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異世界を九十九と一人旅  作者: 書積 詠人
エピローグ
302/302

神の座より

最終回です。


2015.2.12 12時現在

総PV およそ130万

ブックマーク 716件

総合評価 1630pt


これまで、ありがとうございました。

巨大な本棚には大量の本。

周りには所狭しと積まれた資料の数々。

俺がいるのは所謂(いわゆる)書斎だが、この書斎があるのは神の領域、神界だ。


「神ってのは案外地味で孤独な仕事なんだな。」

「その呟きもこれで何度目かしらね、あなた。」


神界に時間の概念はない。

現在・過去・未来の一切が資料となって積み上がる。


[ーーー交流会(サークル)を語る上でガイ・アイオイを忘れる事は出来ない。

リーダーを務めたこの男は、作成物を部下とし、金の回りを操る、正に誰より神に愛されていたと言える。

神の娘と結ばれた後、その商才を遺憾なく発揮し、世界の景気を健全に保った。

その才を買った義娘に少しずつ教えを施し、後事を託して天に昇る。ーーー]


偉人や伝承の力を借りて戦っていた俺達も、いつの間にか歴史家に語られるようになっていた。


ウルルはその後、俺の教えを守りアイオイを文化を支える大きな基盤とした。

その次も、そのまた次も、「アイオイは調整官であれ。金の流れを読み、その淀みを直す。その利潤でもって、新たな価値を作り出す。」に従ってくれている。

水龍(アクアドラゴン)の生態から学んだ物だ。

ウルルに後を任せた事が、血縁ではなく実力をもって代を繋ぐと言う慣習になってくれた。

九十九神達も歴代当主を支えてくれている。

また、俺が死期を察して封印した兵器は、今のところ目覚めたと言う記録はない。


資料に目を通しながら、俺はそんな具合に生前を振り返る。


「たった一柱でこれをやっていたと思うと、先代の苦労が偲ばれるな。……で、ステラ。義母さんは人世(ひとよ)?見かけないけど。」

「ええ。なにやら面白い物を見つけたみたい。」


俺が人の寿命を終えてこっちに来るなり、先代主神である義母……女神は、その権能を丸々押し付けた後、人世と神界を好きに行き来している。


「ただいま!」

「おかえりなさい、お母様。」


人世から先代が帰ってきた。

その腕には本が数冊抱えられている。


「ただいま。私の娘、導きの女神ステラ。」


俺とステラが神界に昇った事により、神話にも変更が入った。

先代の主神にして創世の女神ティーカ。

その実の娘にして導きの女神ステラ。

ステラの夫にして主神、俺こと創造の神ガイ。

この三柱で語られている。


「義母さん、その本は何?」

「よく聞いてくれました!ガイ、あなたに強く関わる物よ。」


本を受け取り、題を読む。


「英雄シリーズ?[少年騎士の冒険]、[二人の魂は惹かれ合う]、[ゴールド探偵帳]、[海を往く]……これは!?」

「著者はエメロード、……アリスさんね。」


内容は小説。

悪が語る風刺ギャグがあれば、徹頭徹尾殴って進むオーバーキル冒険譚、医療ドキュメンタリーチックな物に、法廷ドラマ。


「全十一タイトル。「世界よ!あたし達を忘れるな!」って所か?」


最終巻は、天使と出逢い神に至る孤独な少年の物語。


「いいえ、むしろ「ガイ!あたし達はここにいる!」じゃないかしら。」


世界(クタルティーカ)は今も、十一の概念が互いに干渉しあって均衡を保っている。

九十九神と旅した果てに、俺が願った形通りに。




神が世界を作るに非ず、ただ箱を用意するのみ。

人こそが色や形を作り、そこに意味を見いだす。

神の座より、全ての人に感謝と尊敬を。

本作もこれにて完結です。

後愛読頂きまして、ありがとうございました。




二作目「太郎さんと僕」は、一日置きに投稿中です。

よろしければ、ご一読ください。

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