討伐報告と龍の剣
町に着いたら、住人総出で出迎えられた。
ギルベルトは、早速メンバーに囲まれている。
(貴族の特権だけじゃないみたいだな。)
町長が事情を訊いてくる。
なんでも、入って行った森から大きな音がするから有志を募って、ちょうど出発するところだったそうだ。
「分かりました。全て話します。」
俺に都合が良いように、脚色して話す。
もちろん、来訪者関係はカット。
まず、森で着かず離れずの追いかけっこを行っていた。
バッタリ、何故かいる陸龍と遭遇。
一時休戦、龍を相手に一昼夜ヒット&アウェー。
ギルベルトの剣と魔法が炸裂。
俺の役割は、囮と逃走経路の確保。
なんとか倒しきったのが、先ほど。
町に戻る途中、不意討ちで一本取り、決闘は俺の勝ち。
(ほとんど嘘だな。誰も損してないし構わねぇだろ。)
証拠として、龍の死体を提示した時、全員に驚きとどよめきが走っていた。
何か言いたげな(メンバーに讃えられている)ギルベルトと、嘘を見抜くユースには、後でフォローが必要そうだ。
ピコン♪
新しい能力、【話術】が加わっていた。
虚実入り交じった説明をしたからだろう。
(実際、二人で龍殺しって点と決闘の勝者は俺って点が伝わればいいし。)
龍殺し達成に、町中がお祭りと化した。
“龍殺し”の称号は、俺の(偽)説明と仲間の盛り上がりぶりから、ギルベルトのみが取った。
称号は名誉だけで、特典は何も無い。
(名誉を重んじる貴族や騎士には、大事かもな。)
舞台に上げられ、初対面の調子を取り戻しているギルベルトを見るとそう思う。
(さて、ユースには真実伝えとくか。)
俺の正体を知る、嘘を見抜く、口の固い(嫁例外)男を探して、祭りの中を進む。
ちなみに龍(と砕けた樹木)は、ルールに則って等分。
俺は手数料を払い生産素材に、ギルベルトは売却したようだ。
お祭り騒ぎが止む気配すらない翌日。
俺は、ガドさんの工房を訪ねている。
所持品の強化をするために。
使用料を払い、刀と素材(の一部)、そして、
(今日も頼むぞ。タタラ。)
(了解だぜ。親方。)
人格投与を行った金槌をキャリーからとりだす。
「うーん。やっぱり、傷んでいるな。」
刀を分解して刃を見ると、所々に小さくない傷がある。
刀が自己修復の付加を上回るダメージを負った証だった。
(今回。その龍を素材に強化するから、簡単には負けないようになるな。)
タタラの言う力加減とタイミングで、刃を鍛え直す。
強化を終え、刀を元の状態に戻す。
そこへ、
「口止め料として、剣を作って欲しいんだ。」
ギルベルトがやってきた。
「使っていたのは、完全に寿命らしい。」
そう言って、自分の取り分の牙を渡してくる。
元々、ガドさんに牙を剣にして貰うために来たそうだ。
(口止め料ならば、拒否出来ないな。)
持てる全力で剣を鍛える。
「素晴らしい。」
出来たのは、真っ白に輝く片手直剣。
どうやら、気に入って貰えたようだ。
「これに免じて、昨日と正体については黙っていよう。おまけに、ボクを名前で呼ぶ権利をやろう。」
「それはそれは。ありがとうございます、ギルベルト殿。では、作業が残ってますので、失礼します。」
そう言って、俺は再び槌 を取る。
刀の強化ですべき事は終わりだが、さっきの剣打ちで発想が浮かんだからだ。
こうして、龍の牙,爪,骨を混ぜた銀と黒、二本の片手剣を作り出した。
能力一覧
天職:レンジャー 技能:射手D、威圧D、気配遮断A、木工技師D、料理B、罠設置D、平衡感覚B
加護:九十九神 技能:人格投与S
能力:間合い取りD、幸運C、刀術A、鑑定B、鍛冶師C、エンチャンターB、精神防御C、魔具作成A、仕立て師C、調薬B、応急措置C、薬物耐性B、話術D(new)




