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長い髪

ミロスラフが目を覚ますと、時計は八時を指していた。

ソファには赤ずきんがいて、テレビを見ていた。

「おはようございます、ミロスラフさん」

「何だ、もう起きていたのか?」

「えぇ、二時間も前にね」

「随分朝が早いんだな

もう身支度は済んだのか?」

「えぇ、歯磨きも着替えもシャワーもメイクも

もう終わりました、

後は朝ごはんを食べるだけです」


ミロスラフはシャワーを浴びて、歯を磨いた。

昨日の夜、ホテルの売店で買った着替えのパンツと

ダンガリーシャツを着て、ジーンズを履いた。

「あら、替えのパンツは用意していたんですか?」

「昨日買ったんだ」

「そういうところはしっかりしているんですね」


朝食はホテルのバイキングだった。

ホテルをチェックアウトすると、駐車場に停められている

ルノーに乗り込んだ。

「ふぅ、食いすぎたな」

ミロスラフが呟く。

「今日はハードな一日になるんですよ

食事はたっぷり取った方がいいんです」


ラプンツェルの館に着いた。

門はすでに開けられており、その横には

「ようこそ」という看板が立てられていた。


門を入り少し進むと、

アイスクリームやハンバーガーの

移動販売車が並んでいた。

「そこのお兄さん、ハンバーガー食わないか?」

ハンバーガー屋の親父が話しかける。

「おじさん、ここは観光地だったりするのか?」

「いいや、そういうわけじゃないんだけどさ、

この先にあるラプンツェルの館からラプンツェルを連れ出せば

どんな願いも叶うそうだよ、

だからたくさんの奴がラプンツェルを連れ出そうとするんだ」

「それで、成功した奴はいるのか?」

「いいや、そういう奴は知らないな」

「そうか、ありがとよ」

立ち去ろうとすると、赤ずきんがミロスラフに話しかけた。

「礼には礼で返すものですよ」


両手にたくさんのハンバーガーを抱えながら

ミロスラフと赤ずきんは歩いていく。

「随分食べるな、もう五個目だぞ」

赤ずきんは美味しそうにハンバーガーを頬張る。

脇道にはお土産の屋台が並んでいた。

「幸せになれるラプンツェル人形はいかがかね?」

お土産屋のおばあさんが話しかける。

「どんな人形なんだ?」

「この人形はだんだん髪が伸びていくんじゃよ、

そしてそれが1メートル以上に達すれば

お前さんは幸せになれる」

「いや怖いって、そんなのいらないよ」

ミロスラフ達はさっさと立ち去った。


すると、ミロスラフの前に一軒の建物があった。

灯台のように高いその建物には

入り口らしきものは何もなかった。

「ここがラプンツェルの館ですよ」

館の裏側に回ってみると、長い金色の髪の毛がぶら下がっていた。

「おい、まさかこれって……」

「これを登るんですよ」

「これしか手段はないのか?

エレベーターとかあるんじゃないのか?」

「ありませんよ」

「おい冗談だろ?」

「何故冗談を言うんですか?」


意を決してミロスラフと赤ずきんは

その髪の毛を登っていった。

高いところが苦手なミロスラフは怯えきっていた。

それでも二人は登りきることができた。


ミロスラフが窓から館へ入ると、

ソファにラプンツェルと思われる人物が座っていた。

「ようこそ、初めてお会いしたわね」

少し冷たいような感じの声に冷ややかな黒い瞳、

花柄のサイケなワンピースのその女は

ミロスラフと赤ずきんをじっと見つめていた。

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