冒険者登録
さて、面白くないけど、どうせ歩いて数分で冒険者ギルド着くんでしょ?さーて、どれかな?楽しみだなぁ。
えー、舐めてた。遠い。不便。そら人間界最後の街だろうね。人いないもん。大量生産の拠点だったのかな?見慣れたナーロッパな世界だと思ったけど、やや19世紀だったみたいだ。
だとしたら農村じゃない?なんで、冒険者ギルドとかいい感じにあるはずなのにこんなに不便なの?インコンビーニエントストアだろ、こんなの。
冒険者ギルドについたのは昼を過ぎてからだった。約30分歩いた。私は地図を信頼することを辞めた。もう地図なんて信じない。縮尺のバカヤロー。
「おはようございま……。こんにちは。アリスです。冒険者登録させてください」
「まぁ、しっかりしたお嬢ちゃんだこと。冒険者登録ね。ちょっと待ってて。マリーさん、あの、アレ持ってきて」
「あれってどれよ」
「あの、アレ、なんやらゆう、水晶。冒険者登録に使うやつ」
「あー。アレね。了解。にしても何年ぶりに使こうた?押し入れから出して来なないじょ。待ってもらっとる間に模擬戦でもしよって」
「はいはい」
何このおばさんなやりとり。人間界最後の街ってこんな感じなの?冒険者登録の水晶押し入れって何?ちゃんと管理しようよ。受付にでも置いとけばいいのに。
「で、アリスちゃんだったわね。水晶探さないといけないから、模擬戦する?それともご飯?」
このおばさんやさしそう。とりあえず、滾る血の本能に身を任せ、模擬戦をすることにした。
ふと周りを見てみると、お爺さんお婆さんの集会場みたいになってた。で、この後が大変なんだよなぁ。模擬戦しようと行こうとするじゃん。こうなるんだよなぁ。
「お嬢ちゃん、どこから来たんえ?」
「あっちの方からです」と魔界側を指差すと「ほうかぁ。ギルド遠かっただろ?」とお爺さんが話しかけてくるし、「そら遠いさね。でもここは"えあこん"なるものが効いとるからええね」と別のお婆さんも話してる。
私は「そうですね。エアコンって良いですよね。えっと、で、冒険者登録しに来たんですけども?」とふとさっきのギルドおばさんを探すと、向こうの方で「ねぇ、最近本当どっこも暑うてかなん」「本当にねぇ、トメさんも最近暑いけん、きーつけよ」「それこそ、サリーちゃんはここで働っきょうけん、ええねえ」とか、会話してた。
もうヤケクソで「そうやねぇ。ここで働っきょったら夏は涼しいし、冬はぬくいし、ええことずくめやねぇ」と返しておく。まさか前世の阿波弁がここで役立つとは思わなかった。
「ほうなんよ。ほなけど、みーんなここくるけん、新しい人なっかなか来んけんなぁ」
「ほやけん、ゆったりできとんでぇ。国から金もろうてゆったりできるのええことじょ?」
「もっとバリバリ働くつもりやったんじょ?ほなけどもう割と年やけんなぁ」
「サリーさんまだ若く見えますよ」と頑張って入ると、「アリスちゃんぐらいの子やったら何でもできるなぁ。若いってええじょ。やりたいことはどんどんやっときよ」と返された。
そんなこんなしてるうちに「やっとあったわ。あそこにしもうたん誰?」「それやったん先代のエリーさんじゃないん?どうせこんのに置いとったってしゃーないとか言って」「来たやんか。今日」「そんなことうちに言われても知らん」と水晶を持ってきたマリーさんと冒険者登録の受付をしてくれたサリーさんで喧嘩が勃発しそうになっていた。
「わざわざありがとうございます。で、コレって水晶に手をかざすんで良かったですか?」と私が聞くとサリーとマリーそれぞれから「そんなんやった?」「うちは知らん」と返ってきた。こりゃあかんわ。
「うちのエアコン壊れたけん直せる人おらんで?」とお爺さんが駆け込んできた。
「私しましょうか?」
「ええん?ほな案内するわな」
「はい。お願いします」
そして、案内されたのは魔導軽トラックでギルドから1時間走るところだった。遠いわ。で、軽トラの中では、「どこから来たんえ?」とか「何目指っしょん?」とかめちゃくちゃ根掘り葉掘り聞かれた。
これ、街じゃなくて村じゃね?冒険者ギルド(村役場?)だったの?少なくともこれシティー名乗っちゃダメじゃね?
気になったから爺さんに聞いてみた。
「こんだけ人おらんのに何でシティー名乗れとるん?」
「そりゃ先代の魔王に負けて帰ってきた聖女と勇者とかがここに定住しとうけんなぁ。わしも元勇者やし。人間界言うてもここまで来る人おらんし」
「そうなんですねぇ……」
私は遠い目をした。
やっと着いた。エアコンを見てみると魔界モデルと違ってやたらと無駄が多い。まず、魔力回路が違う。ただ、ウチのは瘴気を魔力に変えてるから効率良すぎるだけなので、とりあえず、電力を吸い上げる回路とそれを熱に変える回路、それとその熱を風に乗せて運ぶ回路と水魔法回路も入れると良いだけなのに、これを全部1つずつ回路にしてる。これはボタンに連動させてるのか?と思えばボタンに連動させる回路もまた別で書いていた。
電力吸い上げる回路はそのままでボタンに連動する回路に熱と風を連動。冷房ボタンにだけ、水魔法の冷却回路を組み込む。そして、その連動のあと停止時に暖房系にも冷却回路が流れるようにしておいた。魔力余ったから除菌回路もつけておいた。電力消費抑える回路も組み込んだ。あ、これ、私じゃないと直せないかも。まぁ、耐用年数数百年になるだろうし大丈夫だろう。
その頃に誰が生きてるんだろうか。まあ、いいや。さて、試運転っと。
「これ、オンにしてもらっていいですか?」
「おう。それ、ポチッとな」
オンにしてもらうと嘘みたいな速度で温度が下がった。これ、真夏でも3分で快適になりそう。何を間違えた?絶対なんかやらかした気がする。
「おお。これは凄いなぁ。これ切れるんえ?」
「このボタンでポチッと消えます。ほら切れたでしょ?これ、よう冷えるけん、入れて数分で切ったほうがええじょ。付けて風邪引いたら元も子もないけん」
「わかった。ありがとう。お嬢ちゃん。ギルドまで送るわな。あと、これ、物置に眠っとったけんあげるわ」
「ありがとう。また、冒険の役に立てるわ」
そう言いながら、軽トラに乗せてもらってギルドまで帰る。ギルドには相変わらず爺婆が多い。
「アリスちゃん、遠かったやろ?」
「エアコンどないで?」とトメ婆さんが聞いてきたので、「バッチリです」と返すと、「ほんまよう効くけん、逆に寒うなりそうな程やった」とお爺さんが返していた。
「ほら、ようきいとんな。うちも買い換えようか迷いよったけど、アリスちゃん来てくれるんやったら買い替えんでもええかもしれん。ギルドの本部に知り合いおるけん、言うとくわ。冒険者登録明日でもええで?」
「あぁ、はい。ありがとうございます」
成り行きで2軒目のエアコン修理が決まるのだった。なんだこれ?冒険?
たしかに、軽トラ1時間は冒険だったので………よし!!




