救出
「やぁ、あんたがラプンツェルか?」
ミロスラフがラプンツェルに問いかける。
「いかにも、私がラプンツェルよ」
冷ややかながら、どこかクールな声で答えた。
「あの、黄色い勇気の指輪のことはご存知ですよね?」
赤ずきんが問いかけると、ラプンツェルは笑った。
「あなたたち、勇気の指輪を取りにきたのね、
そんな人たちは久しぶりだわ」
「勇気の指輪はあんたが持っているんだな、
どうすればオレにくれるんだ?」
「そうね……
私を自由にしてくれればいいわ」
「自由になりたいだって、
じゃあオレについてこいよ」
ミロスラフは問いかけた。
「それは難しいわね」
「何でですか?」
赤ずきんが問いかける。
「私はここに魔女のせいで閉じ込められたの、
外には私を監視する魔女の手下達が
たくさんいるのよ、
あなた、行きの途中にお土産屋のおばあさんに会わなかった?」
「はい、いました」
「彼女も魔女の手下よ、
あの人形も私の許可なく作っているの」
「ライセンス生産とかじゃないんですか?」
「それに、この館に武器は持ち込むことはできないのよ
センサーが張り巡らされていてね、持ち込めば
警備ルームに繋がるの」
「じゃ、じゃあもし変な奴が来たらどうするんだ?」
ラプンツェルはスカートをたくし上げた。
スカートからは様々な文具が落ちてきた。
「これで戦うのよ」
「おいおい、戦争でもする気か?」
それからしばらくミロスラフは考えていた。
どのようにしてラプンツェルを救うか?
しかし考えても出でこない。
空を見上げてみると、城の近くを一台の
ヘリコプターが飛んでいた。
「なぁ赤ずきん、ここの近くには農場があるのか?
あのヘリコプターは農薬を散布するためのものだと
思うんだが……」
「あぁ、このあたりはブドウ畑で有名なのよ、
一日三時と十一時に農薬を撒くの」
「そうか……」
ミロスラフは何かをひらめいたようだ。
「よし、今夜十一時に迎えに来る、
いいか、二人ともそれまで寝るなよ」
「随分大口を叩くじゃない」
ラプンツェルは冷ややかに答えた。
「誰か、ロープを持っていないか?
降りれないだろ、これじゃ」
「あんなので大丈夫かしら?」
近くにあったロープをラプンツェルは
ミロスラフに投げつけた。
「じゃあな、また会おうぜ
お嬢さんたち」
ロープを伝いながらミロスラフは降りていく。
「うわぁぁ」
ミロスラフの絶叫がこだました。
赤ずきんが下を見ると、
ミロスラフは池に落ちてもがいていた。
「大丈夫ですかね?」
夜十一時、ミロスラフはブドウ農家の家を訪ねた。
「そろそろ農薬を撒く時間ですよね、
ひとつ頼みがあるんですが……」
ブドウ畑の老人に尋ねると、二つ返事で許可をしてくれた。
ラプンツェルと赤ずきんは、部屋でテレビを見ていた。
すると、ヘリコプターのエンジン音が聞こえてきた。
「随分うるさいわね、いつもはこんなに
うるさくないんだけど、
ちょっと見て来てくれない?」
赤ずきんが外を見ると、
ヘリコプターに垂れ幕がぶら下がっていた。
「これに飛び乗れ」と
書かれた垂れ幕の下には、大きな
かごがぶら下がっていた。
ヘリコプターは空中停止をして、
ラプンツェルたちがかごに乗りやすいようにした。
ラプンツェルと赤ずきんは
かごに飛び乗った。
二人がかごに乗ったのを確認すると、
ヘリコプターは畑へ飛んでいった。
ブドウ農家へヘリコプターが戻ると、
ミロスラフは札束を老人に手渡した。
「このことは内密に……」
ミロスラフたちは道路を歩いていた。
「これからどこへ行くの?」
「ホテル・ラプンツェルへ行くんだ、
ほとぼりが冷めるまでそこに隠れよう」
「あの、車はどうしたんです?」
赤ずきんがミロスラフに問いかける。
「売っちまった」
「ええっ! 何でですか?」
「売ったほうが金になるんだ、
あのかごを買うのとじいさんを味方につけるのには
金が要るんだった、
さらに金にも余裕が出来たしな」
街中へ入ると、ラプンツェルが話しかけた。
「ちょっと、時間いいかしら?」
「どうしたんですか?」
ラプンツェルは床屋へと入っていった。
数分後、髪が方まで伸びた美しい女が出てきた。
「おまたせ」
「あんた誰だい?」
「ラプンツェルよ」
「えっ、髪を切っちゃったんですか?」
「あんな長い髪じゃあ
正体がばれるもの」
「あ、そうですよね……」