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初仕事(2)

 私が剣聖であることを、門番は知っているようだ。

 初日に子どもらが言ってたっけか?

 しかし、外は雪深い。

 昨日降った雪のせいか、道がなくなっているような……?


「るんるんらんらんるんるんるーー」

「わっ」

「あら? やだ! 人が歩いていた! どうもおはようー! 初めて見る人ねー。わたし、ラァリー! 除雪で路作りをしている婚約者募集中の二十五歳独身! ……って、なんだ、女の子かぁ。しかも可愛い。若くて可愛い、憎い」

「え……えーと……」


 雪をかき分けるようにして現れたもっふもっふの装いの美人。

 ラァリーと名乗った彼女は私の頭から足下まで見てから、急に渋い表情になる。

 なんだろうこの人は。

 こんな真冬の日の出前に魔物も闊歩する街道で除雪……?

 いや、とりあえずまずは自己紹介だな。

 彼女はすでに名乗っているのだから!


「私はアリアリット・プレディター! 最近この町に引っ越してきた剣聖だ! 初めまして! これからよろしく頼む!」

「え! 剣聖……!? あ、噂で聞いたことある! へー、あなたがそうなんだ!? え……こんな可愛い小さな女の子が、剣聖……? マジで言ってる?」

「え、ええと……私はゴツくないのか? クラッツォ王国ではゴツいゴツいと言われていたのだが」

「はあ? あなたのどこがゴツいのよ? ゴツいと対極にいるわよ? 小柄だし、可愛いし、クラッツォ王国の人たち目腐ってんじゃないの?」


 そこまでおっしゃる……?


「ええと、ラァリーはなにをしている人なのだろうか?」

「わたし? わたしは見ての通り積もった雪の除雪作業員よ。ここから向こうまで寒波の及んだない地域まで炎の魔法でダーーーッと雪を蒸発させているの! 地下に排水する工事が終わっているところは炎を弱めて地下に流すけどねー」

「……! 私がアイストロフィに無事辿り着けたのはラァリーのおかげだったのだな! ありがとう!」

「え? ……あ、そ、そうだったの? ふ、ふーん。いい子じゃん」


 と、目を背けられた。

 照れている?

 いや、それにしても、これだけの雪の量を一瞬で“蒸発”させるとは……。


「ラァリーの魔法はすごい威力だな。この雪の量を処理し続けるのは相当の魔力量が必要だろうに」

「ああ、意外とそうでもないのよ。わたし、マットレーアス国で『火球しか使えないから』って婚約破棄されてここに辿り着いたのだけれど、セッカ様の作った魔法具のおかげで威力と持続力が爆上がりして、しかも魔力もほとんどこの魔法具が自然魔力を利用して補助してくれるから」

「セッカ先生の」


 両手の手首につけられた腕輪を見せてくれる。

 これが魔法具か。

 確かに自信を強化する魔法具は一般的だが、効果が三つ――『威力だなアップ』『持続力アップ』『自然魔力を利用した魔力回復補助』なんて聞いたこともない。

 普通の補助魔法具はせいぜい効果が一つ。

 と、いうことは……。


「もしかして、セッカ先生の開発した新魔法を応用した魔法具だろうか?」

「そうそう! よくわかったわね!」


 やなりそうか。

 町の中に多くのセッカ先生開発の新魔法が使われていると聞いている。

 それを魔法具に応用させることができれば、かなり強力な“力”になるだろう。

 しかし、当然それは危険も伴う。

 兵器に転用しやすいからだ。

 特にこの魔法具……すべての効果が規格外すぎる。

 普通一つでもあれば隊長クラスの騎士が持っているような超貴重品級のものだぞ?

 それが両腕にあるなんて、危険極まりない。

 他国に知られれば軍を使ってでも奪おうとする代物!


「どうかした?」

「……あ……い、いや……セッカ先生の意図がちょっと……わからなくなった。あなたのような女性に持たせるには、それはあまりにも危険なものだろうに」


 セッカ先生は……あの人は思慮深い人だ。

 それは彼のこれまでの言動を見て間違いない。

 新魔法を使うことによる環境への影響まで考える。

 そんな人が、果たして彼女にこれほど危険なものを持たせるのか?


「ああ、それはね……わたしが望んでこの魔法具の実験を申し出たの。この魔法具を使えばわたしは道を作れる。アイストロフィは孤立しないで済むでしょ? それに、道ができればアイストロフィから永久凍国土(ブリザード)への道が開かれる日も来るかもしれない。わたしはね、あの人の……ううん、あの町の“道”になりたくて、自分から進んで魔法具を化していただいているのよ」

「……道……」

「そうよ。だからあなただってアイストロフィに辿り着けたんでしょ? わたしの仕事はそういうことよ!」


 そう言って胸を張るラァリー。

 確かに。

 確かにそうだ。

 彼女が作った道から私はあの町に辿り着いて、そしてあの人に出会った。

 私の人生を変えてくれた道を作ってくれた人だ。


「そうだな。……うん、その通りだ。ありがとう、ラァリー」

「うふふ。どういたしまして!」

「しかし、それはそれとしてその魔法具は非常に価値が、その……高い。高すぎる。もし存在が知れれば他国から軍が動くほどの代物だ。そのあたりは理解しているのだろうか?」

「えーと……ああ、うんまあその……セッカ様にそれは注意されて知っているのよ。だから、万が一の時は効果をすべてリセットする呪文も教わっているわ。そんなに心配しないで」

「そうなのか」


 それなら大丈夫、なのか?

 まあ、ちゃんと対策しているあたりさすがセッカ先生。



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