面接
「はい!夕顔美人です!」
と電話に出た男は声の感じから明るいイメージで若そうな感じだった。
私はその男の次から次へと出してくる質問に一つ一つ答えた。
内容は確か…
「身長は?」とか「体重は?」とか「髪型は?」とか年齢とか容姿に関わる事が多かった気がする。
ただ、その質問のどの部分にも嫌な印象はなく…
その男は
「まだ会ったことないけど、俺分かるんだ!絶対に稼がせてあげる!」と興奮気味だった。
私は翌日電車で1時間かけて店に面接に行った。
その店はカラオケ店の入った雑居ビルの2階にあった。
1階は100円ショップが入っている…
店の前まできてから一つの疑問が頭を駆け抜けていった。
果たして私が今から行こうとしている店の業務内容はなんなのか…
この真っ昼間から高収入な仕事ってなんだ?
子供連れや若者が普通に出入りするこのビルの2階には何があるのだろう…
不安だったけど面接で無理そうなら謝って帰えればいい。
それよりこの先に何があるのか知りたくてたまらなくなっていた。
予定通りビルの前で電話をかける。
昨日の男が元気よく私の名前を呼んだ…
「◯◯さん?来てくれたんだね!今店長が下に行くからソコでまっててね」
ん?そこ?
その男は多分、どこかの窓から電話をかける私を見ていたに違いない。
程なくして一人の男が私の前に現れた。
その男は、電話の男が言っていた「店長」って人だとすぐに分かった。
若作りに見えるが40歳代だろう…
ちょいワルなスーツを着ているが、怖い人っていう印象はない。
オシャレな感じで清潔感漂う気さくな男だった。
「◯◯さん?はじめまして松尾です!」
「ここじゃアレなんでお店へどうぞ」
私は促されたままその男の後ろをついていった。
時間は午前11時。
店の中に入るともう一人若い男の人が立っていた。
割りとイケメン、身長も高くスラっとしていてスーツがよく似あっている。
でも、ツンツンと立てた金髪が昼のイメージをひっくり返していた。
私の事を満面の笑みで見ている。
電話の人だ…
「はじめまして浜武です。」
その男の自己紹介を会釈で交わして店長さんの後を追いかけた…
店内は暗い…
ブラックライトに浮かび上がる壁の星や絵…
廊下に充満するクーラーのカビ臭さが踏みしめめる絨毯の清潔感を奪っていた。
突き当りの部屋に案内されたが、なんとなく異様な雰囲気。
床に敷かれたマットの上に座らされた…
なんか暗すぎる漫画喫茶みたいだなって思うと、店長が小さいサイドテーブルに置かれた電気スタンドの明かりをマックスにひねった。
さっきりよはお互いの顔もよく見える。
店長は気さくに話しかける感じで面接を進めてきた。
「こーゆー仕事は初めて?」
私は訳も分からないのになぜか「はい。」と答えていた。
「男性経験はある?」
そう聞かれて僅かに状況が見えてきた。
「えぇ、まぁ」
ぼんやり答えながら話の流れにのってみた。
「じゃーここでどんな事をするのかは良く分かってないよね?」
うなずく私にすかさず
「そんな大変な事じゃないし、比較的簡単に仕事できると思うよ!なんせこんなに可愛いんだし!」
と続けた…
仕事内容や接客の流れの説明を一通り受けた後、私は意外と普通だった。
フリーや指名できた客の相手をして、本番なしでいかせればいいってだけ。
私は16から17歳の間、携帯代に困って何度か援助交際をしていた事がある。
そのたびに本番をゴム無しで迫られ、仕方なく了承していた。
それに比べたら、なんと安全な!
それに仕事として割り切ればいいんだし!
意外といける気がしていた。
店長は全ての説明が終わった後
「どう?できそうかなぁ?」
「良かったら、早速今日から体験入店してみなぃ?その分はちゃんと日払いで給料出るし!どぅかなぁ?」
「ダメそうな感じだったら辞めていいんだし」
と言って私のOKサインを待っていた。
私はその、いつでも辞められるっていうフレーズに甘えてみた。
「宜しくお願いします。」
店長がニコニコしながら
「こちらこそ!じゃー早速写真を撮ろう!」
とポラロイドカメラをカバンから出した。