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異世界を九十九と一人旅  作者: 書積 詠人
第2章 旅支度
18/302

天職と貴族の坊っちゃん

「よぉ、ガイ。今日はオレと組め。」

「え~、私達のとこ来てよ~。」

「マスなんかより、ワシが鍛えてやる。」


ここ最近この調子。


(面倒だ。)


いつからだったか、突然周りの反応が変わった。

あれは……、




ピコン♪


[天職(ジョブ)取得条件を満たしました。]

[新しい技能(アビリティ)を習得しました。]

[該当能力(スキル)技能(アビリティ)に変化しました。]

天職(ジョブ):レンジャー 技能(アビリティ):弓術B、警戒A、気配遮断B、木工技師D、料理B、罠設置D、平衡感覚D


(天職(ジョブ)…、レンジャーか。)


技能(アビリティ)を見る限り、山林活動を得意とする天職(ジョブ)のようだ。


「む。ガイ。ちょっと組合証を見せてくれ。」


言われて、マスに組合証を渡す。


(天職(ジョブ)の欄があったな。もしかして、載っているのか?)


結果は案の定、組合証にはっきりと俺はレンジャーだとあった。


「ガッハッハ。良い天職(ジョブ)引いたな。おめでとう。」

「そんなに珍しいものなのか?」

「いやいや、人数で言えばそう少ない訳じゃない。ただ、生き残る事に特化してるんだ、そいつは。」


冒険者にとって、命は何より勝る。

ダンジョンマニアも最大限の準備をして、潜るらしい。


「そこで、レンジャーだ。危機察知,食糧供給,戦闘力、これらをバランス良く行使できるのは、数多くの天職(ジョブ)の中でレンジャーぐらいだ。」


「ソロのレンジャーという意味では、希少かもな。」と、いつもの豪快な笑い方ではなく、いやらしい、含むような笑みを浮かべた。




(それがこれか。)


俺とマスは、パーティではない。新米と指導官だ。

それも俺の組合ランクがBになった事で、その必要性もなくなっている。


(ソロでの狩りも、練習したいんだがな…。)


町を出たら、俺は一人。

ソロ狩りの訓練も受けたが、実際に単独だった訳じゃない。



「そこをどきたまえ。」


気取った声に思考を中断する。

勧誘の壁をのけてやって来たのは、


「ボクの名前は、ギルベルト・ベルヒム・サイア。このパーティのリーダーだ。A-ランクで、ダンジョン生還経験もある。」


貴族の御曹司らしき男だ。

歳は、俺と同じか少し上か。


(人間のようだから、見立てにそう誤差は出ないだろう。)


パーティメンバーであろう、10人近くを引き連れている。


「君もボクのパーティに入りたまえ。」

「嫌です。」

「な…なんと言ったのかな?」

「「嫌です。」と言いました。サイア殿。」


拒否の意を繰り返し伝える。


「貴様!坊っちゃんの勧誘を断るなど。」

「この礼儀知らず。」

「サイア家は、ヴァーキナ王国序列9位の名家。」

「その三男にして、歴代屈指の使い手を前になんたる無礼。」


(この世界…、と言うより国か?貴族の権力は馬鹿に出来ないようだな。)


取り巻きの言葉を聞き流し、敵対せず、されとて服従せずの道に入れないか考える。


「ふっ…、ふふふ。そうか、分かったぞ。君はボクの実力を見くびっているな。そうだ。確かに格下の下にはつけないな。納得したよ。」

(あー、この流れ。あれだ。)

「決闘だ。」(決闘だ。)


説き伏せるのと、どっちが楽だろう。




「良いか。決定打を入れるか、相手を降参させた方が勝ちだ。」


こっちの意識を無視して勝手に進めるサイア殿……。

ギルベルトで良いか。


(何を言っても無駄と、町の外までついてきた時点で受けると言ったようなものか。)


物は試しと、ギルベルトを【鑑定】してみる。


ギルベルト・ベルヒム・サイア

・人間

天職(ジョブ):魔法騎士 技能(アビリティ):……

能力(スキル):……


【鑑定】Bだが、読み取れないところがある。


(上級の情報秘匿系能力(スキル)の効果と思われます。リーダー。)


リブラが言うなら、そうなのだろう。


「サービスでボクの天職(ジョブ)を教えてあげよう。ボクだけが君がレンジャーだと知っているのは、不公平だからね。」

(そこは読み取れたから、べつに良い。とは、言わない。)

能力(スキル)一覧


天職(ジョブ):レンジャー 技能(アビリティ):弓術B、警戒A、気配遮断B、木工技師D、料理B、罠設置D(new)、平衡感覚D(new)

加護(ギフト)九十九神(つくもがみ) 技能(アビリティ):人格投与S

能力(スキル):回避A、幸運C、刀術B、鑑定B、鍛冶師C、エンチャンターC、精神防御(マインドプロテクト)C、魔具作成A、仕立て師C、調薬B、応急措置C、薬物耐性B

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