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夕顔美人  作者:
4/4

体験入店

笑えた。


時間はお昼の12時15分。


こんなにあっさりと風俗デビューしてしまった自分が笑えた。


しばらくして他の女の子達が出勤してきた。

正直、体を売る奴なんかブスだろうと思っていた。


私にはかなりの衝撃だった。


なぜこんなに可愛い子や美人でスタイル抜群の人達が体を売って生活しているの!?


本当にビックリするぐらいの面々だった。


昔、先輩に連れられて年を偽ってキャバクラに体験入店したことがあった。

そこは性格の悪い厚化粧のブスどもがひしめき合った世界だったが、そんなもんだろうと覚悟していた私にはさらなる衝撃だった。


バックヤードには可愛い上に気さくで性格も皆明るい女の子達が笑いあう、まるで部活の部室のようだった。


ひとりの女の子が話しかけてきた。

「私、モカっていうの!宜しく」


私はその明るさが眩しくてたじろいだ。


まるで部活に入部するがごとく皆に聞こえるように

「ユウナです、宜しくお願いします!」

と言って笑ってみた。


モカさんは私を「かわいい!」ってほめちぎった。

そーやってはしゃぐモカさんを、私も可愛らしい人だと思った。


13時…

皆でワイワイ喋っているとアナウンスが流れた…


「5番テーブルユウナさんご指名のお客様入りました」


私は初仕事に向かおうと皆との談笑から席を立った。


皆心配そうに私を見つめて頑張って!と言って送り出してくれた。


各部屋には扉が無く、透けたカーテンが引かれていて廊下からは目を凝らすと中の様子が伺えるぐらいの状況で、部屋にはサイドテーブルに電気スタンド、緊急呼び出しボタン、時計、ティッシュ、ゴミ箱、小さいテレビには四六時中AVが流されていた。


床に敷かれたマットの上で客が私を待っている。


どんな顔をして初めて会う男の前で服を脱げばいいのか想像もできないままカーテンの前に立っていた。


「失礼します。」

頭を下げながらカーテンを開ける。


男はジーッと私の顔を見つめ、それから体を舐めまわすように見た。


「こんにちは、ユウナです。」


男はボソッと「宜しく」と言って上着を脱いだ。


隣にかしこまって座る私をマットに押し倒す。

男は30代後半だろう、幸いにも私の好みの範囲だ。

ふと店長に言われた言葉を思い出す。

「彼氏だと思って接すること!」


私は男の手順に従い、深く確かめ合う様にキスをして、服を脱がされ、あらわになった体を捧げた。


男の欲求が高まる部分には念入りにアルコール消毒を施してから口に入れた。


それがこの店のルールだ。

おしぼりでアルコール消毒される事に抵抗がないのを見て、私は常連なのだろうと思った。


愛撫され、男が我慢できなくなると果てた。

その間30分。


だいたいの客が口に出す為、果てた後は男の抜け殻をきれいにしてあげてから自分はバックヤードに戻って口を濯ぎ歯を磨いて部屋に戻る。

それが決められた一連の流れになっていた。


初仕事で抜けるのか店長は心配していたらしく、歯磨きをしている私の後ろに近づいて

「上出来!」

と誉めた。


一回45分コースが基本的。


初めて私についたその男は最後に

「俺、また来るよ。」

「名前、ユウナちゃんだよね?漢字ないの?」

そう聞かれて多少戸惑った。

また来ると言われても、まだ体験入店だしなぁ…


そう思いつつも自分のユウナという名には感じが無いことを伝えると

メモ用紙に『優奈』と書いて渡してきた。


「良かったらこの漢字でユウナって名前にしてょ」

そう言ってスッキリした顔をして店を出て行った。


浜武というボーイさんが「ありがとうございました!また宜しくお願いします!」と深々と頭を下げていた。


戻ってきたボーイさんに「私の名前、これにしてくださぃ。」と申し出た。


今思うとその時に私は体験入店ではなく、本格的に入店していたんだと思う。


ボーイさんは「俺の事は皆、浜ちゃんって呼んでるからユウナさんも浜ちゃんって呼んでね」と笑いながら写真の下に書かれた名前をユウナから優奈に変えてくれた。


その日は17時まで働いた。


初日から4人の相手をして24000円受け取って電車に乗った。

体のアチコチが筋肉痛でだるかったけれど、何よりも早く帰宅して風呂に入りたかった。


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