清島
『あのとき俺は恋をした』をかきつつ、こちらも書いていきたいと思います。
どちらかというとこちらの方がコメディ感もあり、お気に入りです。
ぜひお読みください♡エロなシーンとか残酷なシーンとかは無いので、気軽に読んでくださいね☆
話の展開についてのリクエスト、大募集です^^
今でも覚えている。
入学式のぎこちない空気。
1年1組の教室。
そして、担任の先生の笑顔。
でもあたし・森田るんは、入学式とか自己紹介とかいうものにいい思い出が無かった。
少女マンガのようにイケメン男子と隣になって、名前を聞き合って恋の始まり…
なんて筈もなく、ただ皆に名前を笑われる。
そして今日は転入生が来るとの事で、そいつに1人1人自己紹介しろというのだ。
そんなウザい提案をしたのは、担任の海タロー。
和泉原 海斗という本名だが、貧乏暮らしには似合わない高級な名前。
というわけで、[名前]という単語といえば、とあたしがあだなをつけてやった。
今では他の先生にも海タローと呼ばれているらしいのだが…
ったく、提案した海タローも海タローだけど、転入生も転入生だ!
どんなツラしてんのか、しっかり見てやらなきゃ。
「おーい、えっと…なんだっけ?
あ、そうそう。清島はいれー。」
清島??
美しすぎる名字にイラつきを覚えながら、教室のドアに目をやる。
ちょこまかと入ってきたのは、小柄な女の子。
教壇にあがるまえに、「清島 莢です…。」と自己紹介をする。
「おいおいまさか清島って天然なのかー?」
海タローが変にテンションを高めた。
そりゃそうだ。海タローは極度の天然好きだからな。
でもまさか、生徒に手出したりすんのはやめろよー…
そんなことを思いながら、また転入生へと目をうつした。
「えと…。清島 莢です…。千葉から、親の転勤で来ました…。
そのぉ…趣味は、おとなしくしてることで…んと…仲良くしてくださいぃ…」
教室中が一瞬静まり返って、その後、皆苦笑いをした。
こいつなんだ、って感じ。
あたしもそうは思ったけど、転入生にえばられたらウザいし。
こいつぐらいがちょうどいいわね。
と、斜め前の席のあたしの親友・璃菜が話しかけてきた。
「あの子さー、なんなんだろうねー(笑)びっくりするほど…なんていうの?」
「かわいい。」
璃菜の隣の道大が口を挟んだ。
「びっくりするほどかわいい。」
…。
やっぱりか。
道…こと道大は、おとなしい子が大好きだから。
予想外にダサい転入生に戸惑いを隠せないクラスと、その中で2人だけ転入生を見つめていた。
「きーよしまぁーっっ♪♪
なんだなんだ、もっといろいろ教えてくれよ☆☆あ、俺、担任な。
和泉原海斗ってんだけど、海タローって呼ばれてる。清島のあだ名決めようぜっ★
ほらぁ、どうせ道クンも惚れただろー?ほら、一緒に3人でお話ししようぜ♪」
「ばか海タロー、そんなんじゃねぇしっっ…照」
明らかに照れて、顔が真っ赤。
そんな状況を読みこめていないのは、清島だけでは無かった。
「えー?道クンって、あーゆー子が好きなのぉ?」
「ホントだったら、まじショックー」
「狙ってたのにぃ…どうなんだろう!!!」
そんな会話が聞こえてくる。
そう、道はモテるのだ。
そして、あたしと璃菜と…もう1人、病気で入院している麻友、そしてタカヒトの幼なじみでもあった。
幼稚園の頃から決まっていた。
『るん、璃菜、麻友、道大、タカヒト』
本当に恋愛感情など無かった。
が、中学生になり麻友が入院し、タカヒトも登校しない日が増えた。
するとなぜか道は、大人しい子が好きになったのだ。
道のことが男として好きなんじゃない。
でも、あんな奴…清島には絶対に取られたくなかった。
…ほんとに。
「私も、るんの気持ちすっごく分かる。
いきなり、部外者なのになんだって感じだったよね…」
「でしょっ!?でも、道が好きなんでは無いんだよねー…。」
夜のガールズトーク。
電話越しに聞く璃菜の声は、あたしの心を落ち着かせてくれた。
「アハハ…
でも、道は道だし、清島さんは清島さんだよ。
だから、悔しいけど…もしあの2人が恋に落ちても、あたしたちは止められないの。」