だ。


首も寝違えたせいか、うまく曲がらない。

正直憂鬱だ。


はあ、っとため息をつく僕に対して「朝からため息なんて、こっちまで気が滅入るからやめてもらえるかしら」


もこ美から指摘が入る。


「誰のせいだよ、まったく」


「あなたのせいでしょうが、あなたの」

というやり取りが始まるが、これもすでに朝起きてから三回目。


結局こちらが謝ることになるのは過去二回の経験から学んでいるため、あえて言葉を重ねるようなことはしない。


「そうです、僕が悪いんですよ」


「分かっているなら口ごたえをしない」


理不尽な言葉に対して出そうになる反論をぐっと飲み込み、スタスタと歩くことに専念する。


昨日は寝ていたのかなんだかよくわからない状況で一晩を過ごしたため、何だかとても眠い。


学校に帰ったら授業中に少し休もう。そんな計画を立てているとおはようと声をかけられる。


「おお、おはよう」


「ん、なんだか疲れてる?元気ないじゃん。って何その顔?めっちゃ線ついてるよ?どんな寝方したのよ昨日は」


「何、線がついてるって?嘘だろ、やばいな」


そういうと手鏡を出して、ほれほれと僕の顔を鏡に写して確認させてくれる。

うわ、かなりはっきりとした線がついている、きっと昨日床で寝た時に床の跡がついたのだろう。


というか、これ、もこ美のやつ朝から一緒にいるなら教えてくれても良いだろう。


横をみれば、くっくっと忍び笑いをするもこ美の姿があった。


確信犯か、こいつ…


「今日は朝から最悪だ」


「まあまあ、元気だしなって。いいことあるよ今日もきっと。ってそう言えばさ昨日もネット調べてたら凄い虫っていうか、甲殻類の話があってね。ダイオウグソクムシっていう深海生物なんだけど、すごいんだ」


いつも通りの会話が始まると、僕はその言葉を聞きながら学校へと向かう。


教室に着くいてしばらくすると、いつもの調子でホームルームが始まった。


担任の口からは学生水着の泥棒事件がまた起きたということが話題に出された。

どうも僕たちの高校の隣の高校で事件があったらしい。

くれぐれも気をつけるようにとの話だ。


ホームルームが終わると生徒の間ではその話題で持ちきりだった。


「ねえ、さっきの話怖いよね。また事件が起きたんだってよ。しかもうちの隣の高校で、次はうちかもね。やばいよー」

不安そうに話しかけてくるアゲハを。


「そうはいってもこんだけ事件が起きているんだし。学校だって厳重に警備するんじゃないのかな。さすがにそう何度も起きないって」


とりあえず少しでも安心させようと声をかける。


「でも、そうはいかないかも。それというのもね、隣の高校って私立でしょ?最近の水着泥棒事件の件でPTAがだいぶうるさくて、警備を凄い厳重にしてたんだってよ。入り口の監視員以外にも巡回する警備員までつけてたんだって。それなのに事件は白昼堂々と行われたらしいの。これは相当な技術がなきゃ出来ないって話なんだってさ」


「そうなんだ、でもそれってどうやったんだろうな実際。それこそ透明人間でもなけりゃ無理じゃないか?」


「そうだよねー、それくらい難しいよね」


うーん、と一緒に頭を捻るが答えは出てこない。


考えていると一時間目の始まりを告げるベルがなった。


「あ、授業が始まっちゃう。それじゃ後でね」


アゲハはベルが鳴るが早いか、そそくさと席に戻っていった。


しかし、ベルの音がなってからもなかなか先生がこない。

少し教室がざわつきはじめるが、これはちょうど良いと思ったので、僕はもこ美に現状の確認をすることにした。


といっても、もこ美は誰にも見えていないわけで、こんな場所でいきなりもこ美に話しかけたら旗から見たら見えない何かと会話をしている痛いやつに見えてしまう。


声を出すわけにいかない。

そこで筆談だ。


僕がノートに質問を書いていき、もこ美がそれに答えるという方法。


もこ美の声は周りに聞こえないので問題なしというわけだ。


早速、ノートにシャーペンで文字を書いていく。

「まだ今日は何もおかしなことが起きてないよな。本当に敵が襲ってくるのかな?」


「まだ何もないってだけよ。何が起きるかなんて分からないわ。それこそ、昨日だって突然のことだったでしょう。気を抜かないようにしないといけないわ」


まあ、言われるとそうだな。


さらに「でも、こんな人の多いところで襲われるなんてことあるのかな?」と書く。


「それは無いとは言いきれないわ。あの白衣の男も商店街でいきなり現れたわけだし、どういう理由か別の空間に飛ばされたのを覚えているでしょう?あんな方法があるのであれば、人が多かろうが、少なかろうが関係ないわね」


ということは気を休めるわけにはいかないってことだよな。


しかし、あの空間のことにしても白衣男に確認したいことがまだまだたくさんある。


今思い返してもあの時もっといろいろと聞いておけば良かったと悔やまれてしまう。


「白衣男を探すってのはどう?」と今思っていることをそのまま書く。


「何も手がかりがないのよ?見つけられるわけないでしょ?ばかなの?」と一蹴される。


まあその通りなんだけどさ。


次に会う機会がもしあったら色々聞いてみよう。

と、そんなことを考えていると、教室のドアが勢いよく開いた。


「遅れてごめんねー今日はちょっと物理の小林先生は持病の尺をこじりにこじらせてしばらくお休みすることになったので代わりにやってきましたー新任の白井太郎でーす!!」


騒々しい挨拶と共に現れたのはなんと昨日あった白衣男の姿だった。


「な、なんでお前が!」


思わず大声をあげてしまい、慌てて口を抑えるがもう手遅れだった。


教室中の視線がこちらに降り注ぐ。


隣ではもこ美がポカーんと口を開けて、唖然としている姿が見える。


「なんだチミはって、そうです私が物理の先生です。って、失礼な生徒だねー教師生活1分20秒の中でもワーストの生徒だね~まったく。えっっと…」


生徒名簿らしきものを見ながら。

「山田くんかな。今日からよろしくねー。でもさー初対面の大人に

お前呼ばわりはだめですねーめっ!ですねーまあ今日のところはお咎めなしですが、次からは指導しちゃうんでそこのところ覚えておいてくださいね」

口元に人差し指をおき「静かにしましょうね」のポーズをとる白衣男。もとい白井太郎。


「それじゃあ、授業を始めますよー。教科書を開いてくださいねー。あ、ちなみに小林先生はどこまで進んでたかな?あ、228ページ?そう、じゃあそこからはじめましょう」


そう言って普通に授業を始めていく。

出だしこそかなりおかしな挙動だった白衣男だが、授業が始まると普通になじんでいってしまっていた。


あまりの唐突な展開についていけず僕はノートに「あれ、どうなってるんだ?なんであいつがここにいるんだよ?」と書き、もこ美に答えを求めてみる。


「そんなこと私に聞かないでよ。あんな頭のおかしい人間の行動なんてわかるわけないでしょう」


仰るとおり。


それにしても昨日からあいつには驚かされっぱなしだ。


今度はいったい何を企んでいるんだろうか?


いつ襲われても大丈夫なように教室の後ろのドア、逃走経路の確認をしておく。


「まあ、タイミングを見て直接問い詰めるしかないわね。二人で考えていても変態の考えていることなんてわかるはずがないもの」


ひどい物言いだが、そのとおりだ。


あいつの考えなんてわかるはずがないし、聞いてみるしかないだろう。


授業が終わったらどうやって話しかける機会を見つけるか。


シュミレーションを立てて授業が終わるの待つことにした。


「きりーつ、礼。ちゃくせーき」


授業の終わりを告げるベルと先生への挨拶が終わると僕は白衣男に声をかけようと席を立ち上がる。


「それじゃあ山田くーん。授業前の罰として、君今日から物理係ね。早速だけど荷物を片付けるから、ついてきて手伝ってねー」


「え?あ、は、はい」


突然の依頼に敬語で答えてしまった。


こちらから声をかけようと思っていたのに、先手を打たれた。


「はやく、はやく。そんなんじゃ休み時間おわっちゃうでしょー」


急き立てられてついつい教壇まで足を進めると教科書やらプリントやらを手渡される。


「はい、そんじゃ物理室までいきましょー」


そそくさと進んでいってしまう白衣男の後を追いかける。


もこ美も置いてかれないようにと、その後をついてくるのだった。

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