ゴブリン軍襲来
龍殺しから数日。
俺は、組合を通してやってくる依頼に忙殺されていた。
「なんでこんなに依頼がくるんだ。」
「そりゃ、お前が“龍殺し”の相方だからだろ。」
「それに“史上最高の弟子”だし。」
「え~、“断らない男”だからでしょ~。」
面倒くさがって、文句は言っても依頼を断らずにいたら、色々言われるようになってしまった。
「「「それに来訪者だし。」」」
正体についても盛大にバレた。
誰かが口を滑らした訳ではない。
俺があまりに滅茶苦茶し過ぎたからだ。
(完全に自業自得。)
これからの動き方を思案する。
バタンッ!
「大変だ!ゴブリンが押し寄せてくる。」
入ってきたのは、外敵監視をしている男だ。
【遠視】持ちであることとその性格から、嘘ではない事が分かる。
組合所内がざわつくもそこに緊張感はない。
(ゴブリンは数だけの雑魚…だったか。)
何百押し寄せて来ようと敵ではないようだ。
だが、
「その数、およそ1万。」
その言葉で空気が変わる。
雑魚には変わらないが、その数は異常なのだろう。
「そんなに多いのか、1万ってのは。」
「そうだ。大量発生して、2,3千。だが、今は時期じゃない。おまけに数が数だ。」
異常も異常。
前例なき事態らしい。
「支部長はどうした?」
「転移魔法で消えたってよ。」
「いつも偉そうにしておいて。」
「マスは?」
「新しい弟子見つけたって、朝から遠出だよ。」
最早パニックだ。
指揮系統が全く機能していない。
「静まりたまえ。」
強い言葉に場が鎮まる。
“龍殺し”の登場だ。
ギルベルトの指揮で、場は持ち直した。
転移魔法の使い手を向かわせ、周囲の町に警戒と援軍を要請。
非戦闘員に家から出ないよう厳命。
ユースと合流、防衛計画の立ち上げ。
(独りが怖いと、暴れていたのが嘘のようだな。)
【カリスマ】でも持っているかのような活躍ぶりだった。
そして、防衛隊は町の前にいる。
「良いかね、諸君。ユース殿達守備隊は町から離れられない。よって、我ら冒険者が敵を駆逐しなければならない。しかし、安心したまえ。諸君にはボク、“龍殺し”がついている!」
「「「「うおおおおおぉぉぉ!!!!」」」」
ゴブリンは徐々に近付いてくる。
その数に押される事なく、こちらの士気は高い。
(【カリスマ】に目覚めているだろ。これ。)
怯える事なく、昂る事なく観察する俺。
いよいよ、開戦。
「今だ、放て!」
その合図に合わせ、矢と魔法が飛んでゆく。
俺も狙撃弓を構え、確実に射抜く。
「魔法強すぎだろ。」
思わず呟くほど、ゴブリンを蹂躙する魔法の数々。
消し飛ばしたのは二割、二千いくつだろうか。
それでも、ゴブリンは止まらない。
(魔導弓。)
(あいよ。)
互いの距離は更に近付く。
大規模魔法が封じられる。
弓と小規模魔法で数を削る。
それでも一割弱、これで平時ならば終了していた。
「剣を抜け!突撃!」
接近戦に入った。
各々が愛用の武器を手に、ゴブリンと相対する。
攻撃特化の魔法使いはここでリタイア。
支援の使い手だけが護衛と共に、場に残る。
(俺も行くか。)
刀を抜き、群れに斬り込む。
接近戦では、「ソロはソロ、パーティはパーティと、戦いやすいやり方で蹴散らす」というシンプルな作戦が執られた。
(他の邪魔さえしなければ自由。やりやすい。)
【威圧】でビビらせ、【間合い取り】と【刀術】で各個撃破。
俺のスタイルに、余人はかえって邪魔だった。
一太刀で切り捨てられるゴブリン相手だからかもしれないが。
能力一覧
変化なし




