表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/46

相談してみた


 二人とも今気がついたらしい。

 口を大きく開けたまま、ボーッと見上げて動かない。

 反応があまりにも鈍くて、少し心配になる。

 だが、このあともっと予想外のことになった。

 アマルさんが、口を覆って目を細め、空を見上げたまま涙を流し始めたのだ。


「なん……なんてこった……空だ。青空だ。……はあ……何十年ぶりだ? 空が、また……こんな……いったいどうなってんだ?」

「もしや、アリア嬢……?」

「えーと、まあ、その……はい。ちょっとだけ手を加えました」


 へへ、っと頭を掻きながら自白する。

 円環で広範囲に及んでいた雲を薙ぎ払いました。

 若干やりすぎとも思われそうだから、ごまかすように敬語を混ぜながら言うとセッカ先生に今まで見たこともないような微笑みを向けられて、心臓がバクーンと変に跳ね上がった。

 初代聖女様に『聖魔力は恋心で無尽蔵に湧き出るんですわ。たくさん恋をしてくださいませね。わたくしも街に行く度に恋人を作っては、初代剣聖であるアリトリスにど突かれておりましたわ、懐かしい! アリトリスは一途でしたからねー。でも、わたくしは恋っていくらしてもいいと思いますの。恋人が一人だなんて誰が決めましたの? そり恋人が一人の方がよいという一途な考え方も好きですけど、人生は短いしたくさんの殿方と色々な恋をした方が人生が豊かになるとは思いませんこと?』……と、熱弁されたのを思い出す。

 申し訳ないが初代聖女様の思想は私、あまり理解できなかった。

 恋人は一人の方がいいと思う。

 というか、私は恋とか愛とかまっっっったく理解できない。

 ベルレンス様とも恋人らしいことはなにもしてこかったし。

 いや、シンプルに私が嫌われていたからだろうけれど。

 挨拶もなく帰ってきてしまったから、念話で聖女ティシュリアにその後のことも確認しておこう。

 まあ、厄災魔物は倒したので今は被害状態の確認に躍起になっている頃だろうが。

 願わくば、一つでも無事な町村があればよいと思う。


「そうだったのですね。……まさか青い空がまた見られるなんて……。本当にありがとうございます」

「いや、あの……それだけではないのだ」

「はい?」

「実は先程、ここに来る前に永久凍国土(ブリザード)に寄って、封印核への聖魔力供給も行ってきたのだが、その際に初代聖女様の意思に厄災魔物について色々聞くことができたのだ。それによると――」


 厄災魔物は増えれば増えるほど広範囲に、しかも凄まじい天災を引き起こす。

 その天災は厄災魔物というよりその土地に起こりうるモノが起こる。

 海の側なら津波、森のそばなら山火事、雪国なら大寒波……というように。

 この土地を長年悩ませ、ヴォルティスキー王国をただのアイストロフィという町にしてしまうほどに衰退させた長期間の大寒波を引き起こしていたのは、先日倒した十体の厄災魔物。

 私が倒したことで大寒波は時期に終わる。

 そして、教会が秘匿したり、削ってきた五大英雄についての情報は――五大英雄が受け継ぐ人ならざるほどの強大な力を恐れてのこと。

 私自身、自身の力の恐ろしさをよくよく理解した。

 私はまだまだ強くなれる。

 五大英雄は厄災魔王に匹敵する脅威になり得るのだ。

 同じ“人間”でありながら、“人間”は思えない力を持つ者がこの世界には五人もいる。

 その恐怖から、教会を始めとした人類は五大英雄の力をどうにかして削ごうと必死だったのだろう。

 それを説明するとセッカ先生にもアマルさんにも渋い表情をされた。

 まあ、実際そうやって五大英雄から力を削いでいった結果がヴォルティスキー王国の衰退と、三十年以上の大寒波。

 そして、今回のクラッツォ王国の騒動。

 今のままならば間違いなく、五大英雄の力が足りずに厄災魔物が蔓延り厄災魔王の封印は解かれるだろう。


「だが、教会や各国の王侯貴族が五大英雄を恐れて情報を制限してきた気持ちもわかるのだ。自分自身でこれほどの力があるとは思っていなかった。それに私自身、剣聖の紋章にはもっと凄まじい力があると理解した時、恐怖を覚えた。こんな力を持っていたら恐れられても無理はない。確かにこれは世界を守り、人々を厄災魔物から救う力であると理解している。だが、それでも今の時代には過ぎた力だと思う」

「それほどまでに、強力な力なのですか」

「うむ。だが、私自身が恐るこの力を以てしても魔王は倒せない。私だけでなく、五大英雄の力が最大に開放された状態であっても倒せない。初代の記憶が刻まれた紋章がそう語りかけてくるのだ。だからこそ、捨て去るわけにはいかない力でもある。それゆえに悩んでいるのだ。この力は残さねばならないが、五大英雄とその周囲への心への配慮をどうするべきなのかを……」


 もしもベルレンス様が私とあのまま結婚していたら、私はクラッツォ王国であの大型の厄災魔物と対峙して勝てただろうか?

 この地にきて、聖剣の生成を知らなければ勝てなかった。

 だからやはり、知らねばならないと思うのだ。

 知識も力も、なければ守れない。

 厄災魔物が自然魔力を通して厄災魔王から生み出され続けるのだから。

 だが平和な平時で五大英雄の力は強大すぎて、人々に恐れられてしまう。

 この差をどうしたらよいものか。

 それに、聖魔力で封印核を支えなければならない。

 私が腕を組んで考え込んでいると、セッカ先生が「なるほど」と私と同じく考え込む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ