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異世界を九十九と一人旅  作者: 書積 詠人
第2章 旅支度
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鬼ごっこ、からのかくれんぼ

「がんばれー、ガイ。」

「お貴族様なんて、お前の敵じゃねぇ。」

「ギルベルト様、其奴など蹴散らして下さいまし。」


町のほとんどの住人が集まっている。


(ユースにマス、笑いやがって。シャシャさん…は、いつも通りか。ガドさんはいないな、やっぱり。ナンさんにミイさん。ん?ナタクが呼んでる。)


こちらを手招きするナタク。


「すみません、サイア殿。知人が呼んでるので、少し良いですか?」

「早くしたまえ。」


礼を言って、ナタクのところへ。

そこでスフィアを十数個渡される。


「【鑑定】持ちだから、説明は要らないな。魔力は全部入れてある。ぼ……」


必要な事だけ聞き、スフィアはキャリーに。


「準備は良いかい?」

「えぇ。」


目の前に戻った俺に、ギルベルトは言う。


「では、始めよう。構えたまえ。」


ギルベルトは腰の剣を抜き、俺はキャリーから刀を出し、同様に抜く。


辺りは一転、静かになる。


「行くぞ。」


向かって来るギルベルトに対し、


「待て!逃げるのか!」


俺は反転、全速で離れた。


「おのれ!神聖なる決闘を愚弄するか!」

「そもそも、乗り気ではありませんし。」

「何を!」


逃げる俺。追うギルベルト。

始まったのは決闘ではなく、鬼ごっこだ。




「くっ、どこへ消えた。」

(貴方の真上です。)


舞台は森の中に変わり、鬼ごっこはかくれんぼに変わった。

探索系が使えないのか、使う余裕がないのか、ギルベルトは無闇に俺を探し回る。

俺はというと、森に入ってすぐ【気配遮断】し、木陰に隠れる。

その後は、【エンチャンター】の力を借り木の上に。

【平衡感覚】を駆使して落ちないように尾行中だ。


(鬼ごっこの鬼は交代しましたよ、サイア殿。)


焦りはない。【精神防御(マインドプロテクト)】は、精神安定にうってつけだ。


(キャリー、狙撃弓を。)

(あいよ。気張りな。)


武器は弓に変更。

森に入った時点で、(レンジャー)の優位。


(油断はしない。魔法騎士ならば、魔法が使えて当然。)


能力(スキル)以上になんでもありな魔法には、逆転の芽がある。






徐々に森は暗くなってくる。


(そういえば、夜戦の訓練してないな。)


生産の修行のために、いつも昼過ぎには町に戻っていた。


(しかし、伊達にA-ではないな。野営の心得は万全か。)


ギルベルトは手際良く焚き火を用意すると、近くに腰掛け周囲を警戒する。

そこに、油断も怒りも感じられない。


(とりあえず、【警戒】持ちだな。動く気配なし。これ以上体力は削れないか。)


おにぎり(手製)と、水筒代わりの流水スフィアで軽く渇きを満たす。

こちらも長期戦の構えだ。




完全に日は沈み、ギルベルトの焚き火だけが辺りを照らす。


「おい。見てるのだろう?出てこい。」


近くで監視しているのは、流石にバレている。


「ふん。それで出てきたら阿呆か。せっかく独壇場(フィールド)に誘い込んだんだ。」


「普通有効活用する。」と、冷静な分析。


(バカなボンじゃないっと。)


ギルベルトの評価を上方修正する。

すると、急にギルベルトは立ち上がり、剣を抜き、


ズドンッ!


あさっての方向の木を一刀で斬り倒した。


「は?」


予想外の行動に、思わず声が出る。


「こ…、こんなところで一人きりは、怖いんだよ!」


そう言うと、剣で魔法でやたらに攻撃を仕掛けてくる。


(冷静になったんじゃない。恐怖で大人しくなっただけか。)


疲労させる目的は達成出来る。

だが、


(余波を食らったら、こっちがアウトだ。)


誘い込みじゃない、本気で逃走した。

それだけ攻撃力がずば抜けていた。

能力(スキル)一覧


天職(ジョブ):レンジャー 技能(アビリティ):弓術B、警戒A、気配遮断A(up)、木工技師D、料理B、罠設置D、平衡感覚B(up)

加護(ギフト)九十九神(つくもがみ) 技能(アビリティ):人格投与S

能力(スキル):回避A、幸運C、刀術B、鑑定B、鍛冶師C、エンチャンターC、精神防御(マインドプロテクト)C、魔具作成A、仕立て師C、調薬B、応急措置C、薬物耐性B

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