素の実力
大剣と双剣が幾度もぶつかる。
ユウシの攻撃は俺にかすりもしないが、俺の攻撃もまたユウシには届かない。
「なんで。なんでなんだ!」
「なんでって聞かれてもな。」
派手さの無い剣撃の応酬のどこに疑問を持つのか、俺には分からない。
「片手で大剣を振り回している事か?それは、エンチャントで腕力その他を強化しているから。」
「違う。」
「攻撃が当たらない事か?それは、【神算鬼謀】で動きを読み、【縦横無尽】で安全な所に移動しているから。」
「違う!」
「なら何だ。俺は真剣に戦っているぞ?」
「なんで本気を出さない!」
ユウシは苛立ちを叩きつけるように言う。
「兄貴の本気がこんな物か!もっと圧倒的で、鋭くて、そして、そして……。」
「あー。それは買いかぶりだ。」
「謙遜はもういらない!」
「事実だ!」
俺の一喝に、動きが止まるユウシ。
「黙って聞け。敬ってくれるのは嬉しいが、俺の素の実力はこんな物だ。避けてかわして挑発して、出来た隙を突くぐらいが関の山。俺の凄さは全て九十九神による物だ。」
「じゃあ、今の兄貴を倒しても最強を名乗れないじゃないか!」
ユウシは悔しそうに吐き捨てる。
その様子に、
(話が出来ないくらい虜人形になると思ったが、強さへの執着が上手く耐性と噛み合ったか。)
と思う。
この時期の少年の「強さ」への憧れは、何より強いと言う事だろう。
「そんなに本気が見たいなら、出させればいいだろ。」
「え?」
「俺に「使わなきゃヤバイ。」と思わせれば、九十九神を使わざるをえないだろう。」
「そっか。」
「勿論、全員でかかってきてかまわない。さあ、来い!」
俺の煽りが上手く働いたのか、先程よりは手強くなった。
それに加え、たたみかけるように仲間との連携攻撃が来る。
(動きが丸見え。まだ【神算鬼謀】を上回る攻撃は出来ないか。しかし、ユウシは単独で戦うより一団を率いた方が輝くな。)
「皆、兄貴はまだまだ余裕みたいだ。テンポ上げていくよ!」
「「「「「はい!」」」」」
優秀なパーティだ。
各人の役割を十全に行える位置取り。
互いの癖や隙をカバーし合う連携。
集団で戦う利点と欠点を十分に理解している。
「やるな、ユウシ。」
「まだまだこんな物じゃない!」
普段のユウシに戻ってきている。
だが、最後まで付き合ってやるつもりはない。
「それは……スフィア?」
「そうだ、よっと。」
真上に舞い上がるスフィア。
「閃光だ。直視するな!」
目で追っていた人達の視線が、ユウシの声にこちらに戻る。
「やるな。だが、本命はこっち。」
頭上の閃光に続けて、その場を支配する暴音。
俺が新たに出したスフィアによる物だ。
二つ合わせて、スタングレネード。
光と音に怯んだユウシに、俺は大剣を振り下ろす。
本年も、応援ありがとうございました。
能力一覧
天職:根源 ザ・クリエイター 技能:創造D
加護:九十九神 技能:人格投与S、擬人化S、具象化S
能力:神算鬼謀B、 神の寵児D、 縦横無尽D、武士S(max)、射手S(max)、覇気A、隠密A、罠師D、エンチャンターS(max)、鋼の心S(max)、応急措置S(max)、薬物耐性A、千里眼B、漁師D、教師D




