コンタくんの「ふえる」おやつ
ニャーゴが、目を キラキラさせて、長老の 所へ 走ってきました。
「ネコノヒゲ長老さま! 大変だニャ!」 「おや、どうしたニャーゴ。そんなに あわてて」
「あのね! コンタくんが、すごい事を 始めたんだニャ!」 「ほう。すごい事?」 「うん!『大事な おやつを 1こ あずけたら、明日 2こに して 返す』って! すごいでしょ! ぼく、昨日 もらった おやつ、あずけてくるニャ!」
ニャーゴが 飛び出そうと するのを、長老が やさしく 止めました。 「まあ 待つのじゃ、ニャーゴや。それは、もしかすると、とっても あぶない お話かも しれんぞ」 「えー! だって、おやつが 増えるんだよ? 2こに なるんだよ?」
「ニャーゴや。よーく 聞くんじゃ」 長老は、ニャーゴの 目を 見て 言いました。
「まず、コンタくんは、ニャーゴから おやつを 1こ あずかる」 「うん」 「でも、コンタくんは、おやつを 2こに 増やす まほうは 持っていないんじゃ」 「えっ! そうなの?」
「そうじゃ。だから コンタくんは、明日ニャーゴに 2こ 返すために、新しい お友だちを 探しに 行くんじゃ」 「新しい お友だち?」 「うむ。コンタくんは、ウサギさんと タヌキさんに 同じことを 言う」 「『おやつを 1こ あずけたら、2こに して 返すよ』って」
「ウサギさんも『やったー!』って、おやつを 1こ あずけるニャ?」 「そうじゃ。タヌキさんも『すごい!』と おやつを 1こ あずける」 「これで コンタくんは、新しく 2この おやつを 手に 入れた。…さて、コンタくんは どうすると 思う?」 「うーん…?」
「コンタくんは、ウサギさんと タヌキさんから もらった その 2この おやつを、ニャーゴに『はい、約束どおり 2こに 増えたよ』と わたすんじゃ」
「あっ! それ、ぼくの おやつが 増えたんじゃなくて、ウサギさんの おやつと、タヌキさんの おやつを もらっただけだニャ!」
「そのとおり! よく 気づいたな、ニャーゴや」 「それじゃあ、コンタくんは、あずかった ぼくの 1こは どこへ やったニャ?」 「それは、たぶん 自分で パクッと 食べてしまったじゃろうな」
「ひどいニャ! じゃあ、次の日、ウサギさんと タヌキさんには どうするニャ?」 「うむ。ウサギさんに 2こ、タヌキさんに 2こ。コンタくんは、合わせて 4この おやつが 必要になる」 「4こ!?」
「そうじゃ。だから コンタくんは、今度は クマさんと サルさんと リスさんと イタチさんに『おやつ、増やすよ』と 言って、4こ あつめてくるんじゃ」 「わかったニャ! 1人に 返すために 2人から、2人に 返すために 4人から…」 「どんどん 新しい お友だちが 必要になるんだ! おやつは ぜんぜん 増えてないニャ!」
「そうなんじゃ。もし、この森じゅうの 誰も おやつを あずけてくれなくなったら、どうなる?」 「あ……!」 ニャーゴは、ハッと しました。 「最後に あずけた クマさんたちは、おやつを 返してもらえなくなっちゃうニャ!」
「そうじゃ。そして コンタくんは、最後に あつめた おやつを ぜーんぶ 持って、どこか 遠い 所へ にげてしまう かも しれん」 「えーー! そんなの ひどいニャ! みんなの おやつが なくなっちゃう!」
「うむ。『かんたんに 増えるよ』という あまい お話には、気 を つけるんじゃ」 「それは、自分の おやつが 増えるんじゃなくて、後から 来た 人のおやつを もらうだけ。いつか かならず、誰かが こまってしまうんじゃよ」
「こわいニャ…。ぼく、おやつ あずけるの、やめる! 長老さま、教えてくれて ありがとうニャ!」 ニャーゴは、自分の 大事な おやつを、ぎゅっと だきしめました。
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