町を一周
町に入ると、ユースは人に囲まれた。町人達は、口々に無事の帰還を喜んでいる。中にはエルフや獣人も見受けられた。狂暴なあの熊の討伐のために森に来ていたそうだ。
俺の事も、ユースが信じるからと受け入れられた。混乱を避けるため、来訪者については伏せたが。
「人気者なんだな。」
「おう。防人は、心・技・体揃った戦士だけがなれる町の憧れだからな。オレも小さい頃から憧れて、頑張って訓練したんだぜ。」
出迎えを抜けて、ユースに町を案内して貰いながらの会話だ。敬語がとれているのは、ユースからの希望だ。
案内はまず、町長の所で熊の討伐達成の報告と俺の紹介。来訪者の事も話した。やはり、ユースのおかげで認めて貰えた。
「来訪者とは、神の招きにより異世界より現れた超人である。姿形は人間なれど身体は丈夫、技の習得も扱いも上。されど、恐れるべからず。彼らもまた、有限の命を持った生命なり。」
町長の語る言い伝えから、来訪者の身分は女神が保証している事を知る。
「騙る奴も居るけどな。」
(…少し不安だ。)
町一番の魔法の使い手と言う婆さんに会わせてもらった。
「属性は、地水火風氷雷光闇と8つ全部。だが、系統は、エンチャントのみだ。」
魔法の達人は、他人の適性が見えるそうだ。技能の一種によるものだ。
「スゴいのかショボいのか分からんな。」
(ほっといてくれ。)
食料品店には、見た事があるものから変なものまでずらりと並んでいた。
「組合に大グマや一角ウサギを卸すつもりだから、捌いて店に並べてくれや。」
「あの熊を仕留めたんですかい。さすが、ユースさん。」
(肉類は、あの猛獣の肉なのか。)
雑貨屋は、色んな物で溢れていた。人は見当たらないが、
「いらっしゃい。新作思い付いたんで、奥の工房で作ってんだ。好きに見てってね。」
(どこかに、カメラやスピーカー代わりの物でもあるのだろうか?)
「旅人の支援組織みたいなのって無いのか?」
雑貨屋を出た時、俺はユースに尋ねる。
(ギルドはファンタジーの定番。有ると思うが、果たして…。)
そんな考えが浮かんだからだ。
「冒険者組合の事か?」
(やはりあるのか。)
冒険者組合…通称 組合は、国営の互助組織で旅人のサポートを任務としている。
依頼の受付・発行および、結果の査定
冒険者パーティ登録・解散の申請
狩りの獲物の査定・買取り
と、
(まんまギルドだな。)
な任務内容だった。
追加で依頼料を払えば、受ける相手を指定出来るらしい。
「つまり、オレは町長の頼みであそこに居た訳だ。」
内容量拡張がかかっている袋から熊やその道中狩った獲物…俺のウサギ含む を取り出し、査定して貰いながら説明してくるユース。
ちなみに、ウサギの分の金は後でちゃんと貰った。
……思ったより少なかった。
あまり大きくない町だが、必要な施設は全て揃っている。
服屋を軽く流して、その次に訪れたのは病院だった。
実際には、医院と呼ばれる大きさだが。
「優秀な治癒術士が一人いれば、大抵の傷病はすぐ治るからな。」
(術士の住宅と多少の入院施設があれば、十分て訳か。)
「天才のあたしでも、死んだ奴は治せないから無理はしない事だな。」
とは、此処に住む女医の言。
(来訪者も死ぬんだろ。そしたら帰るのか、そのままか。)
賭けるには、リスクが重すぎた。
能力一覧
変化なし