異世界へ
ふと気付くと周囲は真っ白、目の前に扉がぽつんとあるだけだ。
(ここは、夢の中か?)
俺は大学の講義を済ませ、一人暮らししているアパートに帰ると飯と風呂、課題を適当に終わらせ、さっさと寝たはずだった。
「どうぞ、お入り下さい。」
突然、扉の向こうから声をかけられた。
ここには俺一人しかいないため、俺に向けられたものに違いないだろう。
(ここにいても仕方ないか。)
そう思い、ノブに手をかけ、扉を開けた。
中は机を挟んで椅子が一脚ずつ向かい合わせで置いてあり、奥になっている椅子には声をかけたらしき女性が座っていた。
「どうぞ、お掛けください。」
女性はそう言い、俺に近い方の椅子を示した。
「失礼します。」
俺はそう言うと、椅子に座る。
着席を確認した女性は、
「私は、異世界で創造神をしているものです。
この度は、お願いがあってお呼びしました。」
と、言った。
「そのお願いとは?」
俺がその女性…女神にこう返すと、女神は少し驚いた表情をする。
「どうしました?」
「あっ、いえ。疑ったり喜んだりしない、冷静な反応だったので、少し……。」
まぁ、異世界ものは最近の流行りみたいだし。
それに、異世界に行けると言われて喜ぶほど、子供でも厨二でもないだけだ。
「とりあえず、自己紹介をお願いします。」
落ち着きを取り戻した女神はそう言った。
「相生 概。19歳、男性。
職業は、大学生。好きなものは、本。
最近の好みは、ファンタジー系。」
俺は、簡潔に答える。
「はい。では、こちらの事情について説明します。」
女神が言うにはこうだ。
1.創った世界の文明が最近停滞している
2.神の制約で創造物と言えど干渉は制限される
3.異世界の因子を組み込めば大きな影響が起こる
4.異世界を望む若者を招いて、活性化に協力してもらおう
5.引き受けてもらう代わりに、色々と助けになるものを授けよう
「どうですか?お願いできませんか?」
(別に損は無さそうだな。)
俺は、首を縦に振った。
「本当ですか?ありがとうございます。」
女神は心の底から嬉しそうに言った。
「では、こちらをどうぞ。」
すると、机の上に半透明の板が現れた。
「これは?」
「それはプレートと言い、身に付けた能力や地図を表示する事が出来ます。」
俺の質問に、女神はそう答えた。
俺はプレートを持とうと手を伸ばすと、プレートはゆっくりと目の前に浮いてきた。
[名前を入力して下さい。]
プレートにはこの文とキーボード、
そしてfirstとfamilyとそれぞれ頭についた空欄が2つ浮かび上がっていた。
俺は入力しようとして、ふとある疑問が浮かんだ。
「これって、偽名を入力出来ますか?」
「えぇ。ユーザー登録みたいなものですので。ただ…。」
女神が言うには、異世界ではこの名前を使って欲しいそうだ。
(本名でいっか。ガイ… アイオイ… っと。
[ミドルネームを入力しますか?] 要らないな。)
Noをタッチした俺に、女神は無地のカードを手渡ししてきた。
受け取った瞬間、周りが輝き始めた。
「そのカードは、貴方に授けた加護です。異世界に着いたら見て下さい。プレートは、現地人には見えません。念じただけで出したり消したり出来ます。また、長旅に堪えられるよう体力を調整し、通訳・翻訳も自動でされるようにしました。」
矢継ぎ早に最後の説明をする女神。
その間にも、目の前は光で覆われていく。
「それでは、よろしくお願いいたしますね。」
それを最後に何も見えなくなった。
数多くの要望により、統合しました。
ご迷惑をおかけします。