忘れたい
あれから、璃菜の言葉が離れない。
「2人が恋に落ちたらとめられない…か。」
あたしの最近の口癖。
家族全員のいるリビングでも、おかまいなしに呟いてしまう。
「るん、少女マンガの読みすぎなんじゃないの?」
姉の嘉穂ちゃんがクスクス笑う。
「そうよ、るん!もうすぐ定期テストなんじゃないの??勉強は!?いいの!?」
「はいはい…。」
そうだ、定期テストなんだ。
毎回イヤでたまらないテスト。だけど、このことを忘れるのにちょうど良い。
今は、とりあえず勉強しよう。
そう思い机に向かっても、清島と道が頭から離れなかった。
「おはよう、璃菜♪」
璃菜に、精一杯笑いかける。
「おはよう★ねー、見て!!」
璃菜は不機嫌な顔をしながら、目線を窓側にずらした。
窓側の一番後ろ。
清島の席だった。
でも、清島は見えない。
来ていないからではない。海タローと道が壁になっていて、見えなかったんだ。
さりげなく近寄ってみると、会話が聞こえてきた。
「清島のあだ名、莢やんでいいよな♪」
「いぇ…あのぉ…先生は清島で…それで…道大くんは…えと…莢とか莢ちゃんとかでぇ…えと…」
「まじ??じゃあ、はじめは莢ちゃんでいく♪」
「ぁの…はい…よろしくです…」
「なに、アイツ。ああ見えて、下の名前で呼ばせようってか?ちょうウザいんだけど…。」
璃菜も深く頷いた。
「海タローはともかく、道はこっちに連れ戻した方がよさそう!
だってねあたし、今日の朝、菜奈ちゃんたちから聞いたんだけど…
清島さんって、ヤバいらしいよ?」
「まじ??理由は分からないけど、道は渡さないしっっ。
ともかく、情報屋の後輩いるから聞いてみよっ。」