天職と貴族の坊っちゃん
「よぉ、ガイ。今日はオレと組め。」
「え~、私達のとこ来てよ~。」
「マスなんかより、ワシが鍛えてやる。」
ここ最近この調子。
(面倒だ。)
いつからだったか、突然周りの反応が変わった。
あれは……、
ピコン♪
[天職取得条件を満たしました。]
[新しい技能を習得しました。]
[該当能力が技能に変化しました。]
天職:レンジャー 技能:弓術B、警戒A、気配遮断B、木工技師D、料理B、罠設置D、平衡感覚D
(天職…、レンジャーか。)
技能を見る限り、山林活動を得意とする天職のようだ。
「む。ガイ。ちょっと組合証を見せてくれ。」
言われて、マスに組合証を渡す。
(天職の欄があったな。もしかして、載っているのか?)
結果は案の定、組合証にはっきりと俺はレンジャーだとあった。
「ガッハッハ。良い天職引いたな。おめでとう。」
「そんなに珍しいものなのか?」
「いやいや、人数で言えばそう少ない訳じゃない。ただ、生き残る事に特化してるんだ、そいつは。」
冒険者にとって、命は何より勝る。
ダンジョンマニアも最大限の準備をして、潜るらしい。
「そこで、レンジャーだ。危機察知,食糧供給,戦闘力、これらをバランス良く行使できるのは、数多くの天職の中でレンジャーぐらいだ。」
「ソロのレンジャーという意味では、希少かもな。」と、いつもの豪快な笑い方ではなく、いやらしい、含むような笑みを浮かべた。
(それがこれか。)
俺とマスは、パーティではない。新米と指導官だ。
それも俺の組合ランクがBになった事で、その必要性もなくなっている。
(ソロでの狩りも、練習したいんだがな…。)
町を出たら、俺は一人。
ソロ狩りの訓練も受けたが、実際に単独だった訳じゃない。
「そこをどきたまえ。」
気取った声に思考を中断する。
勧誘の壁をのけてやって来たのは、
「ボクの名前は、ギルベルト・ベルヒム・サイア。このパーティのリーダーだ。A-ランクで、ダンジョン生還経験もある。」
貴族の御曹司らしき男だ。
歳は、俺と同じか少し上か。
(人間のようだから、見立てにそう誤差は出ないだろう。)
パーティメンバーであろう、10人近くを引き連れている。
「君もボクのパーティに入りたまえ。」
「嫌です。」
「な…なんと言ったのかな?」
「「嫌です。」と言いました。サイア殿。」
拒否の意を繰り返し伝える。
「貴様!坊っちゃんの勧誘を断るなど。」
「この礼儀知らず。」
「サイア家は、ヴァーキナ王国序列9位の名家。」
「その三男にして、歴代屈指の使い手を前になんたる無礼。」
(この世界…、と言うより国か?貴族の権力は馬鹿に出来ないようだな。)
取り巻きの言葉を聞き流し、敵対せず、されとて服従せずの道に入れないか考える。
「ふっ…、ふふふ。そうか、分かったぞ。君はボクの実力を見くびっているな。そうだ。確かに格下の下にはつけないな。納得したよ。」
(あー、この流れ。あれだ。)
「決闘だ。」(決闘だ。)
説き伏せるのと、どっちが楽だろう。
「良いか。決定打を入れるか、相手を降参させた方が勝ちだ。」
こっちの意識を無視して勝手に進めるサイア殿……。
ギルベルトで良いか。
(何を言っても無駄と、町の外までついてきた時点で受けると言ったようなものか。)
物は試しと、ギルベルトを【鑑定】してみる。
ギルベルト・ベルヒム・サイア
・人間
天職:魔法騎士 技能:……
能力:……
【鑑定】Bだが、読み取れないところがある。
(上級の情報秘匿系能力の効果と思われます。リーダー。)
リブラが言うなら、そうなのだろう。
「サービスでボクの天職を教えてあげよう。ボクだけが君がレンジャーだと知っているのは、不公平だからね。」
(そこは読み取れたから、べつに良い。とは、言わない。)
能力一覧
天職:レンジャー 技能:弓術B、警戒A、気配遮断B、木工技師D、料理B、罠設置D(new)、平衡感覚D(new)
加護:九十九神 技能:人格投与S
能力:回避A、幸運C、刀術B、鑑定B、鍛冶師C、エンチャンターC、精神防御C、魔具作成A、仕立て師C、調薬B、応急措置C、薬物耐性B




