五人の勇者
2013年、ブレーメン。
かつてミロスラフも入れられていた更生施設では
今日も問題児達が苦しそうな顔で
グラウンドで監視員のもと、日課の
グラウンド十周をさせられていた。
グラウンドの近くの所長室では、いまや所長に就任した
オクタヴィアンがクーラーの効いた涼しい部屋で
ミロスラフが閉じ込められた本を読んでいた。
その本の挿絵には、ミロスラフが全ての指輪を集めた絵が
描かれていた。
この本は、グリムの世界が進むにつれ改変されていたのだ。
「あら、ついに五つの指輪が集まったのね、
これで私の野望も達成するわ」
オクタヴィアンが冷たい微笑を見せた。
1973年、グリムの世界。
ミロスラフ、赤ずきん、ラプンツェル、白雪姫、王子が乗った
フォード・エスコートが廃れた大聖堂の前に止まった。
「ここの大聖堂の壁に五つの勇気の指輪をはめ込めば
戻れるはずなんだけど……」
王子が心配げに言う。
「本当にそうなんでしょうね?」
白雪姫が王子をにらみつける。
「いいじゃないの、人間にだって間違うときはあるんだもの
そうよね、王子」
ラプンツェルが王子をかばう。
「ついに旅も終わりですね、
この旅はどうでしたか?」
赤ずきんがミロスラフに尋ねる。
「長くて辛かった、でも楽しかった、
何か大切なものも手に入れたしな」
ミロスラフが笑顔で答える。
「よし、みんな
車から降りよう、フィナーレだ」
五人が車から降りた。
大聖堂の扉を開けると、中央には誰かが立っていた。
「お疲れ様、よく頑張ったわね」
「オクタヴィアン、てめぇ!」
中央にいたのはオクタヴィアンだったが、
その背中には大きな黒い翼が生えていた。
人間界とは違うオクタヴィアンの姿に
ミロスラフは少し怖気づいた。
「ほら、勇気の指輪を五つ集めたんでしょ、
私にそれを渡しなさい」
オクタヴィアンがミロスラフに詰め寄る。
「みんな、指輪を出して」
ミロスラフが青、赤ずきんが赤、
ラプンツェルが黄色、白雪姫が白、
王子が緑の勇気の指輪を取り出した。
「指輪を渡す前に一つ教えてくれ、
その指輪を集める意味は何だったんだ?」
ミロスラフがショットガンを構えて
オクタヴィアンに詰め寄る。
オクタヴィアンが笑いながら答える。
「ここには私達の仲間や部下がたくさん封印されているの、
この指輪に魔法をかければ封印は解かれ、
再び私達はこの世界を支配してやるのよ」
「それが狙いだったのね」
ラプンツェルが呟く。
「どういうことなんだ、ラプンツェル?」
ミロスラフが聞く。
「今から五百年前、この世界は魔女達の支配に苦しめられていたらしいの、
しかしあるとき五人の勇者が魔女を封印して
その封印の証である勇気の指輪を村の人々に託したの」
「その話なら私も聞いたことあります」
赤ずきんが続く。
「その託されたのが私達の先祖だったんですよね」
「そうなのよ、それでもあなたたちはいつまでも指輪を渡さなかった
だから分からせてあげたの、あなたたちを不幸にさせたでしょ」
オクタヴィアンが笑う。
「どういうことなの?」
白雪姫が問い詰める。
「まずあなたには毒りんごを食べさせた、
そしてそこの彼は魔法でカエルの姿にした、
そしてそこのラプンツェルを塔に閉じ込めた、
そしてミロスラフ君をこの世界へ閉じ込めた」
オクタヴィアンが赤ずきんを指差した。
「そして赤ずきん、あなたの家族を殺したのは
この私なのよ」
「う、うそ……」
赤ずきんが絶句した。
「あの時指輪さえ渡してくれていればねぇ……
あなたは学校へ行っていたから難を逃れたんだけど……」
「ひどいよ!」
赤ずきんがオクタヴィアンに詰め寄る。
「パパとママを返してよ!
私がどれだけ辛かったか考えたことあるの?」
誰にでも敬語だった赤ずきんがこんなに
感情を高ぶらせているのは初めてだった。
「そこの壁に指輪を戻せば勇者達の魂が
蘇るそうよ」
ラプンツェルがミロスラフに言う。
「みんな、俺と一緒に戦ってくれ!
自由を取り戻そう」
みんなの答えは同じだった。
五人はそれぞれ自分の色の指輪を
壁にあけられた五つの穴にはめた。
すると、五人の体が光った。
「バカな真似を……」
オクタヴィアンは呟いた。
光が消えると、五人はフロック姿(中世ヨーロッパの軍服)に
なっていた。
ミロスラフは青、赤ずきんは赤、ラプンツェルが黄色、
白雪姫が白、王子が緑色のフロックだった。
さらに彼らにはそれぞれの武器が携えられていた。
ミロスラフはショットガン、赤ずきんはロングソード、
ラプンツェルが二つの投げナイフ、白雪姫が自動小銃の
H&K G3、王子がマチェットナイフだった。
「私を倒せばあなたたちは自由を手に入れ、この世界にも
平和が訪れるでしょう、ミロスラフも
ブレーメンへ帰れるわよ、どうせ無理だろうけどね」
オクタヴィアンが笑う。
「もう何も怖くはねぇ」
ミロスラフはそう呟いた。
自分の為、そしてみんなの為に
今、最後の戦いが始まる。
「よーし、行くぜみんな!」
「行きましょう!」
赤ずきんが答えた。
ミロスラフたちは魔女へと向かっていった。




