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フェチ×フェチ  作者: 兼平
第1章 僕ともこもこ
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バトル開始

僕は普通の高校生だ。


殴り合いの喧嘩なんて小学校以来やっていない。


そもそも喧嘩の経験がほとんど皆無と言っていい。


そんな僕がいきなりの戦いで勝てるのだろうか?


そう冷静に考える自分もいた。


しかし、さっきレーザーを撃たれて逃げているとき、眼鏡美人のレーザーを上手くかわせたこと、それが僕のちょっとした自信につながっていたのだった。


僕は大きく息を吸い込むと、目を見開き、敵である白衣男をにらみつける。


が、白衣男はというと、「それじゃ、グラちゃん。後は任せたよー」と眼鏡美人に声を掛けたかと思うと、いきなりどかっとその場にしゃがんで、ごろんと横になるのだった。


は?


なんだこいつ?自分から勝負を挑んできてこのやる気の無さはないだろう。


敵とはいえ、その無防備な姿に僕は唖然としてしまった。


「それじゃあ、はじめねー」


白衣男はめんどくさそうに頬をつきながら、空いた手を宙でひらひらとさせる。

完全にナメてやがる、こいつ。


そんなふざけた姿に僕はカチンときて、何としてもこの男にまいったと言わせてやるんだと、心に強く思う。


そうやって前に進もうとする僕だったが、進もうとした方向ににずいっと手が伸びてきて静止させられる。


もこ美の腕だった。


「どうして止めるんだ?これからあのふざけた白衣をぶっ飛ばすんだろう?」


そう僕が言うと、

「いえ、あなたは多分足手まといよ。さっきの私のジャンプを見たでしょう。あなたと私では根本的に大きな力の差があるの。あなたがでしゃばってしまっては、逆に迷惑よ」

そんなことを言ってくる。


「足手まといって、そんなことはない!俺だってやれるって!」


もこ美は困ったように表情を曇らせ、


「足手まといは、足手まといなのよ。私の後ろにいなさい」


そういうとぽんっという感じで軽く僕の身体をおす。


物凄く軽く押しているような印象だったのに、その力は大きく、僕の身体はバランスを崩し、後方に吹き飛ばされていた。


「これが証拠よ。しばらく、後ろで見ていてちょうだい」


そう言って正面に向き直るもこ美は、さきほどグラちゃんと呼ばれていた、眼鏡美人と対峙するのだった。


「それでは始めましょうか?異形の者同士、楽しい舞踏会と洒落こみましょう」


そのもこ美の言葉がこの戦いのゴングの代わりだった。


次の瞬間にはもこ美は素早く身を屈め、前進をばねにしてもの凄いスタートダッシュを切る。


その加速は凄まじく、一瞬で最高速に達するというチーターを彷彿させる。


そのままのスピードで眼鏡美人の懐まで入ると、爪をむき出しにした右腕を思いっきり振り降ろすのだった。


まさか、こんな簡単に決まってしまうのか?


僕はもこ美の力を侮っていたことを実感するとともに、さきほどの足手まといと言われた理由を改めて実感するのだった。


次元が違いすぎる。


正直この戦いは終わったと思った。


そして、目の前でガキンっという甲高い音がぶつかる音が聞こえてきた。


その音はもちろん、もこ美の攻撃が直撃した音だと思ったのだが、よく見るとそうではないようだった。


もこ美が振り下ろした右手に対して、眼鏡美人は両手に持った黒い棒のようなものをクロスさせてガードしている。


甲高い音がしたのから考えるに、金属製の物体なのだろう。


ガードをした足元から眼鏡美人の回し蹴りが繰り出されるのを回避するためにバックステップを踏み間合いを取るもこ美。


状況は振り出しにもどる。


改めて眼鏡美人の手元を見るとT字を少しバランス悪くしたようなものを持っているのがわかる。


あれは、カンフー映画などで見たことがある。


たしか、トンファー・・・


くそ、決まったと思った初撃をガードされた。


これは精神的にダメージが大きい。


もこ美も同様に感じているらしく、歯噛みをしている。


僕が自信を持っていた理由、そして戦うのを決めた理由はさきほど挙げた。


それはレーザーの攻撃パターンをあらかじめ見ていたということ。


そこに加えて、実はあの手の遠距離パターンの攻撃をする敵と言うのは、懐に入られると弱いという認識がどこかにあったからなのだ。


さっきもレーザーを撃っているときはあまり動かなかったし、見た目ももこ美のように近接戦が得意なようには見えなかった。


これがかなりの誤算だった。


もこ美の身体能力はレーザーをかわして逃げるときのジャンプから、かなり高いものだということは分かっている。


その身体能力を活かして一気に詰め寄れば、勝てるというその考えの甘さを再認識させられる結果となってしまった。


しかもさっき僕を軽く押しただけで突き飛ばすことができるもこ美の本気の一撃を、両腕とはいえ受け止めることができるというのは、かなりの腕力も持っているということだ。


くそ、遠距離攻撃に加えて、近距離格闘の対応もしているとは・・・


厄介な相手である。


ガンダムで言えば、GとWの力を一人で持っているようなものだ。


「GW・・・」


ぼそっと呟く僕。


「どうしたのかなー山田太一くーん?ゴールデンウィークの話をしてくるなんて、ずいぶん余裕なんだねーそれにしても、今の一撃はよかったよ、もこ美ちゃん。でもざーんねん。私のところのグラちゃんはねー遠距離も近距離も得意な、両刀つかいなんだよー両刀っていっても、エッチーな意味じゃないけどねーカッカッカ」

と嘯く白衣男。


この野郎、人の独り言を勝手にひろうな!


憤るが戦況が変わるわけでもない。


もこ美の攻撃を防いだ眼鏡美人はトンファーを持った手を、眼鏡の縁に添えている。


眼鏡が先ほどと同様に光輝く。


ビッという音と共に発射するレーザーを身を捻り回避するもこ美。


一撃目をかわすと間髪を入れずに二撃目がくる。


もこ美はそれもさっと避ける。


発射されるレーザーの隙をつき、もこ美は先ほどと同様に間合いを詰めて斬撃を繰り出す。


しかし、それもトンファーで軽くいなされてしまう。同様のアタックを何度か繰り返すが、結果は変わらなかった。


いや、何も変わらなかったわけではない。


もこ美の息は軽く上がってきている。


疲れてきたのだ。


打って変わって眼鏡美人は涼しい顔をしている。


このままでは、いずれもこ美は力尽き、レーザーの直撃を喰らうはめになるだろう。


僕は初撃を外してから今まで考えていた、ある作戦を実行に移すことにした。

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