今は1973年
ミロスラフと赤ずきんは森の中を歩いていた。
「もうすぐ森を抜けられますよ」
二人はもう50分ぐらいは歩いている。
「あぁ、喉が渇いちまった
なぁ、飲み物はないか?」
赤ずきんがかばんの中から缶コーラを取り出した。
「なんだよ、オレってコーラはペプシ派なのに……
なんでRCコーラしかないんだ……」
渋々コーラを開けると、喉へと流し込んだ。
今までコーラはペプシしか飲まなかったミロスラフだったが、
RCコーラの味はこれまでの人生で最もうまいコーラだった。
コーラを飲んでいる途中、ミロスラフの脳内に一つの
疑問が生じた。
「この世界にコーラがあるのか?」
そのことを赤ずきんに聞こうと思ったそのとき、森を抜け出すことが
出来た。
しかしミロスラフはそこでまた、異様な光景を目にした。
その森を抜けるとコンクリートで舗装された道路が広がっていた。
さらに脇には電柱が立っている。
「グリム童話の世界なのに、現代的だな……」
ミロスラフが呟くと、赤ずきんが答えた。
「この本は1973年に発行されたんです、
だからこの世界は1973年なんです」
「中世とかじゃないのか?
オレの中にはそんなイメージが合ったよ」
「勝手に決め付けないでくださいよ」
赤ずきんが笑った。
歩いていると、後ろから車のエンジン音が聞こえた。
赤ずきんは振り向くと、車に向けてサムアップをした。
車が二人の近くで止まった。
その車は赤いオペルのセダンだった。
「どこまで行くね?」
運転手の60歳くらいの男が尋ねてきた。
「私のおばあさんの家までお願いします」
「乗りな」
後部座席にミロスラフと赤ずきんが座っている。
「なぁ、お前は今何歳なんだ?」
ミロスラフが尋ねる。
「15歳ですよ」
赤ずきんが答える。
「おばあさんへのお土産には
何を持っていくんだい?」
「ハンバーガーにシリアル、そして美味しいビールです」
「パイとかケーキみたいな古典的な食べ物じゃないのか?」
現代的な食べ物に、ミロスラフは少しがっかりした。
「ところであなたはいつの時代からやってきたんですか?」
「2013年からだ」
「40年後からですか……」
「あぁそうだ、だからお前は今は本当は15歳じゃない
オレのお袋より年上の55さ……」
ミロスラフの頭に銃が突きつけられた。
赤ずきんが構えているイサカM37ショットガンは
ミロスラフの頭を吹っ飛ばすには十分な威力があった。
「はは……冗談だよ、
ところで何でそんな物騒なもん持っているんだ?」
「自分の身は自分で守るものですからね」
「そうか、偉いなぁ」
ミロスラフは恐怖で怯えていた。
「ほら、ここだろ?」
オペルが一軒の民家に着いた。
「ありがとうございました」
車から赤ずきんとミロスラフが降りてきた。
「ここがおばあさんの家です」
民家の前で赤ずきんが答えた。
駐車場にはルノー・4が停められており、
郵便受けには新聞や郵便物がたまっていた。
赤ずきんが家のドアを開けようとすると、
ミロスラフはそれを止めさせた。
「待てよ、気をつけたほうがいい」
「その通りですね、この家の中には狼がいるんですから」
「何で知っているんだ?」
「あなたのように勇気の指輪を集めている人を
私はたくさん見てきました、
このシチュエーションも7度目ぐらいですよ」
ミロスラフは勇気を振り絞り、家のドアを開けた。