幸せはここに
「ただいま。」
俺が暮らすアパートの一室。
大学の頃から、変わらずここに住み着いている。
「おかえり。」
変わったのは唯一つ、
「久しぶりに仲間に会ってどうだった?」
「変わってなかったよ、皆。」
共に暮らす恋人の存在だ。
「一緒に冒険した仲なんだって?良いわね、そういうの。」
「その冒険も本物かどうか分からないけどな。」
「でも、共通の体験なんでしょ?それならそれで良いじゃない。」
彼女は来訪者ではない。
「星羅、何も言わずこれを受け取って欲しい。」
「もう!やっと言ってくれたわね。待ってたんだから!」
でも、夢で会ったあの娘によく似ていた。
よく似ていて、よりいとおしい。
幸せはここに……。
「クローンを送るのよ!安心しなさい、万能細胞も真っ青な安全な製法だから。通行料やらで体の一部を持っていかれる事も無いわ。あたしの手にかかれば向こうでの幸せは保証されたも同然よ!」
(なんだろう?向こうで幸せにやり直す風景が見えたぞ。)
神の後継ぎにはなったが、今の俺に神がかった力はない。
向こうに行く俺に幸多からんことを……って願いが見せた幻と俺は決定付ける。
「ほらほらシェンロン!帰還希望者はそのまま送り返すんだからリストを作る!クローン作るのに必要だから、細胞と向こうでの情報を頂戴!スノーが適任でしょ?」
アリスがてきぱきと指示を出す。
俺達はそれに従い、準備を整える。
大多数の来訪者は帰還を望んだが、交流会メンバー以外にも残留を選ぶ人がいた。
シャッガイを気に入ったメアリーとノア。
ジョンの側を離れられないアイリなどがそうだ。
「結構高性能になりそうだから、引き継がせたい能力を選びなさい。あくまで不自然でない範囲で!」
準備が終盤に差し掛かった頃、アリスが俺達交流会にだけこっそりと教えてくれた。
「そういう事なら、僕は【カリスマ】を選ぶぜ!」
「ボクは【悪意察知】かな♪」
「【一心同体】よね。」
「うむ。」
「meは【審美眼】をselectするわ。」
さっと決まる奴が次々要望を出す。
ちゃんと生活で使えそうな能力ばかりだ。
他は悩み悩んで、能力を選ぶ。
ユウシは【勇気】、シェンロンは【矛盾指摘】、ハジメは【シミュレーション】、タケルは【スタミナ】だ。
「向こうじゃオレ、病弱少女だしな……。」
「その点は大丈夫。奇跡の快復!ってなるから。あたしなんて魔法関係ばっか。」
結果、スノーは【カウンセリング】、アリスは【錬金術師】から派生した【素材理解】を選んだ。
ちなみに俺は、【神算鬼謀】だ。
「本当に宜しいのですね?この者達を送ると言う事は、あちらに皆さんの居場所がなくなると言う事ですよ。」
眠る分身達の側で、女神が最後の確認をする。
だが、俺達の答えは変わらない。
「俺達の幸せは、ここにあります。向こうの幸せはそいつらの物です。」
聞き届けた女神は分身達を地球に送る。
光となって消えていく彼らにとって、こっちの出来事は全て夢物語になる。
「行っちゃったね。」
「達者で。もう一人のぼく。」
「それではステラにガイ。また会う日を待っていますよ。」
「そう簡単に行かないので、気長に待っていて下さい、お母様。」
分身を見送る俺達と、女神を見送るステラ。
その全てが空に消え、俺達も解散の時が来た。
ここからは、それぞれの人生だ。
これをもって、シナリオエンドです。
あと、後日談的な話をいくつか挟んで終了となります。




