児童期
新しい小学校での少年は、大人しいの一言に尽きた。
友達を作らず、静寂を好み、人との関わりを最低限に抑えていた。
教育熱心な教師などが輪に入るように勧めても、その場だけで続かなかった。
その一方で、手伝いを頻繁に行う様子に「真面目だが人見知り」と言う印象を与えた。
本人はただ、習慣になったイイ子を続けているだけだった。
高学年になると、子供の中でも派閥が出来てくる。
すると、派閥外の存在は風当たりが強くなる。
また、大人への反抗心が芽生えてくる年頃。
イイ子である少年が目をつけられるのは、時間の問題だった。
「生意気だぞ!」
まだ小学生。
それでも、個人差はあれ体が出来てくる頃。
偉ぶるのは、大抵体格が大きい奴だ。
今日も今日とて、校舎裏でガキ大将と取り巻きに囲まれる少年。
少年は何もしない、何も言わない。
それが一番早く済む事だと知っているからだ。
「うちの子が申し訳ありません。」
最も、常に無抵抗が正解とは限らない。
プライドを傷つけられたガキ大将は少年を殴った。
それに合わせて、取り巻き達も加わった。
幸い、深い怪我は無かったが、この件でガキ大将達はその親と教師に大いに叱られた。
少年の母親は来なかった。
その後、少年の日常に体を鍛える事が加わった。
運動出来る人は絡まれない。
絡まれなければ、平和になる。
だからだ。
努力は実り、小学校ではそれ以上トラブルに巻き込まれなかった。
だが、友人は一人も出来なかった。
中学校に上がった。
相変わらず、少年は一人だった。
「真面目で問題を起こさない生徒」と言う印象は教師受けが良く、立候補が無かったクラス委員を頼まれた。
これを中学三年間、間が空く事なく続ける事になる。




