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妖奇譚

作者: 羅志

ほんのちょっぴり、グロ要素があります

昔々、とある小さな平和な村に、一人の赤子が生まれた。

赤い目をした赤子だった。


生まれた瞬間、誰かがその目を見て。

「化け物」

と、呟いた。


赤い目をした赤子など、今までに見たことがない。

村で最も長寿な老婆も、赤子を見て、息をのむ。

誰も見たことのない、赤い目を持つ赤子は誰からも嫌われ、避けられた。


「この赤子は忌子だ。この呪われた赤い目がそれを証明している」


誰かがそう言い始め、すぐに村中に伝わった。

それを信じた母親は心を病み、自殺してしまった。

村人はその死を、忌子の呪いだと考え、忌子を避けていった。


父親もまた、忌子の呪いだと考え、忌子を憎んだ。

最愛の妻を奪った呪われた存在だと。

自らの子供だというのに……



時間が流れ、忌子が自身で歩けるようになると、人々は村長に訴えた。

「どうかあの忌子をどこかに閉じ込めてくれ。あの忌子は村中を歩き、村に呪いをばら撒いている」

と。

誰もが、ありもしない呪いに怯えていた。


忌子は自らが拒絶される理由が分からなかった。

人に近づけば、来るな、と拒絶される。

同年代の子供と仲良くなりたくて話しかければ、化け物、と蔑まれ石を投げられる。


どうして、と悩んだ。

拒絶されるしかない自分を憎んだ。

悲しみに涙を流した。

水に映る自らの赤い目を見て、この目のせいで、と目を恨んだ。


この目がなければ、と、目をつぶした。


目を失って、忌子は何も見えなくなってしまった。

だが、これで嫌われなくて済む、と信じた忌子は、ふらふらと他の子供たちへと近付く。

子供たちは忌子に気付き、いつもどおり拒絶の言葉を吐こうとした。

が、忌子の顔を見て。

赤い目があったはずの場所から、涙のように流れ出る赤い液体を見て、悲鳴を上げた。


「ば、化け物っ!!!! 来るなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


子供の叫びに、忌子の足が止まる。

子供の叫びに、村人たちが集まる。

子供たちの親は、震える我が子を抱きしめて、化け物、と忌子を罵る。

他の村人たちも、口々に忌子を罵り、物を投げ付けた。


どうして、と忌子は思う。


嫌われていたのは、目のせいではなかったのか、と。

目を失ったのだから、人と仲良くなれるはずだったのに、と。


悲しみから、絶望から、忌子は全てを壊したく思った。


いつのまにか握っていた、尖った石を振り上げて、そして……






気づけば、村は忌子だけになっていた。

握っていた石も、忌子自身も、真っ赤に染まっていた。


「……?」


ふと、頭部の違和感に気付く。

そこには、ツノがはえていた。




「鬼」と呼ばれる、本当に忌み嫌われる存在になってしまったことを、忌子だった子供は、知らなかった。




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