聖女の理想と商人の現実
場所は変わって応接室。
パーフェクトメイドのビカが出すお茶に口をつけ、
「ご存知とは思いますが、俺はガイ・アイオイ。冒険者兼商人と言ったところでしょうか。」
自己紹介を皮切りに話を始める。
「この度は、どのようなご用件で?」
「単刀直入に言おう。我らに協力しろ、来訪者のガイ。これは女神のご意志だ。」
シンプル極まりない誘い文句だった。
「先程から思っていましたが、貴方は何者ですか?」
「これは失礼した。私はクリシャナ教司教、洗礼名マイト。メアリー様の護衛である。」
「ガイさん。世界の平和のため、力を貸して頂けませんか?」
聖女メアリーの発言に、俺は言葉を失う。
「世界平和とは……大きく出ましたな。失礼ですが、そちらの言う世界の定義と平和への手段を聞かせて頂きたい。」
「世界は世界ですよ?この天地全て。そして、全ての人類が平和を願えば、世界は平和になります。」
聖女は堂々と言ってのけた。
それに思わず【看破】してしまう俺。
「精神干渉系の魔法反応無し。本気なんですか。」
「貴様!聖女様の気を疑うなど、無礼にも程があるぞ!」
マイトが敵意を帯びた魔力をみなぎらせながら立ち上がる。
俺はそれに【覇気】で応える。
「座って貰いましょうか。喧嘩しに来た訳じゃないのでしょう?」
マイトは忌々しげに舌打ちし、腰をおろす。
俺も【覇気】を収める。
屋内で暴れるのは、本意ではない。
「ズバリ言いましょう。神の御業が仮に有ったとしても、全世界の完全意識統一など不可能。貴女の理想は夢想に過ぎません。」
「そんな事ありません!なぜなら皆、幸せを望んでいるから!」
「それぞれ自分好みの幸せを……ね。」
簡単な話、たった一つのパンを取り合うだけで不幸せが生じる。
均等に分けたとしても、一つを望んだ以上、欠片だけでは不満が残る。
「分かりますか?万人に共通する幸せなどないんですよ。それを無理矢理させようとする行為は、洗脳です。」
俺の断言に、聖女は恐慌、マイトは憤怒。
要は、拒絶の意識を示した。
「ガイさんの……技術力があれば、皆の願望を……」
「充たせる訳ない。不老不死を望まれては、敵わない。」
「だからと言って、技術の独占をするのか!」
「欲しければ、差し上げますよ。勉強次第ですが。」
最新版の技術書を二冊、二人の前に差し出す。
話の平行線は、この時決定した。
最も、話に乗る気など最初から無かったが。
能力一覧
天職:豪商 技能:看破B、 交渉術C、 黄金率B、 量産B、 計算D
加護:九十九神 技能:人格投与S、擬人化S、具象化S
能力:縮地D、幸運A、武士A、射手A、覇気D、隠密D、木工技師B、料理A、罠設置B、悪路歩方C、鍛冶師C、エンチャンターS(max)、精神防御B、魔具師C、仕立て師C、薬師D、応急措置B、薬物耐性A、千里眼D、漁師D、解体B




