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家を買う(2)


「だからお金のことはどうか気にせずに、これからのあなたの生活を最優先に考えてください」

「あ……」

 

 国守は、国が生活のすべてを保証してくれた。

 だがこれからは“アリアリット・プレディター”として生きていく。

 この人は、そんな私を応援してくれると言っている。

 信じてくれている。

 目を閉じて、呑み込む。

 

「……ああ。それでは、ありがたく」

「ええ、よき新居を」

 

 改めてお礼伝えて、再び談話室に戻りケイジさんたちとともに町に降りる。

 城の真下の貴族街のような場所にまずは案内された。

 私がクラッツォ王国で貴族だったから、かつて貴族の住んでいた屋敷の中で空き家になっているところを紹介してくれるらしい。

 

「まずはこちらの物件。かつて侯爵家だったお屋敷です。玄関ホールから右に食堂、左に応接室。正面の半螺旋階段を上ると二階に上がることができ、そちらにはゲストルームと寝室が五つ。シャワールームの他にクローゼット、子ども部屋がございます。隣の棟には使用人の宿舎と、反対側には離れのお屋敷も。価格といたしましては最高値のご提供にはなりますが、リネンなどの消耗品以外の家具が多く残っており、当社が定期的に清掃を行なっておりますのですぐに入居も可能です」

 

 ほうほう、と聞いているとその代わりシーツなどのリネンは購入しなければならないし、食糧もない。

 風呂やトイレ用の魔石もないので、そのあたりはまとめて注文しなければならないそうだ。

 代理購入ができるので、気軽に言ってほしいと言ってもらってそれは一安心。

 

「他の物件をご覧になってから決めていただいても構いませんよ」

「そうか? では、他の物件も見せていただこうかな」

「では、次の物件にご案内いたします。こちらです」

 

 次の物件は先程の屋敷より一回り小さい。

 庭はあるが使用人宿舎や離れもない。

 蔦が生えてダークブラウンの壁を覆っている、緑色の屋根のお屋敷。

 

「こちらは元子爵家のお屋敷で、先程の元侯爵家のお屋敷の半分ほどの敷地となっております。お屋敷の中に使用人用の部屋があり、使用人を最小限にしたい場合はこちらの方がよいでしょう。中庭に畑や城より小さくとも温室がありますので、薬草を育てることも可能です。こちらも当社で定期的な清掃を行なっておりますので、すぐに入居可能です。価格は元侯爵家の半額。中もご覧ください」

 

 と、言ってなかを案内された。

 片螺旋階段から二階に上がると確かに先程の大きな屋敷を見たあとでは狭く感じる。

 しかしこの先一人で生活していくのに、こんなに広い屋敷が必要か?

 もう少し小さな家でもいいかもしれない。

 これから一人で生きていくのなら、使用人を雇わず定期的に孤児院の子を雇いたい。

 そのように希望を伝えると、少し意外そうな表情をされた。

 だがすぐに「城から少し離れてしまいますが、よろしいですか?」と聞かれて頷く。

 そのまま次に連れて行かれたのは貴族街から市民街に入った二階建ての家。

 まだこのあたりは二階建てが多いそうだ。

 

「雪がある」

「はい。元貴族街は除雪機が自動で除雪を行っているのです。しかし市民街は広すぎるため各自で除雪を行います。まあ、この辺りは貴族街の除雪機が通るのであまり雪はない方ですが」

「確かに……」

 

 町に入る前の豪雪は膝が埋もれるほどだった。

 しかし、毎日雪が降り、晴れることがないのならもっと雪が積もっていそうなものだが……。

 

「どうかなさいましたか?」

「国が衰退するほどの寒波が続いていると聞いたのだが、思いの外雪が少ないと感じて」

「それはセッカ様考案の地下温水設計のおかげですね。町の中の地下にパイプを通してお湯を流して雪を溶かしているんです。溶けた雪はそのまま地下の貯水槽に入り、そこで熱湯に熱されて地下パイプを流れるのですよ。町の外にもパイプを伸ばす工事が続いていますので、町の外も少しづつ雪が溶け始めているのですよ」

「へえ……」

 

 雪を再利用しているのか。

 熱された水は蒸気となって空に戻り、空で冷やされてまた雪になる。

 そういうサイクルができ始めているのか。

 やはりセッカ先生はかなり頭がいいな。

 

「その工事が進めばいずれ外壁も伸ばして畑を増やすこともできるのでは、と期待されているんですよ」

「でも、やっぱり定期的な寒波をなんとかしないと難しいでしょうね……」

「これ以上町の人口が増えても数年は問題ないだろうが……マットレーアス国がうちの町みたいになっても、流入してくる難民を支えきれないからなぁ」

「それが一番怖いわよね。空間拡張でも国一つ分の人口を支えきれないもの。そんなことになったらアイストロフィ周辺の自然魔力が枯渇してしまうって、セッカ様もおっしゃっていたもの」

 

 自然魔力は無限ではない。

 使えば一時的に消費され、時間をかけて他の場所から流れてきて回復する。

 だから魔法師はあまり大がかりな魔法を自然魔力を用いて使うことはしない。

 自分の体内魔力を使い終わったら、魔力を貯蔵する魔石を使う。

 それでも足りなければ……という順番だ。

 周辺の自然魔力がなくなれば、魔法は使えない。

 話に聞くところ我々五大英雄は紋章が自然魔力とも体内魔力とも違う、聖魔力を生成する。

 聖魔力は心の力と言われていて、国を守るという心があれば無限に溢れてくるという。

 でも、今の私は国守ではない。

 国守ではないから、私の聖魔力は有限になっているのかも?



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