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異世界を九十九と一人旅  作者: 書積 詠人
第8章 社会活動
169/302

聖女の理想と商人の現実

場所は変わって応接室。

パーフェクトメイドのビカが出すお茶に口をつけ、


「ご存知とは思いますが、俺はガイ・アイオイ。冒険者兼商人と言ったところでしょうか。」


自己紹介を皮切りに話を始める。


「この度は、どのようなご用件で?」

「単刀直入に言おう。我らに協力しろ、来訪者(トラベラー)のガイ。これは女神のご意志だ。」


シンプル極まりない誘い文句だった。


「先程から思っていましたが、貴方は何者ですか?」

「これは失礼した。私はクリシャナ教司教、洗礼名マイト。メアリー様の護衛である。」

「ガイさん。世界の平和のため、力を貸して頂けませんか?」


聖女メアリーの発言に、俺は言葉を失う。


「世界平和とは……大きく出ましたな。失礼ですが、そちらの言う世界の定義と平和への手段を聞かせて頂きたい。」

「世界は世界ですよ?この天地全て。そして、全ての人類が平和を願えば、世界は平和になります。」


聖女は堂々と言ってのけた。

それに思わず【看破】してしまう俺。


「精神干渉系の魔法反応無し。本気なんですか。」

「貴様!聖女様の気を疑うなど、無礼にも程があるぞ!」


マイトが敵意を帯びた魔力をみなぎらせながら立ち上がる。

俺はそれに【覇気】で応える。


「座って貰いましょうか。喧嘩しに来た訳じゃないのでしょう?」


マイトは忌々しげに舌打ちし、腰をおろす。

俺も【覇気】を収める。

屋内で暴れるのは、本意ではない。


「ズバリ言いましょう。神の御業(みわざ)が仮に有ったとしても、全世界の完全意識統一など不可能。貴女の理想は夢想に過ぎません。」

「そんな事ありません!なぜなら皆、幸せを望んでいるから!」

「それぞれ自分好みの幸せを……ね。」


簡単な話、たった一つのパンを取り合うだけで不幸せが生じる。

均等に分けたとしても、一つを望んだ以上、欠片だけでは不満が残る。


「分かりますか?万人に共通する幸せなどないんですよ。それを無理矢理させようとする行為は、洗脳です。」


俺の断言に、聖女は恐慌、マイトは憤怒。

要は、拒絶の意識を示した。


「ガイさんの……技術力があれば、皆の願望を……」

「充たせる訳ない。不老不死を望まれては、敵わない。」

「だからと言って、技術の独占をするのか!」

「欲しければ、差し上げますよ。勉強次第ですが。」


最新版の技術書を二冊、二人の前に差し出す。

話の平行線は、この時決定した。

最も、話に乗る気など最初から無かったが。

能力(スキル)一覧


天職(ジョブ):豪商 技能(アビリティ):看破B、 交渉術C、 黄金率B、 量産B、 計算D

加護(ギフト)九十九神(つくもがみ) 技能(アビリティ):人格投与S、擬人化S、具象化S

能力(スキル):縮地D、幸運A、武士A、射手A、覇気D、隠密D、木工技師B、料理A、罠設置B、悪路歩方C、鍛冶師C、エンチャンターS(max)、精神防御(マインドプロテクト)B、魔具師C、仕立て師C、薬師D、応急措置B、薬物耐性A、千里眼D、漁師D、解体B

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