九十九神の目覚め
ナタクを送り出して戻ると、ユースが武器に話しかけながら、手入れをしている。
「何してる?」
「何って、手入れだが?」
「それは見れば分かる。なぜ話しかけるのかが、気になってね。」
納得した様子のユース。
手を止めずに理由を話す。
「命預ける武器だからな。こう、声をかけると応えてくれる気がするんだ。言葉じゃなく、結果でな。まぁ、気分だな。後あれだな、験担ぎ。」
「なるほど」と答えて、部屋へ行く。
日課の忘備録をつけるためだ。
「しかし、増えたな。」
これまでつけてきた忘備録の量に、後々の苦労を感じ、少し挫けそうになる。
(まとめ……いや、むしろ製本するか。)
ちょうど、【服飾】訓練で作った皮を貰ってあった。
(技術方面と知識方面で大別。それにしても、多いな。2冊に別けるか。)
その後、【鍛治】、【服飾】、【料理】…
もしくは、地理、国家、魔物…
と、種類で整頓、並び替える。
皮で挟み、紐綴じにする。
(後は、エンチャントか。何が良いか。)
考えた結果、
自動記録、整頓、自在検索、腐蝕防止、防水性、燃焼防止、耐圧性
をエンチャントした。
データベース的な役割と保存性の向上を狙った。
(結構簡単に成功するな。【幸運】の補正もあるのだろうか。)
大量にエンチャントしたからか、【エンチャンター】がCに上がった。
そして、忘備録は、百科辞典と技術書の2冊に生まれ変わった。
(「銘をつけろ」…か。あれは刀の事だったけど。)
気まぐれに“名付け”てみようと思った。
(百科…知識、図書館。リブラだ。)
百科辞典をリブラと決めた。
(技術書…学習、ラーニング。ラニにすっか。)
そして、技術書を今後ラニと呼ぶ事にした。
(気分。験担ぎか。俺も乗ってみるか。)
ーーーほんの気まぐれだった。
「これからよろしく。リブラ、ラニ。」
ーーーしかし、これが必然だった。
「よろしく。リーダー。」
「よろしくしてあげるわ。マスター。」
ピコン♪
[加護に新しい技能が加わりました。]
技能:人格投与S
ついに判明した俺の加護、九十九神の真価。
それは、
「これだけじゃ足りない。僕はもっと知りたい。リーダー、書庫に行く機会があったら早めに頼みます。」
「学が浅いんじゃない?べっ、別にマスターの心配なんてしてないんだからね。私が充実したいだけなんだからね。」
物体への人格投与。
恐らく条件は、“名付け”と“対話”。
そして思う。
(この力は、生産活動と相性が良い。)
問題は、性格を設定出来ない点か。
この辺は慣れるしかなさそうだった。
(リーダー、リーダー。思考会話に成功しました。)
(必要なら助言してあげるわ。感謝しなさい。マスター。)
知識欲が強い百科辞典とツンデレ(?)な技術書。
自己主張が激しいこいつらの声を聞きながら、今日は眠りに落ちた。
能力一覧
天職:なし
加護:九十九神 技能:人格投与S(new)
能力:警戒B、回避C、幸運C、刀術D、鑑定C、料理C、鍛冶師D、エンチャンターC(up)、精神防御D、木工D、弓術D、魔具作成D、服飾A




