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クラッツォ王国の魔物(3)


「ティシュリア! なぜそんな女を……!」

「陛下、現状、戦う力のあるアリアリット様にしか国を救うことはできません。護る力だけのわたくしでは厄災魔物を退けることはできないのです……!」

「だ、だが……お、お前はこのように王都を守り抜いたではないか。こんなゴツくて力だけの女を頼る必要など……」

「倒すことができないから、この一週間この国は厄災魔物の蹂躙をただただ受けることしかできなかったのではありませんか……! 無理なのです、陛下。今は戦う力が必要なのです! わたくしでは……っ」

 

 両手で顔を多い、涙を落とす聖女ティシュリア。

 彼女の可憐な泣き顔に、兵たちがあからさまに動揺する。

 男はみんなこういう儚げで守ってあげたくなる女性が好きなのだろう。

 ベルレンス様も歯軋りしながら私を睨みつけ、小さく呻き声をあげた。

 

「くっ、ぐっ……くっ……! ならば、アリアリット! 貴様に命じる! この国に現れた厄災魔物をすべて排除しろ! 貴様のようなゴツくて戦うしか能のない兵器は、そのくらいしかできんだろう!? 他のことで役にも立たんのだから、早くしろ!」

「きゃ!?」

「っ!?」

 

 怒鳴ったベルレンス様がティシュリアの肩を突き飛ばし、抱き止めようとした私の腕を掴んで振り払う。

 兵たちも咄嗟なことで狼狽える。

 フーフーと獣のように荒い呼吸。

 振り払われた腕は痛くもなんともない。

 私の体はこの程度で痛みを感じるほど、貧弱ではないので。

 しかし、これほどまでに余裕のないベルレンス様も初めて見る。

 あまりにも小さくて、何度目かわからない溜息を吐く。

 しゃがんでティシュリア殿を支え起こし、ベルレンス様を見上げる。

 

「言われずともそうします。今、私の胸の紋章はとても……聖魔力が溢れて止まらない状態なのです。早くこの国に現れた厄災魔物を倒し、今の居住地に帰りたい。あの地で私を待っていてくれる人たちのために、一刻も早く。すべてを倒して、ご挨拶もせぬまま帰らせていただきますが、それでよろしいか?」

「当然だ! さっさと厄災魔物を倒し、去ね!」

 

 これはとんでもないな。

 今回のこと、クラッツォ王国の損害はいかほどになるか。

 しかも、国王であるベルレンス様が私を国外追放した直後にこれだ。

 さらに教会の重役の蒸発。

 教会はベルレンス様が私との婚約を破棄すると知っていたはず。

 聖女ティシュリアをこの国に派遣するよう手配したのは教会だからな。

 つまり、教会は十分に今回のような仕上がりに絵が描ける。

 この国にはずっと、住んでいたのか。

 厄災魔物や、厄災魔王と通じる災いが……。

 

「……ふう……。ティシュリア殿、この国の封印紋章の核への聖魔力供給をお任せします。私は今から、この国に巣食う厄災魔物をすべて討伐してきましょう。ただし、今回の大型に限ります。本当に今回で最後です。この国に生まれ育った私が、この国にできる最後の奉仕です。私の親については、もう縁を切ったものとしてください」

 

 親のことは心配ではあるけれど、私のせいで人生が歪んでしまった人たちだ。

 私がいなくなれば、真っ当な人間に戻れるかもしれない。

 胸の紋章に触れて、円環と聖鎧を生成して空へと飛び上がる。

 聖女ティシュリアにも円環や聖鎧というものがどういうものなのか見て、自分の円環や聖防具を生成する時に役立てばいい。

 飛び上がり、上空に向かう。

 できるだけ広範囲で[探索]の魔法を使ってみた。

 高所から広範囲なので、反応はかなり小さい。

 が、複数が王都へ向かっている。

 王都外で暴れていた厄災魔物が、王都に向かって移動している……ということか?

 薄い反応だが数は……一つ、二つ、三つ、四つ、五つ……六つ。

 それらを最短ルートで首を落とす!

 目を閉じて集中してそのルートを考えて、目を開ける。

 あ……青い空。

 

「………………」

 

 本当に不思議なのだが、昨日あれだけ枯渇した聖魔力が本当にとめどなく溢れてくる。

 胸に手を当てて、聖剣を生成してもまだ溢れてくる。

 それは特に――セッカ先生の顔を思い出すと溢れて溢れて円環が大きくなってしまった。

 円環の短剣はまだ操作に慣れていないけれど、今なら六体の大型厄災魔物相手でも簡単になんとかなってしまえる気がする。

 いや、多分余裕でなんとかできる。

教会に『聖魔力が無限に使える』と教わった。

 教会への不信感であまり信じていなかったけれど、今の私の状況はまさに聖魔力が無限に溢れてくる状況。

 今なら本当に、なんでもできそうだ。

 大型厄災魔物を六体も、難なく倒せそうな……そうだ!

 

「円環よ。対魔聖円環(たいませいえんかん)よ。災いを振りまく魔物を抹消せよ!」

 

 円環に刺さる短剣の位置がすべて下方部に移動し、手持ちの剣と同じ大きさになる。

 さらに円環が人の頭暮らしの大きさに縮み、背中に貼りつく。

 まるで背中に剣が生えているような見た目だが、背中の聖剣が聖魔力を強く纏う。

 聖剣を構え先ほど思い浮かべたルートを一瞬で移動した。

 世界が止まって見える。

 厄災魔物がの首が六つ、落ちた。

 ああ、これが剣聖の力か。

 これでも、私はまだ初代に遠く及ばない。

 近づいたからこそわかる。

 この紋章にはもっとすさまじい力を有している。

 そしてその力を以てしても、厄災魔王を倒すには至らなかった。

 厄災魔王を封印して、世界が平和になったら……今度は五大英雄と勇者が魔王の立場に変わった(・・・・・・・・・・)

 教会が情報を秘匿し、五大英雄の力を削ってきたのは人々の不安を和らげるため……。

 封印紋章の核への聖魔力供給をも止めたのは、封印核に振れて聖魔力供給を通して歴代の意思から五大英雄の紋章についての情報を引き出されては困るから。

 

「難しいな」




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