服飾修行とスフィア
「あらあら。皮の加工を習いに?私が先生?いやだわ、こんなお婆さんに。」
などと言う女子高生が目の前に。
(この表現も食傷気味か。)
つまり、いつものシャシャさんだった。
「基本だけでいいんです。お願いします。」
おっとり系老婆(?)には、真摯に頼むのが正しい。
……はず。
「分かったわ。ただし、基本だけじゃなく、みっちり教えますのでそのつもりで。」
要望は無事通った。
しかし、
(この人も職人か。)
似た者夫婦だ。
皮のなめし、綿のつむぎ、etc.
刺繍、ボタン付け、etc.
寸法、裁断、etc.
ガドさんの方針が放任ならば、シャシャさんの方針はスパルタだった。
しかも、「あらあら。まあまあ。」と微笑みを浮かべながら。
来訪者補正で失敗しないのが幸か不幸か、課題も基準も加速度的に増していく。
「あらあら。もうこんな時間。お夕飯の支度しなくちゃ。今日はここまでね。また明日もいらっしゃい。」
解放されたのは、18時を廻った頃だった。
ピコン♪ピコン♪鳴っていたが、確認する余裕もなかった。
(プレート)
【服飾】がAになっていた。
(補正があったとして、上がりすぎだろ。)
などと思いながらユースの家までの道を行く。
「只今戻りました。」
「戻ったか、ガイ。これすごいぞ!応用の幅が計り知れない。出力の問題や容量限界など解決すべき事柄はある。だが、これは革命だ。魔力を物体に貯めておくと言う発想がなかった。何より適正なき者、魔力乏しき者でも使えるのが最大の利点だ。加えて、魔力が切れても再び補充出来る。これは何と言う?もしかして名前がないのか?だったら付けてくれ!今すぐ!さぁ!」
扉をくぐるとナタクが詰め寄ってきた。
一瞬、家を間違えたかと思ったがそうではない。
「落ち着いてくれ。ナタク。」
【精神防御】は便利だ。
どんな時でも平静を保てる。
「いや、だが、しかし。」
「いい加減、ガイを通してくれないか?玄関でする話じゃないだろ。」
食い下がるナタクをユースの正論(と物理)が止める。
リビングには、ユースとナンさん、俺、そしてナタクがそれぞれ座っている。
テーブルの上には、今日もナンさん手製の料理。
ナタクはユースに連れ込まれてから、すっかり大人しくなった。
(強引さは、ユースが上手っと。)
当のユースはナンさんと楽しそうに食事中。
「あのガラス玉だが、“スフィア”でどうだ?」
「スフィア…スフィアか。」
どうやら気に入ったようだ。
ぶつぶつと改良や応用について、自問自答している。
「仕事の話も良いですが、冷める前に食べて下さい。」
慌ててフォークを取るナタク。
こうして、食事は再開した。
能力一覧
天職:なし
加護:九十九神 技能:なし
能力:警戒B、回避C、幸運C、刀術D、鑑定B、料理C、鍛冶師D、エンチャンターD、精神防御D、木工D、弓術D、魔具作成D、服飾A(new)




