旅立ちは逃げるように
「諸君。見事な働きぶりだった。怪我人が出たのは残念だが、死者は0。これも全て諸君らの日頃の鍛練の成果である。ボクは支部長ではないため、君達に報償金を出す事は出来ない。ならばせめてと、自費でこの会を開かせてもらった。思う存分楽しんでくれたまえ。乾杯!!」
の音頭で祝勝会が始まった。
グラスを空け、皿を空にし、騒ぎあっている。
俺はその片隅で、
「決めた。ロビンとヨイチ、それがお前達の名だ。」
「オーライ。任せとけッス!ご主人。」
「…………。」
「「応、主。」だそうッス。」
魔導弓と狙撃弓に“名付け”ていた。
軽い性格になった魔導弓と無口な狙撃弓。
「これからも、頼む。」
2本の弓を新たな仲間にした。
弓をキャリーにしまっていると、
「失礼。ガイ様でございますね?」
後ろから話しかけてくる。
振り替えると、見るからに聖職者な男が立っていた。
「私はこの度この町に派遣された、洗礼名イミツと申します。伝説の来訪者にお会い出来て、光栄の至り。」
「その聖職者イミツ殿がどのようなご用件で?」
「はい。ガイ様には、我らが「クリシャナ教」に入って頂きたいのです。」
(布教か。面倒だ。)
俺は宗教に興味はない。
「お断りします。」
「そんな。女神の導きでこの世界に降り立ったのでしょう?ならば、貴方は女神の使徒。なぜ断るなどと。」
来訪者と知ったうえでの布教。
この流れは予想していた。
(一番面倒なパターンとしてな。)
「お答え下さい。」
「ならば、言いましょう。俺は女神などどうでもいい。女神と俺は雇用関係にあるだけ。「世界を旅して下さい。」「はい。」これだけです。そこに敬う義務はありませんよ。」
「貴方は我々を敵に回すと?」
「その極端さ。益々嫌いですね。あんたが何を信じるかは自由。勝手にして下さい。だが、俺を巻き込まないように。来訪者が欲しかったら他をあたって下さい。どこに何人いるか知りませんが。」
そう言って場を離れる。
後々が面倒そうだが、捕まった方が余計に面倒だと思った。
(明日、出発しよう。)
知人を探して、騒ぎの中を行く。
「お世話になりました。」
昨日の聖職者から逃げるような形だか、ちょうどいい機会だった。
「遊びに来いよ。」
「今度剣を教えて。」
「死ぬんじゃないぞ。」
どうやら、結構好かれていたみたいだ。
「大活躍だったな。なら、大丈夫だ。」
「三食取るのよ。」
「主人はあの調子だから何も言わないけど、貴方は誇りよ。私にとってもね。」
「スフィアの利権。本当にもらって良いのか?」
「お前さん。結局、店で何も買わなかったな。」
「天才の私がこんな中途半端で教え子を送り出す事になるとは。」
「ガッハッハ。留守中、とんでもない事になっていたようだな。すまんすまん。」
「君を誘えなかったのは残念だが、決闘の結果だ。不満は言うまい。あと、あのゴブリン軍だが、龍に怯えて数を増やし、龍がいなくなり食うに困ったらしい。」
知人の見送りで、俺は今日この町を去る。
「ギルベルト様がお世話になりました。王都にお立ち寄りの際は、サイア家にお越し下さい。出来る限りのおもてなしをさせて頂きます。」
最後にギルベルトの側近から書状を受け取る。
決して無くさないよう厳重注意付きで。
「皆さん、お元気で。」
俺は進む。
途中振り替えると、まだ手を振っていた。
「さて、どっちに行くかな?」
町も見えなくなり、目的地もない。
(今さらながらの)プレートの地図には、
(リーンリットと周辺だけ。)
歩く事で広がる地図だった。
「まぁいい。適当に行くか。」
俺は、九十九神と旅を始める。
能力一覧
変化なし




