男の思考
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窓ガラスはバリバリに割れ、机は砕け散り、一部炎をあげている喫茶店。
しばらくグラちゃんにレーザーを打ち込ませるように指示をだしていたが5分ほど経っても店内に変化は見られない。
店内は煙が酷く中の様子はこの場所からではよく分からなかった。
もしかしたら、山田ともこ美の二人は逃げたのかもしれないなと考える。
逃げても無駄だとは伝えたが、だからと言ってわざわざやられるために特攻をするようなバカでもないのか。
だが残念だ。
ちょっと期待はずれだな。
このような調子ではいずれロクな目には合わないだろう、まあそれもそれで構わないのだけれど。
仕方が無い。
喫茶店に向けて声をかける。
「あれれーもうお終いかーい?つまらないねー流動食くらいつまらないねーもっと、こう嚥下障害を起こすようなものがほしーいんだけどねー」
「逃げちゃったかなー尻尾を巻いてーしっぽり二人で、なっつってねーカッカッカ」
そう言うと、ごろんと寝転がっていた身体を起こし、立ち上がった。
もしかしたら、出てくるかもしれないかと思ったが、やはり出てくる気配はなかった。
まあ時間はたくさんあるのだ。
出直すか。
私は喫茶店の方向に背を向けて、
「まあいっかー」
と言いながらその場を立ちさろうとした。
が、急に白衣の裾を引っ張られたため、前のめりにつんのめる。
あまりに突然だったため、危うく転びそうになり、おっとっとと、魚型スナックの名前のような間抜けな声を出してしまった。
懐かしいねーナインティナインだったなーと遠くを見つめそうになる。
そんな思いを振り切り振り向くと、グラちゃんが私の裾を掴んでいるのだった。
何か用事があるのなら、声を出せばいいじゃないか。
こんな時まで無口でいる必要も無いだろうと感じる。
当の本人は私の顔を見ると視線を喫茶店の方向に移す。
怪訝な顔をしながら、私もその視線の先を追う。
そこには炎上する喫茶店とそれを包む煙が見えた、火の手が強くなっているくらいで先ほどまでと変わらない。
しかし、すぐに気づく、その煙の中にぼんやりとした人影があるのが。
次の瞬間には、「はあぁぁぁぁぁ!!」と力強い声と共に、その人影がこちらに突っ込んでくるのだった。
あの二人、まだまだ楽しませてくれるみたいだな。
そんなことを考えている私の唇の端は、自然とあがってしまうのだった。




