危険はすぐそこに
眩い光が少しずつ晴れていくと、そこは深い森の中だった。
(本当に異世界に来たのか?)
今までの事を思い出しながら、付近を見渡す。
周りは草木ばかりで、異世界か現実かを判断する材料は見当たらない。
次に自分に意識を向けると、
「服が変わってる。」
ゲームで見るようないわゆる旅人の服になっていた。
腰には、ナイフが鞘に収まった状態でさしてある。
そしてポケットに手を入れてみると、1枚のカードが入っていた。
(女神にもらったやつか?)
無地だったはずのカードには、大きく九十九神と書かれていた。
(九十九神って、魂持った道具の事だよな?)
具体的にどう役立つかさっぱり不明だった。
(そうだ!プレート。)
軽く念じてみたら、手元にプレートが出現した。
カードは手から消え、プレートに吸い込まれた。
これでここが異世界である事は間違いなさそうだ。
俺はプレートを見てみる。
名前:ガイ・アイオイ
性別:男性 年齢:19
種族:来訪者
天職:なし
加護:九十九神 技能:なし
能力:なし
(何もなしかよ。)
今の俺は無能だった。
「まっ、どうとでもなるだろ。」
意識を切り替えて目を前に向ける。
ここは異世界、何が起こっても不思議ではない。
(とにかく情報だな。人を探そう。)
そう思い、歩き出した。
行けども行けども草木ばかりで、森の外に向かっているのか奥に向かっているのか分からなくなってくる。
ガサッ
物音に振り返ると、ウサギが一羽。
ただのウサギではない。角が生えている。
ウサギは敵意むき出しで、こっちを見ている。
(一角ウサギがあらわれた っと。)
こっちもナイフを構え、迎え撃つ。
ウサギは力を溜めると、飛びかかってくる。
(速っ!)
思考と回避は同時だった。反射で避けてなければ、角の一撃を喰らい最悪死んでいた。
(ヤバッ 雑魚じゃねぇな。)
逃げの選択肢はなかった。
背を向けた瞬間、刺されて死ぬ。
判断じゃない、本能で分かった。
(だが、どうする?)
幸い、ウサギの動きは単調だ。俺に向かってまっすぐ突進するだけ。
動きを視ていれば、回避は出来る。
だが、攻撃の手段がない。
(短いナイフじゃ届かない。)
その思考の一瞬が隙となった。
ウサギが飛んでくる。
(避けきれ…、うわっ!)
無理な体勢になったからか、俺は地面に背中から倒れた。
(痛っ! あっ、ウサギ。)
痛みが大した事ないのに気付くのも早々に、ウサギの姿を探す。
ウサギは、俺の後ろに生えていた木に突き刺さっていた。
(た…助かった。)
生き残った事に安堵しながらも、強敵だったウサギに近づきナイフを降り下ろす。
異世界での初めての戦闘は、本気で死ぬ寸前だった。
俺は木にもたれ掛かり一息つく。
ピコン♪
突然耳元に軽快な音が鳴り、慌てて周りを警戒する。
しかし、周りは草木ばかりで動くものは何もない。
俺はふと脳裏に浮かんだイメージを、妙な確信と共に実行する。
(プレート)
呼び出したプレートには、変化があった。
[新しい能力を習得しました。]
能力:警戒C、回避C、幸運D
戦闘前には、何もなかった能力に3つも加わっていた。
(警戒、回避、幸運…か。)
先ほどの戦いを思い出しながら、習得した能力を見る。
警戒は、まず間違いなくウサギの動きを視ていたためだろう。
回避も同様に、突進を避け続けた結果だろう。
では幸運は?
無理な体勢で足元が不安定になり、ウサギを自滅に追い込んだからか?
(どうやら、経験が能力として昇華されるようだ。)
CやDはおそらくランク。使い込むほどランクが上がり、有利に動けるようになるのだろう。
(異世界をなめてたな。注意して動こう。)
確認と休息を終え、【警戒】しながらまた人探しを再開する。
能力一覧
天職:なし
加護:九十九神 技能:なし
能力:警戒C(new)、回避C(new)、幸運D(new)